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最終更新日 2006年4月1日
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介護保険事業計画と関連施策のあり方について

 区は、「ともにつくる福祉都市」を推進する具体的な方策として、すべての区民が地域で適切なサービスを総合的に受けられる地域型の保健福祉を進めてきています。

 2000年の介護保険制度の導入など、保健福祉をめぐる状況変化に対応しながら、今後の保健福祉施策を展開していくため、平成11年2月に、中野区保健福祉審議会へ、「介護保険事業計画の策定にあたっての基本方針と地域型保健福祉推進のための関連施策のあり方について」の諮問を行いました。

 このことに関して、平成11年8月18日に、「介護保険事業計画と関連施策のあり方について」が中間答申され、平成12年2月14日に「介護保険事業計画と関連施策のあり方について」が追加答申されましたので、その全文を紹介します。

1999(平成11)年8月18日

中野区長 神山 好市 殿

中野区保健福祉審議会会長
一番ヶ瀬 康子

 介護保険事業計画と関連施策のあり方について
(中間答申)

 1999(平成11)年2月19日付、諮問第3号「介護保険事業計画の策定にあたっての基本方針と地域型保健福祉推進のための関連施策のあり方について」に関して中間的に結論をとりまとめ、別添のとおり中間答申いたします。

はじめに

1 介護保険制度導入後の区の基本姿勢

2 介護保険の運営について

3 介護保険におけるサービス供給量の確保について

4 区における保健福祉サービスの供給について

5 地域ケア体制の確立にむけて~地域型保健福祉の推進

6 サービスの質の確保と利用者の権利擁護

はじめに

○本審議会は、1999年2月19日に「介護保険事業計画の策定にあたっての基本方針と地域型保健福祉推進のための関連施策のあり方について」諮問を受けた。区は、2000年4月の介護保険の実施に向けて、介護保険事業計画の策定と地域福祉総合推進計画(福祉プラン21)の改定を予定しており、諮問は、これらの計画の素案作成に反映すべき基本方針の審議を求めたものである。
○前期の審議会は、諮問「社会変化に対応する地域型福祉を推進するための保健医療及び福祉の今後のあり方について」審議し、介護保険制度の導入などの新たな状況の中での区の役割や保健福祉行政の方向などについて検討した。今回の審議会は、前期の答申の趣旨を踏まえ、介護保険運営と区の施策展開にあたっての留意すべき事項などを検討してきた。なお、審議会には、区民の公募委員4人が臨時委員として参加しており、被保険者の意見や多様なの意見などを反映し、審議を行ってきた。
※注「サービス供給者」の供給者は、区、社会福祉法人、医療機関、非営利組織、区民活動団体、民間企業などをいう。
○審議にあたっては、介護保険事業計画等検討部会を設置し、中野区の高齢者の現状や現在の保健福祉サービスの利用状況などを把握したうえで、次の事項などについて検討した。
・介護保険導入後の区の基本姿勢
・介護保険の運営のあり方
・介護保険サービスの供給量の確保のための方策
・介護保険導入後の区の保健福祉サービスのあり方
・地域ケア体制の確立にむけた方策
・サービスの質の確保と権利擁護のしくみ
○区が介護保険事業計画の素案と地域福祉総合推進計画(福祉プラン21)の改定素案をこの9月に発表する予定であることから、本審議会は、これらの素案に審議結果を反映させることができるよう、これまでの審議経過においての委員の意見をまとめ、中間答申を行うこととした。また、今回の中間答申は前期の本審議会の答申を前提としており、区はこれらの答申を十分尊重して計画素案を作成することを期待する。今後は、計画素案に対する区民や関係団体などの意見を踏まえたうえで、さらに審議を重ね、介護保険事業計画の策定、地域福祉総合推進計画(福祉プラン21)の改定の前に、2月ごろをめどに最終答申を行いたいと考えている。
 

1 介護保険制度導入後の区の基本姿勢

○中野区はこれまで「ともにつくる福祉都市」を実現するため、「人間性の尊重と権利の保障」、「個別性の尊重」、「地域福祉推進における公的責任」、「区民参加、区民と区の協働による地域福祉の推進」という4つの基本理念を掲げ、地域型保健福祉を推進してきた。区は、介護保険制度導入後もこの地域型保健福祉を発展させることが重要であり、また、4つの基本理念についても保健福祉をめぐる状況変化に的確に対応しつつ、引き続き発展させていくことが必要である。このため、介護保険制度の導入後、区は以下の5つの基本姿勢をとるべきであり、それらを介護保険事業計画と地域福祉総合推進計画(福祉プラン21)の中で具体化し、実行していく必要がある。

【安定した保険運営】

○区は、ますます進展する高齢社会の中で、介護問題に対する区民の不安を解消し、区民の区への期待に的確に対応する必要がある。このため、区は保険者として積極的な広報活動や情報の公開を通じて介護保険制度を区民がよりよく理解できるようにするとともに、区民や被保険者の保険運営への効果的な参加のしくみを形成すべきである。また、正確なサービスの需要量および供給量の見積もりをもとに、保険を円滑に運営しなければならない。
○また、介護認定調査や審査判定が迅速かつ公平公正に行われる体制を構築しなければならない。

【サービス供給の基盤整備】

○介護保険制度は、保険料を負担する被保険者が、自由にサービスを選択し利用する制度である。このため、介護サービスに対する需要、これまで以上に増加することが予想される。区は介護保険制度の導入にあたり、多様なサービス供給者の参入を促進するための条件整備を行うなど、サービス供給量の確保に向けて全力をあげなければならない。
○また、介護保険の対象とならない区の保健福祉サービスについても、区民に必要なサービスを提供することができるように、区は目標を定め、実施していかなければならない。

【地域ケア体制の確立】

○介護保険制度導入後はサービス供給者が多元化するが、そのような状況の中で、介護や支援を必要とする高齢者などを地域の保健・医療・福祉のサービスが総合的に支える地域ケア体制を確立しなければならない。区は地域型保健福祉を新たな状況に即応して発展させ、サービス整備と運営における調整の役割を果たすとともに、保健・医療・福祉の各分野が緊密に連携する体制を構築しなければならない。
○今後は、区民や非営利組織が主体的・自主的に展開する保健福祉活動の果たす役割がますます大きくなる。区は、これらの活動が積極的に行われるように、情報の収集や提供、相談、各種手続きなどへの援助を行うことが必要である。

【予防機能の強化】

○高齢者にとっては、健康でいきいきとした生活を送ることが最も大切であり、区は高齢者ができるだけ要介護状態になることがないよう、また可能なかぎり在宅での生活が続けられるよう、予防機能を強化することが重要である。健康づくりや保健機能を一層充実するとともに、保健・福祉の連携・強化が緊急の課題である。また、予防機能の強化は、今後急速に進展する高齢化の中で、区の介護保険の事業規模の必要以上の拡大と保険財政の肥大化に抑制効果を期待することができると考えられる。

【サービスの質の確保と利用者の権利擁護】

○介護保険分野におけるサービスの量的拡大と供給者の多元化、また利用者の選択と契約によるサービス利用への転換にともない、サービスの質の確保と利用者の権利擁護が重要な課題となる。このため、区は、サービスの選択のために必要となる情報の提供体制の構築やサービスの質について区みずから積極的に検討するとともに、サービス供給者に働きかけるなど、質の確保に取り組む必要がある。さらに、意思能力が低下した高齢者などの権利を擁護する体制を整備する必要がある。

2 介護保険の運営について

(1) 介護認定調査・介護認定審査会について

○2000年4月の介護保険の実施に先立ち、区は今年の10月から要介護等認定申請の受付、介護認定調査、介護認定審査会を行う。介護認定調査や審査判定は介護保険制度の要となるものであり、公平公正なる運営体制を確立することが重要である。

【介護認定調査】

○介護認定調査に従事する職員および委託調査従事者について、区が充分な事前研修を行うなど調査精度の向上と均質性の確保を図る体制が必要である。
○初回の介護認定調査については全て区職員が実施するか、あるいは委託調査実施分の一部についても区職員の確認調査を実施するなど、調査の精度や均質性の確認のための取り組みが必要である。
○介護認定調査を介護支援専門員に委託して実施する場合は、当区における必要員数を確保するための取り組みも必要となる。
○介護認定調査の方法についての問題点や改善策について、区は積極的に国や都に指摘していく必要がある。

【介護認定審査会】

○介護認定審査会の委員は、医療職や在宅および施設における介護現場従事者など保健、医療、福祉の幅広い専門職種から選任し、バランスの取れた審査判定体制を構築する必要がある。
○介護認定審査会の審査資料は、常に均質な水準で作成されたものとする方法論を構築しなければならない。
○介護認定審査会の各合議体は、委員職種や定員などの構成に格差があるものであってはならない。また、研修や情報交換のための体制を整備し、各合議体間の審査判定の質の均一化を図る必要がある。

(2) 低所得者への配慮

○介護保険料の支払いや利用料の負担が困難な被保険者については、介護保険制度上の減免措置のほか、最終的な受け皿として生活保護制度の適用が想定されている。しかし、両制度間の収入や所得の認定方法の相違などによりボーダー層の問題が生じる可能性があり、特段の配慮が必要と思われる。
○しかしながら、こうした問題を保険者責任のみで解決することには限界があり、これまでも区は国へ要望してきたと聞いているが、重大な問題であり、今後も解決に向けて十分努力する必要がある。

3 介護保険におけるサービス供給量の確保について

(1) サービス供給量確保における区の責任

○中野区の2000年度におけるサービス供給量の基盤整備率をみると、通所サービス(通所介護、通所リハビリテーション)と短期入所サービス(短期入所生活介護、短期入所療養介護)については、各20%、15%と低く、とくに短期入所サービスの見込みは深刻な状況である。区は2000年度の制度発足に向けて、基盤整備のための最大限の努力をしなければならない。
○また、すべてのサービスについて、今回の介護保険事業計画の計画期間である5年間に重点的に整備を推進し、必要なサービス供給量の確保に向けて全力をあげなければならない。
○基盤整備を進めるにあたっては、多様なサービス供給者の参入を促進する具体的かつ有効な方策を検討する必要がある。
○ボランティアグループなど非営利組織が基準該当事業者になるにあたっては数多くのハードルがある。区は、これらの団体が介護保険に参入できるように条件整備を行い、他の民間事業者などと公平公正な競争により事業を展開していけるように、支援・調整を行うことが必要である。

(2) 在宅サービスの確保について

【通所サービスなどの確保】

○これまでも述べてきたとおり、通所サービスや短期入所サービスの確保は急務であり、積極的な対策が不可欠である。また、痴呆性高齢者グループホームについても、区内に整備されることが必要である。これらのサービスの供給にあたっては、土地や施設の確保などハード面での整備が必要であるために、都市部において多様なサービス供給者の参入がとくにむずかしい状況である。区は、区有地の有効活用や小中学校の余裕教室の転用などによる民間事業者などの参入支援策を講ずるべきである。
○高齢者会館など既存の高齢者施設についても、介護保険事業への一部転用を検討する必要がある。
○通所サービスや短期入所サービスは、区民が身近なところで利用できるように整備を進めることが必要である。
○すでにリハビリテーション機能やその専門スタッフを確保している病院や診療所が、今後、訪問サービスや通所サービスの供給者として参入できるよう、区としても情報提供などの働きかけを積極的に行う必要がある。

【訪問介護】

○訪問介護(ホームヘルプサービス)については、相対的にみてサービス供給量が確保できると想定されているが、通所サービスなどの供給量が不足する状況では、訪問介護による代替利用などが予想され、さらに需要が大きくなると考えられる。区は、福祉サービス事業団による訪問介護事業の支援なども含め、必要なサービス供給量を確保するため、十分な方策を講じることが重要である。

(3) 施設サービスについて

○介護保険制度は、要介護者ができるだけ在宅での生活を続けることができるように、要介護状態の軽減や悪化の防止、要介護状態となることの予防を重視している。しかし、大都市部における住宅事情やひとり暮らし高齢者が多いなどの現状、後期高齢者の増加傾向などを見込むと、施設サービスの需要は国が示す整備目標数値で足りるとは思われない。施設サービスの整備目標量は都が設定することになっているが、区としても介護老人福祉施設などの整備目標値のあり方について都・国に対し要望していくべきである。
○現在区内に老人保健施設は整備されていないが、施設サービスと在宅サービスとをつなげていく機能として介護老人保健施設の果たす役割は大きい。区内における介護老人保健施設の整備はぜひとも必要であり、区有地の活用や公設民営なども含め、整備にあたっての助成策を検討すべきである。
○国が参酌標準で示す施設サービス内の種類別比率(介護老人福祉施設8:介護老人保健施設7:療養型医療施設5)が、区や東京都の現状から見て現実的な数値であるのか疑問がある。施設サービス内の種類別比率については、中野区としてのサービス整備の方針を検討しつつ、需要にあった整備を図ることをめざすべきである。
○要介護者やその家族の多くは自宅近くの施設利用を希望している。このような利用者の希望を踏まえると、区内および近隣区において施設サービスの必要量が整備されるように努めるべきである。

(4) 区特別給付・保健福祉事業について

 【特別給付】

○区特別給付は、介護保険において要介護・要支援と認定された区民に対し、法定サービスではない独自のサービスを介護保険制度のもとで給付するものであり、第1号保険料を財源とする。区特別給付を行うかどうかについては、サービス必要量などについて、可能な限り精度の高い見積もりを行ったうえで検討すべきである。
○特別給付についても利用者負担が伴うものであり、利用料との兼ね合いで当該特別給付を利用しない被保険者であっても、保険制度上は、特別給付分の保険料を負担することとなるなど、第1号保険料への影響に配慮し、慎重に検討すべきである。

【保健福祉事業】

○区は、介護者などへの支援事業、被保険者が要介護状態となることを予防する事業などを介護保険制度のもとで第1号保険料を財源とする保健福祉事業として実施することができる。介護保険の保健福祉事業と区の保健福祉の施策とは、事業目的として重複するものが多く、予防給付的性格を持つ事業をあえて介護保険の中で実施することについては、第1号保険料への影響に配慮し、慎重に検討すべきである。
○一方、要介護・要支援状態となる率からみると、大部分の被保険者にとっては、保険料を負担しながら給付の機会がないことになる。そのため、すべての高齢者を対象とした予防事業などを介護保険内事業とすることについては、区民の理解が得られるとの考え方もあり、このことに関しても考慮すべきである。

4 区における保健福祉サービスの供給について

(1) 地域型保健福祉をめざしたサービス体系

○介護保険の法定サービスは全国一律の基本的なサービスであるため、介護保険サービスと区の保健福祉サービスを適切に組み合わせて総合的に区の施策体系を構築することにより、これまで区が進めてきた地域型保健福祉を実現することができると考える。区の保健福祉サービスの体系を構築するにあたっては、中野区の地域的な状況に照らして、必要なサービスを組み立てていくことが重要である。
○サービスの体系を検討するにあたっては、保健、福祉、まちづくり、教育などの幅広い分野の施策との連携を緊密にすることが重要である。とくに、地域での生活の基盤となる住宅整備や住宅施策の充実は不可欠である。現在、特別養護老人ホームに入所している区民のうち、介護保険において要支援や自立と認定された区民は、経過措置期間以後は施設サービスを利用できなくなるため、区は高齢者生活福祉センターの整備や特別養護老人ホームに近接するケアハウスの整備などを検討し、住宅の確保と必要なサービスの確保により、自立生活を支援していくことが重要である。
○高齢者の地域における居住の場として、グループホームやグループリビングが区内に数多く整備されることが望ましい。非営利組織によるグループホームやグループリビングの運営が積極的に行われるように、区は情報提供や相談、手続きの援助、運営支援などを行うことが必要である。
○現在、ミニデイサービスなど、区民が主体的・自主的に展開しているサービスが重要な役割を果たしている。介護保険制度発足後、ボランティア団体の活動は、地域の実情に合ったきめ細かなサービスとして需要がますます大きくなると考えられる。区民の自由な発想と創意工夫による保健福祉活動が今後も推進されるよう、区は十分な支援をしていくことが必要である。
○区の保健福祉サービスは、今後も措置などにより区民に提供されることになるが、措置であっても可能なかぎり区民の選択の幅を広げていくことが望ましい。

(2) 予防サービスについて

○健康でいきいきとした高齢期を迎えるためには、それ以前からの健康づくりが重要であるが、介護保険の給付対象とならない高齢者のうち、家族状況や高齢などにより、何らかの援護を必要とする高齢者に対しては、適切なサービスを提供することにより、寝たきりになることを予防していくことができる。これらの予防サービスを実施するにあたっては、機能訓練などの保健サービスのほか、自立生活支援を目的とした家事援助サービスなど、要介護状態となることを予防するサービスについても充実をはかることが重要である。
○保健指導や機能訓練を必要とする区民には、地域リハビリテーション事業や訪問指導を実施し、予防サービスを充実させる必要がある。訪問指導は、これまでおもに寝たきり高齢者など介護を必要とする高齢者やその家族などを対象としてきたが、今後は虚弱な高齢者などへの指導を充実し、予防機能を強化していく必要がある。
○また、自立に不安のある虚弱な高齢者やひとり暮らしの高齢者などを対象に、区が閉じこもりを防止する通所サービスを実施し、自立支援を行うことが望ましい。この通所サービスを実施するにあたっては、現在、地域のボランティア団体などにより行われているミニデイサービスとの連携・協力についても視野に入れて、具体的な実施方法などを検討すべきである。また、実施場所の確保については、既存の高齢者施設などを有効活用することが望ましい。
○今後の高齢化の進展とともに、地域にはひとり暮らしや健康に不安のある高齢者が増え続けていくことが想定される。これらの高齢者が社会的に孤立することなく安心して生活することができるように、区はボランティアセンターの活動の活性化をはかり、地域に見守りや支え合いのネットワークを形成するよう、働きかけやコーディネイトをする必要がある。とくに地域の住民各層が身近にボランティアとして活動に参加できるよう、きめ細かに工夫すべきである。

(3) 利用者の費用負担の考え方

○介護保険サービスは、介護費用の1割を利用者が負担するしくみであるが、区の保健福祉サービスについても、介護保険サービスを利用する場合との不公平が生じないように、費用負担のあり方について整合性をはかる必要がある。
○介護保険導入後は、要介護等の高齢者は、区の保健福祉サービスについての利用者負担のほか、介護保険料や保険サービスの利用料を負担することとなる。このことは、生活に困窮する区民などのサービス利用を妨げるおそれもあるため、保健福祉サービスの利用者負担のあり方を検討するにあたっては、これらのことについても配慮することが重要である。 

5 地域ケア体制の確立にむけて~地域型保健福祉の推進

(1) サービス整備における区の調整機能について

○高齢者が介護や支援を必要とする状態になっても、住み慣れた地域で安心して生活していけるようにするためには、高齢者を地域の保健・医療・福祉のサービスが総合的に支える地域ケア体制を確立する必要がある。区は、これまで推進してきた地域型保健福祉を今後も発展させていくことを基本に、サービス供給者の多元化のもとで、サービスの整備における調整の役割を果たしていくことが必要である。

(2) サービス運営上の調整機能について

○多様なサービス供給者間のサービス提供にかかわる調整を行い、区内のケアマネジメント機能を向上させるためには、さまざまなサービス情報などを多様な事業者や区民が共有することが必要であり、介護保険サービス情報や区の保健福祉サービス情報などをきめ細かく提供するしくみをつくるべきである。
○サービス供給者間の調整のためには、区が、保健福祉センターごとに会議を設置し、地域の介護保険サービス供給者や医療機関、ボランティア団体、在宅介護支援センターその他福祉関係機関・団体などが連携・協働して、区民に総合的なサービス提供を行うことができるよう、積極的に調整を行う必要がある。
○このサービス調整のための会議を有効に機能させるためには、区が地域のすべての居宅介護支援事業者や訪問サービス事業者などと情報交換し合うことのできる事業者のネットワークづくりが必要である。区はこの課題に対しても積極的に取り組むべきである。
○介護保険制度のもとでは、介護支援専門員がサービスを調整するにあたって、各サービス供給者や関連する保健・医療・福祉機関の担当者が参加する会議(サービス担当者会議)などを開催して検討することになる。介護保険制度の発足にあたっては、このサービス担当者会議などが円滑に行われるように、区がサービス供給者の参加する準備会議を開催し、地域のサービス資源についての情報交換やサービス供給者や関係機関のネットワークづくりなどを支援する必要がある。
○保険者であり、保健福祉施策の実施主体である区としては、少なくとも制度発足後当分の間は、介護保険の介護サービス計画の妥当性やその計画が利用者や介護者にとって適切に実施されているかどうかをモニターし、改善すべき点などを介護支援専門員やサービス供給者に指摘するなどの役割が求められる。具体的には、訪問指導や在宅介護支援センターの実態把握などにおいて、こうした点に配慮した事業展開を行うべきである。
○在宅療養者手帳は、ひとりひとりの高齢者にかかわるサービス供給者間の情報交換の媒体であり、医療と福祉の連携を緊密にすることができる。この在宅療養者手帳についても活用を推進するべきである。

6 サービスの質の確保と利用者の権利擁護

○区民が、必要に応じて、自らの選択により、質の高いサービスを安心して利用できるようにするために、区は権利擁護のしくみを機能させるとともに、公平で、公正なサービスが提供されるよう保険者として事業者への働きかけを積極的に行うことが重要である。
○サービス供給者や居宅介護支援事業者、区などに寄せられた区民からの苦情・要望などについて、区は、積極的に情報提供し、サービスの質の確保のための調整を行うべきである。調整にあたっては、たとえば、サービス供給者と区などが協定をとりかわし、利用者の苦情などにもとづいてサービス内容の充実と向上をはかるための調整を行うシステムを構築する方法などが考えられる。
○介護保険制度では、要介護認定などに関する審査請求は、都が設置する介護保険審査会で審査を行い、サービスの内容に関する苦情は東京都国民健康保険団体連合会で対応することになっている。区は、これらの制度の紹介など、区民の苦情に対して迅速に対応することが必要である。
○区の苦情に関する窓口は、利用者にとってわかりやすいものであるべきであり、保健福祉センターなど利用者の身近な地域に一本化されることが望ましい。中野区は他の自治体にさきがけて、福祉オンブズマン(福祉サービス苦情調整委員)制度を実施してきた。介護保険の発足後も、現行の福祉オンブズマン制度と関連づけて、総合的なシステムづくりを行う必要がある。
○介護保険制度では、要介護状態の高齢者などはサービス供給者との契約により必要なサービスを利用することになる。そのような制度のもとでは、とくに意思能力の低下した高齢者などは選択や自己決定を十分に行うことができないために、権利を侵害されやすい。そのため、意思能力の低下した高齢者などの権利擁護のしくみとして、国では成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の実施が予定されているが、これらの制度や事業との連携も含め、区は利用者の権利を擁護するための方策を検討する必要がある。

付 記

○審議の過程においては、介護保険料や利用料が支払えない低所得者の問題や施設サービスの整備による保険料の上昇の問題などが指摘された。本文の中でも、国・都への働きかけの必要性について言及している部分もあるが、区は、介護保険制度設計上の問題についても検討を行い、都や国に要望しつつ、問題解決にむけて努力すべきである。

2000(平成12)年2月14日

中野区長 神山 好市 殿

中野区保健福祉審議会会長
一番ヶ瀬 康子

介護保険事業計画と関連施策のあり方について
(追加答申)

 1999(平成11)年2月19日付、諮問第3号「介護保険事業計画の策定にあたっての基本方針と地域型保健福祉推進のための関連施策のあり方について」に関して、中間答申後の審議の結論をとりまとめ、別添のとおり追加答申いたします。

はじめに

1 介護保険の公平公正な運営と利用者の苦情対応などについて

2 介護保険におけるサービスの供給量確保について

3 地域ケア体制の推進について

おわりに

はじめに

○本審議会は、1999年2月19日に「介護保険事業計画の策定にあたっての基本方針と地域型保健福祉推進のための関連施策のあり方について」諮問を受けた。区は、2000年4月の介護保険の実施に向けて、介護保険事業計画の策定と地域福祉総合推進計画(福祉プラン21)の改定を予定しており、諮問は、これらの計画の素案作成に反映すべき基本方針の審議を求めたものである。
○前期の審議会は、諮問「社会変化に対応する地域型福祉を推進するための保健医療及び福祉の今後のあり方について」審議し、介護保険制度の導入などの新たな状況の中での区の役割や保健福祉行政の方向などについて検討した。今回の審議会は、前期の答申の趣旨を踏まえ、介護保険運営と区の施策展開にあたっての留意すべき事項などを検討してきた。なお、審議会には、区民の公募委員4人が臨時委員として参加しており、被保険者の意見や多様なサービス供給者(※注)の意見などを反映し、審議を行ってきた。
(※注)「サービス供給者」の供給者は、区、社会福祉法人、医療機関、非営利組織、区民活動団体、民間企業などをいう。
○審議にあたっては、介護保険事業計画等検討部会を設置し、中野区の高齢者の現状や現在の保健福祉サービスの利用状況などを把握したうえで、次の事項などについて検討した。
・介護保険導入後の区の基本姿勢
・介護保険の運営のあり方
・介護保険サービスの供給量の確保のための方策
・介護保険導入後の区の保健福祉サービスのあり方
・地域ケア体制の確立にむけた方策
・サービスの質の確保と権利擁護のしくみ
○区が介護保険事業計画の素案と地域福祉総合推進計画(福祉プラン21)の改定素案をこの9月に発表する予定であることから、本審議会は、これらの素案に審議結果を反映させることができるよう、これまでの審議経過においての委員の意見をまとめ、中間答申を行うこととした。また、今回の中間答申は前期の本審議会の答申を前提としており、区はこれらの答申を十分尊重して計画素案を作成することを期待する。今後は、計画素案に対する区民や関係団体などの意見を踏まえたうえで、さらに審議を重ね、介護保険事業計画の策定、地域福祉総合推進計画(福祉プラン21)の改定の前に、2月ごろをめどに最終答申を行いたいと考えている。

 1 介護保険制度導入後の区の基本姿勢

○中野区はこれまで「ともにつくる福祉都市」を実現するため、「人間性の尊重と権利の保障」、「個別性の尊重」、「地域福祉推進における公的責任」、「区民参加、区民と区の協働による地域福祉の推進」という4つの基本理念を掲げ、地域型保健福祉を推進してきた。区は、介護保険制度導入後もこの地域型保健福祉を発展させることが重要であり、また、4つの基本理念についても保健福祉をめぐる状況変化に的確に対応しつつ、引き続き発展させていくことが必要である。このため、介護保険制度の導入後、区は以下の5つの基本姿勢をとるべきであり、それらを介護保険事業計画と地域福祉総合推進計画(福祉プラン21)の中で具体化し、実行していく必要がある。

【安定した保険運営】

○区は、ますます進展する高齢社会の中で、介護問題に対する区民の不安を解消し、区民の区への期待に的確に対応する必要がある。このため、区は保険者として積極的な広報活動や情報の公開を通じて介護保険制度を区民がよりよく理解できるようにするとともに、区民や被保険者の保険運営への効果的な参加のしくみを形成すべきである。また、正確なサービスの需要量および供給量の見積もりをもとに、保険を円滑に運営しなければならない。
○また、介護認定調査や審査判定が迅速かつ公平公正に行われる体制を構築しなければならない。

【サービス供給の基盤整備】

○介護保険制度は、保険料を負担する被保険者が、自由にサービスを選択し利用する制度である。このため、介護サービスに対する需要は、これまで以上に増加することが予想される。区は介護保険制度の導入にあたり、多様なサービス供給者の参入を促進するための条件整備を行うなど、サービス供給量の確保に向けて全力をあげなければならない。
○また、介護保険の対象とならない区の保健福祉サービスについても、区民に必要なサービスを提供することができるように、区は目標を定め、実施していかなければならない。

【地域ケア体制の確立】

○介護保険制度導入後はサービス供給者が多元化するが、そのような状況の中で、介護や支援を必要とする高齢者などを地域の保健・医療・福祉のサービスが総合的に支える地域ケア体制を確立しなければならない。区は地域型保健福祉を新たな状況に即応して発展させ、サービス整備と運営における調整の役割を果たすとともに、保健・医療・福祉の各分野が緊密に連携する体制を構築しなければならない。
○今後は、区民や非営利組織が主体的・自主的に展開する保健福祉活動の果たす役割がますます大きくなる。区は、これらの活動が積極的に行われるように、情報の収集や提供、相談、各種手続きなどへの援助を行うことが必要である。

【予防機能の強化】

○高齢者にとっては、健康でいきいきとした生活を送ることが最も大切であり、区は高齢者ができるだけ要介護状態になることがないよう、また可能なかぎり在宅での生活が続けられるよう、予防機能を強化することが重要である。健康づくりや保健機能を一層充実するとともに、保健・福祉の連携・強化が緊急の課題である。また、予防機能の強化は、今後急速に進展する高齢化の中で、区の介護保険の事業規模の必要以上の拡大と保険財政の肥大化に抑制効果を期待することができると考えられる。

【サービスの質の確保と利用者の権利擁護】

○介護保険分野におけるサービスの量的拡大と供給者の多元化、また利用者の選択と契約によるサービス利用への転換にともない、サービスの質の確保と利用者の権利擁護が重要な課題となる。このため、区は、サービスの選択のために必要となる情報の提供体制の構築やサービスの質について区みずから積極的に検討するとともに、サービス供給者に働きかけるなど、質の確保に取り組む必要がある。さらに、意思能力が低下した高齢者などの権利を擁護する体制を整備する必要がある。

2 介護保険の運営について

(1) 介護認定調査・介護認定審査会について

○2000年4月の介護保険の実施に先立ち、区は今年の10月から要介護等認定申請の受付、介護認定調査、介護認定審査会を行う。介護認定調査や審査判定は介護保険制度の要となるものであり、公平公正なる運営体制を確立することが重要である。

【介護認定調査】

○介護認定調査に従事する職員および委託調査従事者について、区が充分な事前研修を行うなど調査精度の向上と均質性の確保を図る体制が必要である。
○初回の介護認定調査については全て区職員が実施するか、あるいは委託調査実施分の一部についても区職員の確認調査を実施するなど、調査の精度や均質性の確認のための取り組みが必要である。
○介護認定調査を介護支援専門員に委託して実施する場合は、当区における必要員数を確保するための取り組みも必要となる。
○介護認定調査の方法についての問題点や改善策について、区は積極的に国や都に指摘していく必要がある。

【介護認定審査会】

○介護認定審査会の委員は、医療職や在宅および施設における介護現場従事者など保健、医療、福祉の幅広い専門職種から選任し、バランスの取れた審査判定体制を構築する必要がある。
○介護認定審査会の審査資料は、常に均質な水準で作成されたものとする方法論を構築しなければならない。
○介護認定審査会の各合議体は、委員職種や定員などの構成に格差があるものであってはならない。また、研修や情報交換のための体制を整備し、各合議体間の審査判定の質の均一化を図る必要がある。

(2) 低所得者への配慮

○介護保険料の支払いや利用料の負担が困難な被保険者については、介護保険制度上の減免措置のほか、最終的な受け皿として生活保護制度の適用が想定されている。しかし、両制度間の収入や所得の認定方法の相違などによりボーダー層の問題が生じる可能性があり、特段の配慮が必要と思われる。
○しかしながら、こうした問題を保険者責任のみで解決することには限界があり、これまでも区は国へ要望してきたと聞いているが、重大な問題であり、今後も解決に向けて十分努力する必要がある。

3 介護保険におけるサービス供給量の確保について

(1) サービス供給量確保における区の責任

○中野区の2000年度におけるサービス供給量の基盤整備率をみると、通所サービス(通所介護、通所リハビリテーション)と短期入所サービス(短期入所生活介護、短期入所療養介護)については、各20%、15%と低く、とくに短期入所サービスの見込みは深刻な状況である。区は2000年度の制度発足に向けて、基盤整備のための最大限の努力をしなければならない。
○また、すべてのサービスについて、今回の介護保険事業計画の計画期間である5年間に重点的に整備を推進し、必要なサービス供給量の確保に向けて全力をあげなければならない。
○基盤整備を進めるにあたっては、多様なサービス供給者の参入を促進する具体的かつ有効な方策を検討する必要がある。
○ボランティアグループなど非営利組織が基準該当事業者になるにあたっては数多くのハードルがある。区は、これらの団体が介護保険に参入できるように条件整備を行い、他の民間事業者などと公平公正な競争により事業を展開していけるように、支援・調整を行うことが必要である。

(2) 在宅サービスの確保について

【通所サービスなどの確保】

○これまでも述べてきたとおり、通所サービスや短期入所サービスの確保は急務であり、積極的な対策が不可欠である。また、痴呆性高齢者グループホームについても、区内に整備されることが必要である。これらのサービスの供給にあたっては、土地や施設の確保などハード面での整備が必要であるために、都市部において多様なサービス供給者の参入がとくにむずかしい状況である。区は、区有地の有効活用や小中学校の余裕教室の転用などによる民間事業者などの参入支援策を講ずるべきである。
○高齢者会館など既存の高齢者施設についても、介護保険事業への一部転用を検討する必要がある。
○通所サービスや短期入所サービスは、区民が身近なところで利用できるように整備を進めることが必要である。
○すでにリハビリテーション機能やその専門スタッフを確保している病院や診療所が、今後、訪問サービスや通所サービスの供給者として参入できるよう、区としても情報提供などの働きかけを積極的に行う必要がある。

【訪問介護】

○訪問介護(ホームヘルプサービス)については、相対的にみてサービス供給量が確保できると想定されているが、通所サービスなどの供給量が不足する状況では、訪問介護による代替利用などが予想され、さらに需要が大きくなると考えられる。区は、福祉サービス事業団による訪問介護事業の支援なども含め、必要なサービス供給量を確保するため、十分な方策を講じることが重要である。

(3) 施設サービスについて

○介護保険制度は、要介護者ができるだけ在宅での生活を続けることができるように、要介護状態の軽減や悪化の防止、要介護状態となることの予防を重視している。しかし、大都市部における住宅事情やひとり暮らし高齢者が多いなどの現状、後期高齢者の増加傾向などを見込むと、施設サービスの需要は国が示す整備目標数値で足りるとは思われない。施設サービスの整備目標量は都が設定することになっているが、区としても介護老人福祉施設などの整備目標値のあり方について都・国に対し要望していくべきである。
○現在区内に老人保健施設は整備されていないが、施設サービスと在宅サービスとをつなげていく機能として介護老人保健施設の果たす役割は大きい。区内における介護老人保健施設の整備はぜひとも必要であり、区有地の活用や公設民営なども含め、整備にあたっての助成策を検討すべきである。
○国が参酌標準で示す施設サービス内の種類別比率(介護老人福祉施設8:介護老人保健施設7:療養型医療施設5)が、区や東京都の現状から見て現実的な数値であるのか疑問がある。施設サービス内の種類別比率については、中野区としてのサービス整備の方針を検討しつつ、需要にあった整備を図ることをめざすべきである。
○要介護者やその家族の多くは自宅近くの施設利用を希望している。このような利用者の希望を踏まえると、区内および近隣区において施設サービスの必要量が整備されるように努めるべきである。

(4) 区特別給付・保健福祉事業について

 【特別給付】

○区特別給付は、介護保険において要介護・要支援と認定された区民に対し、法定サービスではない独自のサービスを介護保険制度のもとで給付するものであり、第1号保険料を財源とする。区特別給付を行うかどうかについては、サービス必要量などについて、可能な限り精度の高い見積もりを行ったうえで検討すべきである。
○特別給付についても利用者負担が伴うものであり、利用料との兼ね合いで当該特別給付を利用しない被保険者であっても、保険制度上は、特別給付分の保険料を負担することとなるなど、第1号保険料への影響に配慮し、慎重に検討すべきである。

【保健福祉事業】

○区は、介護者などへの支援事業、被保険者が要介護状態となることを予防する事業などを介護保険制度のもとで第1号保険料を財源とする保健福祉事業として実施することができる。介護保険の保健福祉事業と区の保健福祉の施策とは、事業目的として重複するものが多く、予防給付的性格を持つ事業をあえて介護保険の中で実施することについては、第1号保険料への影響に配慮し、慎重に検討すべきである。
○一方、要介護・要支援状態となる率からみると、大部分の被保険者にとっては、保険料を負担しながら給付の機会がないことになる。そのため、すべての高齢者を対象とした予防事業などを介護保険内事業とすることについては、区民の理解が得られるとの考え方もあり、このことに関しても考慮すべきである。

4 区における保健福祉サービスの供給について

(1) 地域型保健福祉をめざしたサービス体系

○介護保険の法定サービスは全国一律の基本的なサービスであるため、介護保険サービスと区の保健福祉サービスを適切に組み合わせて総合的に区の施策体系を構築することにより、これまで区が進めてきた地域型保健福祉を実現することができると考える。区の保健福祉サービスの体系を構築するにあたっては、中野区の地域的な状況に照らして、必要なサービスを組み立てていくことが重要である。
○サービスの体系を検討するにあたっては、保健、福祉、まちづくり、教育などの幅広い分野の施策との連携を緊密にすることが重要である。とくに、地域での生活の基盤となる住宅整備や住宅施策の充実は不可欠である。現在、特別養護老人ホームに入所している区民のうち、介護保険において要支援や自立と認定された区民は、経過措置期間以後は施設サービスを利用できなくなるため、区は高齢者生活福祉センターの整備や特別養護老人ホームに近接するケアハウスの整備などを検討し、住宅の確保と必要なサービスの確保により、自立生活を支援していくことが重要である。
○高齢者の地域における居住の場として、グループホームやグループリビングが区内に数多く整備されることが望ましい。非営利組織によるグループホームやグループリビングの運営が積極的に行われるように、区は情報提供や相談、手続きの援助、運営支援などを行うことが必要である。
○現在、ミニデイサービスなど、区民が主体的・自主的に展開しているサービスが重要な役割を果たしている。介護保険制度発足後、ボランティア団体の活動は、地域の実情に合ったきめ細かなサービスとして需要がますます大きくなると考えられる。区民の自由な発想と創意工夫による保健福祉活動が今後も推進されるよう、区は十分な支援をしていくことが必要である。
○区の保健福祉サービスは、今後も措置などにより区民に提供されることになるが、措置であっても可能なかぎり区民の選択の幅を広げていくことが望ましい。

(2) 予防サービスについて

○健康でいきいきとした高齢期を迎えるためには、それ以前からの健康づくりが重要であるが、介護保険の給付対象とならない高齢者のうち、家族状況や高齢などにより、何らかの援護を必要とする高齢者に対しては、適切なサービスを提供することにより、寝たきりになることを予防していくことができる。これらの予防サービスを実施するにあたっては、機能訓練などの保健サービスのほか、自立生活支援を目的とした家事援助サービスなど、要介護状態となることを予防するサービスについても充実をはかることが重要である。
○保健指導や機能訓練を必要とする区民には、地域リハビリテーション事業や訪問指導を実施し、予防サービスを充実させる必要がある。訪問指導は、これまでおもに寝たきり高齢者など介護を必要とする高齢者やその家族などを対象としてきたが、今後は虚弱な高齢者などへの指導を充実し、予防機能を強化していく必要がある。
○また、自立に不安のある虚弱な高齢者やひとり暮らしの高齢者などを対象に、区が閉じこもりを防止する通所サービスを実施し、自立支援を行うことが望ましい。この通所サービスを実施するにあたっては、現在、地域のボランティア団体などにより行われているミニデイサービスとの連携・協力についても視野に入れて、具体的な実施方法などを検討すべきである。また、実施場所の確保については、既存の高齢者施設などを有効活用することが望ましい。
○今後の高齢化の進展とともに、地域にはひとり暮らしや健康に不安のある高齢者が増え続けていくことが想定される。これらの高齢者が社会的に孤立することなく安心して生活することができるように、区はボランティアセンターの活動の活性化をはかり、地域に見守りや支え合いのネットワークを形成するよう、働きかけやコーディネイトをする必要がある。とくに地域の住民各層が身近にボランティアとして活動に参加できるよう、きめ細かに工夫すべきである。

(3) 利用者の費用負担の考え方

○介護保険サービスは、介護費用の1割を利用者が負担するしくみであるが、区の保健福祉サービスについても、介護保険サービスを利用する場合との不公平が生じないように、費用負担のあり方について整合性をはかる必要がある。
○介護保険導入後は、要介護等の高齢者は、区の保健福祉サービスについての利用者負担のほか、介護保険料や保険サービスの利用料を負担することとなる。このことは、生活に困窮する区民などのサービス利用を妨げるおそれもあるため、保健福祉サービスの利用者負担のあり方を検討するにあたっては、これらのことについても配慮することが重要である。 

5 地域ケア体制の確立にむけて~地域型保健福祉の推進

(1) サービス整備における区の調整機能について

○高齢者が介護や支援を必要とする状態になっても、住み慣れた地域で安心して生活していけるようにするためには、高齢者を地域の保健・医療・福祉のサービスが総合的に支える地域ケア体制を確立する必要がある。区は、これまで推進してきた地域型保健福祉を今後も発展させていくことを基本に、サービス供給者の多元化のもとで、サービスの整備における調整の役割を果たしていくことが必要である。

(2) サービス運営上の調整機能について

○多様なサービス供給者間のサービス提供にかかわる調整を行い、区内のケアマネジメント機能を向上させるためには、さまざまなサービス情報などを多様な事業者や区民が共有することが必要であり、介護保険サービス情報や区の保健福祉サービス情報などをきめ細かく提供するしくみをつくるべきである。
○サービス供給者間の調整のためには、区が、保健福祉センターごとに会議を設置し、地域の介護保険サービス供給者や医療機関、ボランティア団体、在宅介護支援センターその他福祉関係機関・団体などが連携・協働して、区民に総合的なサービス提供を行うことができるよう、積極的に調整を行う必要がある。
○このサービス調整のための会議を有効に機能させるためには、区が地域のすべての居宅介護支援事業者や訪問サービス事業者などと情報交換し合うことのできる事業者のネットワークづくりが必要である。区はこの課題に対しても積極的に取り組むべきである。
○介護保険制度のもとでは、介護支援専門員がサービスを調整するにあたって、各サービス供給者や関連する保健・医療・福祉機関の担当者が参加する会議(サービス担当者会議)などを開催して検討することになる。介護保険制度の発足にあたっては、このサービス担当者会議などが円滑に行われるように、区がサービス供給者の参加する準備会議を開催し、地域のサービス資源についての情報交換やサービス供給者や関係機関のネットワークづくりなどを支援する必要がある。
○保険者であり、保健福祉施策の実施主体である区としては、少なくとも制度発足後当分の間は、介護保険の介護サービス計画の妥当性やその計画が利用者や介護者にとって適切に実施されているかどうかをモニターし、改善すべき点などを介護支援専門員やサービス供給者に指摘するなどの役割が求められる。具体的には、訪問指導や在宅介護支援センターの実態把握などにおいて、こうした点に配慮した事業展開を行うべきである。
○在宅療養者手帳は、ひとりひとりの高齢者にかかわるサービス供給者間の情報交換の媒体であり、医療と福祉の連携を緊密にすることができる。この在宅療養者手帳についても活用を推進するべきである。

6 サービスの質の確保と利用者の権利擁護

○区民が、必要に応じて、自らの選択により、質の高いサービスを安心して利用できるようにするために、区は権利擁護のしくみを機能させるとともに、公平で、公正なサービスが提供されるよう保険者として事業者への働きかけを積極的に行うことが重要である。
○サービス供給者や居宅介護支援事業者、区などに寄せられた区民からの苦情・要望などについて、区は、積極的に情報提供し、サービスの質の確保のための調整を行うべきである。調整にあたっては、たとえば、サービス供給者と区などが協定をとりかわし、利用者の苦情などにもとづいてサービス内容の充実と向上をはかるための調整を行うシステムを構築する方法などが考えられる。
○介護保険制度では、要介護認定などに関する審査請求は、都が設置する介護保険審査会で審査を行い、サービスの内容に関する苦情は東京都国民健康保険団体連合会で対応することになっている。区は、これらの制度の紹介など、区民の苦情に対して迅速に対応することが必要である。
○区の苦情に関する窓口は、利用者にとってわかりやすいものであるべきであり、保健福祉センターなど利用者の身近な地域に一本化されることが望ましい。中野区は他の自治体にさきがけて、福祉オンブズマン(福祉サービス苦情調整委員)制度を実施してきた。介護保険の発足後も、現行の福祉オンブズマン制度と関連づけて、総合的なシステムづくりを行う必要がある。
○介護保険制度では、要介護状態の高齢者などはサービス供給者との契約により必要なサービスを利用することになる。そのような制度のもとでは、とくに意思能力の低下した高齢者などは選択や自己決定を十分に行うことができないために、権利を侵害されやすい。そのため、意思能力の低下した高齢者などの権利擁護のしくみとして、国では成年後見制度や地域福祉権利擁護事業の実施が予定されているが、これらの制度や事業との連携も含め、区は利用者の権利を擁護するための方策を検討する必要がある。

付 記

○審議の過程においては、介護保険料や利用料が支払えない低所得者の問題や施設サービスの整備による保険料の上昇の問題などが指摘された。本文の中でも、国・都への働きかけの必要性について言及している部分もあるが、区は、介護保険制度設計上の問題についても検討を行い、都や国に要望しつつ、問題解決にむけて努力すべきである。

2000(平成12)年2月14日

中野区長 神山 好市 殿

中野区保健福祉審議会会長
一番ヶ瀬 康子

介護保険事業計画と関連施策のあり方について
(追加答申)

 1999(平成11)年2月19日付、諮問第3号「介護保険事業計画の策定にあたっての基本方針と地域型保健福祉推進のための関連施策のあり方について」に関して、中間答申後の審議の結論をとりまとめ、別添のとおり追加答申いたします。

はじめに

1 介護保険の公平公正な運営と利用者の苦情対応などについて

2 介護保険におけるサービスの供給量確保について

3 地域ケア体制の推進について

おわりに

はじめに

○本審議会は、1999年2月19日に「介護保険事業計画の策定にあたっての基本方針と地域型保健福祉推進のための関連施策のあり方について」諮問を受け、昨年8月に中間答申を行った。その後、区は、9月に介護保険事業計画の素案と地域福祉総合推進計画(福祉プラン21)改定素案を発表し、これらの素案に対する区民の意見を求め、両計画策定に向け準備を進めている。また、10月からは要介護認定の申請受付を始め、認定のための調査・審査判定を開始するとともに、在宅介護支援センターを8か所に増設し、相談体制やケアプラン作成機能の強化に努めている。制度開始を目前に、介護保険サービスの最終的な供給見込み量も算定されている。このため、介護保険制度発足にあたっての区の対応と今後の検討課題などについて、中間答申後に検討した結果について、追加的に答申する。
○この追加答申では、介護保険事業計画と地域福祉総合推進計画(福祉プラン21)に反映させることを目的に、重点的に審議した「介護保険の公正公平な運営と利用者の苦情対応など」「介護保険におけるサービスの供給量確保」「地域ケア体制の推進」についてまとめている。また、答申をまとめるにあたっては、将来にわたっての検討事項やよりよい制度づくりに向けて区の果たすべき役割についても提言している。

1 介護保険の公平公正な運営と利用者の苦情対応などについて

○介護保険制度は、高齢化の進展する中で、介護を社会全体で支えていくことを目的に創設されたものである。保険者である区は、この制度を円滑に運営するために、公平公正な要介護認定のしくみを確立するとともに、必要なサービスの供給量を確保する責任がある。また、介護保険サービスは多様な事業者などにより供給され、利用者の選択と契約により利用されることになることから、介護保険サービスの質を確保するとともに、総合的なサービスの公平公正な利用を確保すること、利用者の苦情への対応や権利擁護を推進することが大変重要となる。

【介護保険制度のPR】

○区では、介護保険事業計画などの素案の発表後、地域において説明会を行ったが、介護保険制度が複雑で理解しづらいために、不安をもっている区民も少なくない。制度発足後も、区は制度の趣旨やしくみのPRに努め、区民の不安を解消するとともに、区民の意見や要望を受けとめ、制度の円滑な実施に努めるべきである。

【要介護認定調査・審査会】

○4月の介護保険制度の発足にむけて、昨年10月から認定の申請受付が始まり、要介護認定のための調査および審査会による判定が行われ、認定結果が 順次区民に通知されている。区民からは認定結果が納得いかないなどの相談 や苦情が寄せられており、区はこれらの相談や苦情に十分に対応し、調査や審査判定を適切に行うとともに、公平性公正性をより向上させるように努めることが重要である。
○要介護認定調査の精度の向上や均質性の確保をはかるために、区は、調査員への十分な研修を行うことが重要である。とくに、調査票の特記事項については、どのような場合に記載するべきか、また、その記載内容の判断基準などの均質化や周知をはかることが必要である。さらに、主治医の意見書についても同様に、記載内容の均質化や周知をはかることが必要である。なお、審査判定にあたっては、かかりつけ歯科医や意見書記載医以外の診療科の医師の意見が反映されることが望ましい場合も多く、その点での工夫が必要であるとの意見や、国の認定基準が痴呆の症状を的確に反映したものとなっていないため、この点にとくに留意し、特記事項や主治医意見書などにより適切な審査判定を行うことが重要であるとの意見があった。

【苦情対応のしくみ】

○中間答申において、サービス利用者の苦情への対応のしくみとして、利用者の苦情などにもとづいてサービス内容の充実と向上をはかる調整システムの構築について提案した。区は、その後の検討において、事業者による協議会の組織化を推進し、その事業者協議会が苦情に対する調査や改善指導あっせんなどを行う第三者機関を設置・運営することを支援していくことを構想している。しかし、苦情対応のしくみとして、サービス供給者の自主的な調整によるものだけでは第三者性の担保が不十分となるおそれがあり、現行の福祉オンブズマン(福祉サービス苦情調整委員)制度との関連づけや行政のかかわりなども含め、さらに検討が必要である。

【利用者の権利擁護】

○介護保険制度のもとで契約によりサービスを利用するにあたって、意思能力の低下した高齢者などは選択や自己決定を十分に行うことができないために、権利を十分に行使できないおそれがある。このため、民法改正により成年後見制度が発足し、それを補完する地域福祉権利擁護事業が国によりつくられた。この地域福祉権利擁護事業は、福祉サービスの利用援助などを行うもので、都道府県社会福祉協議会が実施主体である。中野区社会福祉協議会は、東京都社会福祉協議会から委託され、昨年10月からこの事業の一部を実施している。区は、中野区社会福祉協議会が円滑に事業を実施し、区民の権利を擁護することができるよう、支援を行うことが必要である。

【介護保険制度運営への被保険者などの区民参加】

○介護保険制度は新たなしくみであり、被保険者をはじめ、ひろく区民の参加により運営していくことが大変重要である。区は、介護保険の運営や介護保険事業計画の改定などへの区民参加のひとつのしくみとして、運営協議会などを設置することを検討している。この運営協議会における審議は、介護にあたる家族の意見が反映されるなど、実際の介護にあたっての問題の解決に向けて機能するものとなることが望ましい。また、介護保険は介護の社会化の一環として制度化されたものであり、介護保険を含む保健・医療・福祉の総合的な分野への区民参加のしくみとして、保健福祉審議会との関係も含めて検討すべきであるという意見があった。

【低所得者への配慮】

○中間答申では、低所得者への配慮について、保険者責任のみで解決することには限界があり、国へ要望するなどにより、解決に向けて努力すべきであるとしているが、審議会においては、そうした認識に立ちつつも、医療費など高齢者の負担が増える状況において、何らかの対策が必要ではないかという意見があった。

2 介護保険におけるサービスの供給量確保について

○介護保険事業計画は、5年間の計画期間における各サービスの供給見込み量や供給量確保の方策などを明らかにするもので、区民の保険料の算出基礎となるものである。区は、各年度における到達状況などを区民に明らかにしていく責任がある。
○今回の計画検討においては、国の示したサービス必要量の推計方法が地域の実情に合ったものであるかどうかを検証するには至らなかったが、3年後の計画改定時には、区民の意向をより十分に把握することに努め、地域の特徴を生かした計画作成に向けた工夫をすべきである。
○介護保険制度は、高齢者自身が健康の増進に努め、要介護状態とならないよう予防に努めること、要介護状態となった場合もリハビリテーションに努めることを求めており、行政はこれらの予防への取り組みなどを支援する必要がある。介護保険サービスの必要量の把握においても、将来的にはこうした予防への取り組みの成果を見込むことが望ましい。

【在宅サービスの供給量確保】

○通所サービスや短期入所サービスについては、区内施設の利用を希望する区民が多いにもかかわらず、制度発足時は、訪問サービスに比べて供給見込み量がきわめて不十分であり、これらのサービスの利用について不安をもつ区民もいる。介護保険制度は、利用者が各自のニーズに合うサービスを選択することを可能にすることを目的としており、そのために、早期に区内に必要量を整備することが必要である。
○区の介護保険事業計画素案では、中間答申を受けて、高齢者福祉センターや学校余裕教室などの区立施設の活用や一部転用による通所サービスの事業拡大や、区有地を施設整備用地として貸与するなどにより事業者の参入をはかることを計画化している。区はまず、これらを確実に実行することが必要である。
○区は、区民が区外施設による短期入所サービスを利用する場合、その移動にかかる経費の一部を区特別給付とすることを検討している。区内におけるサービス供給が不十分である現状においては、この給付を行うことは適当であると考えられるが、利用者や家族の立場からは、身近なところでサービスを利用できることが最も望ましく、できるだけ早い時期に短期入所サービスの身近なところでの供給量確保をめざすべきである。

【痴呆性高齢者グループホーム、介護老人保健施設の整備】

○痴呆性高齢者グループホーム、介護老人保健施設については、現在区内に1か所もなく、5年間の計画期間のできるだけ早期に、それらを整備する方法を具体的に検討すべきである。

【施設サービスの整備】

○都は施設サービスの種類別比率を、2004年において「介護老人福祉施設50:介護老人保健施設24:介護療養型医療施設26」と定めている。国が参酌標準で示した数値を都内の現状にあわせて算定したものとなっているが、中野区としては、こうした都全体の利用予測を踏まえて、将来にわたる区独自の施設サービスの整備のあり方を検討し、今後の計画改定時などに反映していくよう努めるべきである。

3 地域ケア体制の推進について

○高齢者が介護を必要とする状態になっても、住み慣れた地域で安心して生活していけるようにするためには、高齢者を地域の保健・医療・福祉のサービスが総合的に支える地域ケア体制を確立することが必要である。このため、行政サービスとともに、区民による福祉活動、民間事業者の提供するサービスが区民に総合的に提供されるよう、区はその基盤整備を行うとともに、区民が円滑にサービスを利用できるしくみを整備することが重要である。

【サービス整備における調整機能】

○サービス整備における調整機能については、中間答申で述べたとおり、地域ごとにバランスよく多様なサービスが整備されるよう、区が調整機能を果たしていくことが必要である。そのため、地域ごとのサービス整備の計画をつくることについても検討すべきである。

【サービスの運営上の調整機能】

○中間答申の後、区からは、介護保険制度などに対応した区の組織体制と機能について、次のような考えが示された。

(1) 介護保険制度の導入により、介護保険サービスを含む総合的なサービスの相談・ケアプラン作成機能が重要になることから、その機能をもつ在宅介護支援センターを8か所に増設し、区民の身近な相談機能を充実することとした。このため、地域保健福祉センターの機能として位置づけていた相談機能の多くが在宅介護支援センターに移行することとなった。また、区の高齢者サービスの多くが多様な事業者のサービスに移行するのに伴い、ホームヘルプサービスなどを直接提供することを前提に組み立てられていた地域保健福祉センターの役割が大きく変化することになった。そこで、組織の効率化をはかる観点もあわせて、現在2か所の地域保健福祉センターを1か所とすることとした。新たな保健福祉センターは、<1>障害者など区民への相談などの機能、<2>在宅介護支援センターの統括・支援機能、<3>サービスの質の確保やサービスの総合的な提供体制の実現にむけたサービス供給者への支援機能、<4>訪問保健指導や生きがいデイサービスなどの提供機能、<5>保健所との連携による介護者教室などの実施や保健と福祉の連携推進の拠点としての機能をもつものとする。

(2) 保健福祉センターは、上記の<2><3>の機能を果たすために、介護保険サービスや区の保健福祉サービスの情報を区民や居宅介護支援事業者、サービス供給者などに提供し、区内のケアマネジメントの向上をはかる。また、多様なサービス供給者を構成メンバーとする地域ケア推進会議や地域支援会議を設置・運営し(下表「検討中の地域ケア推進会議・地域支援会議の機能」参照)、サービスの総合的な提供やサービスの質の確保・向上をはかる。

(3) 在宅介護支援センターは、保健福祉センターとの連携のもとで、介護方法の相談や、総合的なサービスについての相談・ケアプラン作成を行い、区民に身近な相談窓口としての機能を強化する。

(4) 地域センターは、これまでも区民活動の支援の拠点としての役割を果たしてきた。今後は、ミニデイサービスや地域の高齢者の見守りの機能など、保健福祉分野における区民活動の役割が一層重要になることから、その支援を十分に行うとともに、地域の在宅介護支援センターと密接な連携体制を築いていく。

検討中の地域ケア推進会議・地域支援会議の機能


 


名 称


 

構 成


 

設置単位


 

役 割


 

区の関わり方


 
地域ケア推進会議 社会福祉法人 社会福祉協議会 医師会・歯科医師会・薬剤師会
介護保険事業者代者 区
全区単位 地域ケア体制の確立、 介護予防・支援を含むサービスの総合化、サービス提供のルール確立、サービスの質の確保・向上 区が設置運営

苦情情報・行政情報などの提供 検討成果の施策への反映

地域支援会議 区民活動団体 地域の医療機関 民生委員 介護保険事業者
保健所、地域センター、在宅介護支援センター

在宅介護支援センターエリア単位


 
地域内の各サービス供給者間の情報交換、きめ細かいサービス提供・地域内連携によるサービス向上 区が設置運営

苦情情報・行政情報などの提供 検討成果の施策への反映

○保健福祉センターの機能が上記のように変化した場合の課題などについて審議会において検討したところ、委員からはおもに次のような指摘があった。区は、区民の保健福祉の向上の視点にたって、これらを今後の課題として検討してほしい。

(1) 今後、地域における区民の相談窓口は、在宅介護支援センターが中心となるが、在宅介護支援センターには福祉分野と保健分野の双方の専門員が配置されるとは限らず、区民の幅広い分野に関する相談を十分に受けとめ、保健と福祉の総合的なサービス調整を行うことができるかどうかについて疑問が残る。また、運営が福祉サービス事業団や民間事業者など多様な法人に委託されるため、8か所の在宅介護支援センターの均質性を保つこと、地域の居宅介護支援事業者とのネットワークづくりが課題となる。

(2) 在宅介護支援センターの運営を受託する法人は居宅介護支援事業も行うことになっているが、在宅介護支援センターが地域の高齢者の実態把握や生活支援サービスの調整などを行い、地域ケア体制の拠点としての役割を果たすためには、そのための職員体制などの確保が重要である。

(3) 介護保険制度の実施により、多様な事業者によるサービス供給が進むと、競争によるサービスの質の向上が促進される反面、営利優先の経営や過当競争などのために、利用者の利益や権利の侵害など、サービスの質や供給体制に混乱が生じるおそれもある。このため、保健福祉センターは、多様なサービス供給者間の公正な競争と協力を推進する役割を担うことが重要である。また、居宅介護支援事業者に対しても、専門性を高めるための研修などを行うとともに、ケアプラン作成にあたってサービスが特定の種類・事業者に不当に偏ることなく利用者本位の事業を行うよう、必要な調整機能を果たしていくことが必要である。

(4) 在宅介護支援センターを増設し、保健福祉センターの機能を変えるという区の方針は、おもに介護保険制度への対応として考えられている。このため、従来の地域保健福祉センターの機能として期待されていた、難病患者、精神障害者などへの保健福祉の総合的な相談・サービス調整機能のしくみづくりが課題となる。このしくみを構築するにあたっては、保健婦や理学療法士、生活保護のケースワーカー、障害者福祉のケースワーカーやホームヘルパーなど、さまざまな職種の職員が支援を必要とする区民の実態に即してチームをつくり、適切なサービス提供を行うこともひとつの方法である。こうしたチーム制によるサービス提供の実践を積み重ねるとともに、保健福祉センターが、福祉事務所と保健所の機能の連携推進の拠点としての役割を果たしていくことにより、第1期審議会の答申で述べた区の保健と福祉の総合的推進が実現されることを期待する。

おわりに

○新しいしくみである介護保険制度は、その運営やサービス供給量の確保などにおいて、制度発足後、さまざまな問題が出てくると考えられる。それらの問題を解決するにあたっては、質の高い、利用者本位のサービス供給や制度運営を実現することが重要である。そのため、区は、介護保険制度の運営や関連事業について評価を行い、施策に反映していくことを望みたい。

○介護保険制度は、法により、5年後に制度の見直しをすることが定められている。これは、介護の実態に合わせて制度全般を検討し、よりよいしくみに発展させていくことを目的としている。区は、住民に最も身近な自治体として、高齢者や介護者、地域住民の要望や意見を集約するとともに、それらを保険運営の実態に即して検証し、国の検討過程などに反映されるよう取り組むことを期待する。

第2期中野区保健福祉審議会 第3号諮問事項の審議経過

 

開催日 

 

区 分

 

おもな審議事項

1999年2月19日 第1回審議会 「介護保険事業計画の策定にあたっての基本方針と地域型保健福祉推進のための関連施策のあり方について」諮問
介護保険事業計画等検討会の設置

2月19日

 
第1回部会 介護保険制度の概要

 3月8日

 
第2回部会 介護保険事業計画の基本理念、高齢者の現状、
計画期間における高齢者人口・被保険者数・要介護者数等の推計

3月26日

 

第3回部会 介護給付の現状・利用状況と現在のサービスに対する評価・問題点等

4月7日

第4回部会 介護給付の現状・利用状況と現在のサービスに対する評価・問題点等

4月20日

 
第5回部会 要介護認定事務など区の体制について

5月14日

 
第6回部会 各年度ごとの対象サービス量の見込みの算出方法について

5月27日

 
第7回部会 各年度ごとの対象サービス量の見込みと確保のための方策

6月4日

 
第8回部会 各年度ごとの対象サービス量の見込みと確保のための方策

6月29日

 
第9回部会 市町村特別給付のあり方
保健福祉事業のあり方
区の保健福祉施策のあり方

7月6日

 
第10回部会 事業者相互間の連携の確保等サービスの円滑な提供を図るための事業、利用者の権利擁護のしくみ

7月23日

 
第11回部会 中間答申案の検討

8月3日

 
第12回部会 中間答申案の検討

8月11日

 
第2回審議会 中間答申案の検討

8月18日

 
中間答申

12月1日

 
第13回部会 今後の地域型保健福祉の推進体制について

12月20日

 
第14回部会 サービスの質の確保や事業者の連携を推進するためのしくみ、利用者の権利擁護について

1月14日

 
第15回部会 サービスの供給量の見込み・確保策について

介護保険運営協議会の設置について

1月26日

 
第16回部会 追加答申案の検討

2月3日

 
第3回審議会 追加答申案の検討

2月14日

 
追加答申

このページについてのお問い合わせ先

地域支えあい推進部 介護・高齢者支援課 管理企画係

区役所2階 10番窓口

電話番号 03-3228-5629
ファクス番号 03-3228-8972
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