行政手続制度運用細目について

1995年4月21日

7中総総第45号

収入役、各部長あて総務部長通知

注 平成31年4月から改正経過を注記した。

本年4月1日をもって中野区行政手続条例が施行され、これに基づき、区の条例や規則に基づく処分等についても、行政手続法に基づく手続と同様の取扱いが行われることとなりました。また、同日をもって東京都行政手続条例も施行され、これにより、昨年10月に行政手続法が施行されて以来、区及び区の機関が処理する事務のすべてについて、行政手続制度が整えられることとなりました。

区では、これらの条例の制定に伴い、中野区聴聞及び弁明の機会の付与に関する規則を改正し、必要な規定の整備を行ったところですが、このたび1994年10月18日付け6中総総第403号で通知した行政手続法運用細目についても必要な改正を行い、行政手続制度運用細目として定め直したので、別記のとおり通知します。

なお、この通知により前記の行政手続法運用細目は、廃止します。

行政手続制度は、区の行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって区民の権利利益の保護に資することを目的とするもので、各職場における日常の運用に重要な意義があります。ついては、事務の執行に当たっては、本細目に十分留意の上、法や条例、規則の関連規定の定めに従い適切に処理するとともに、この旨所属職員に周知徹底するようお願いします。

別記 行政手続制度運用細目

(平31中総総3・令4中総総6・令5中総総4371・一部改正)

第1 総則

一 処分(法第2条、条例第2条関係)

1 法令(条例、規則を含む。以下同じ。)の規定に基づき行われる行政庁の行為が「処分」に当たるか否か(相手方が行政庁の求める作為又は不作為を行う義務を負うか否か)は、当該法令で使われている用語からは、直ちに判別できないものがある。その最終的な判断は、当該行為を規定する個別法の解釈によるところであるが、総務事務次官通知「行政手続法の施行に当たって」(平成6年9月13日付総管第211号)は、判断に際しての考え方の大筋を下記のように示しているので、これを参考にすること。

(1) 処分性の有無について、法令の規定により明確に判断できる場合は、それによって区分すること((2)参照)。また、明確に判断できない場合には、(3)に該当する場合を除き、原則として処分性を有しないものと解すること。これは、処分が国民の権利義務に変動を与える行為であることから、このような場合において積極的に処分と解することは適当でないためである。

(2) 法令の規定上処分性の有無について判断できる規定がある場合

ア 処分性があると解されるもの

a 行政庁の求めに従わない、あるいは応じない場合に、罰則による制裁を課し得るもの

b 「求める」に該当する用語が、「命ずる」「させる」等と規定されるもの(処分性を有しないとする特別の理由があるものを除く。)

c 「求める」に該当する用語が、「指示する」「求める」「要求する」等と規定されるものであって、以下のもの

① 行政庁の行為について不服申立てができる旨や当該行為を「処分」とする明示的な規定があるもの

② 行政庁の行為に従わなければならない旨の義務、その他相手方に義務を課し、その権利を制限することとなる法的効果についての規定があるもの

③ 行政庁の行為に従わない場合には、そのことを直接の理由にして不利益処分による制裁を課し得るもの

④ 条文の規定振りからみて、当該行為を処分と解さないと、整合性のある解釈がなし得ないもの

イ 処分性を有しないと解されるもの

a 「求める」に該当する用語が、「勧告する」「助言する」「指導する」「依頼する」「要請する」と規定されるもの(処分性を有すると解される特別の理由があるものを除く。)

b 行政庁の行為(指示)に従わない場合に、改めて、同一内容の作為又は不作為を求める命令をすることができることとされている当該「指示」

c 行政庁の行為に従わない場合の最終担保措置が「その旨の公表」にとどまるもの

d 協力、援助のような本来的に相手方の自発的な意思にゆだねられるべき行為を求めるもの

(3) 法令の規定上、処分性の有無について判断できる規定はないが、処分性を有すると解される場合

① 許認可等権限に基づく監督を受ける者に対して、法目的を達成するために一定の改善を求める「指示」

② 災害等の発生又は拡大を防止するため、物理的な危険が切迫している状況の下で必要な対策を講ずることを求める「指示」

二 法令処分と独自処分の区分(法第3条関係)

1 処分を行うこと及び届出をすべきことを規定している根拠規定が法律又は法律に基づく命令(政令等)にある場合については、区が行うものであっても行政手続法の規定が適用され、根拠規定が区の条例若しくは規則又は特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例(平成11年東京都条例第106号)の定めるところにより東京都知事又は東京都教育委員会の権限に属する事務の一部を区が処理することとされた場合における当該事務について規定する東京都条例、東京都規則及び東京都教育委員会規則にある場合には、中野区行政手続条例が適用されること。

2 処分及び届出の根拠規定とは、「○○を命ずることができる」「○○を禁止し、又は制限することができる」「○○について届け出なければならない」「○○について届け出なければ、△△できない」等と規定しているものをいうが、当該処分又は届出の要件や事務手続のみを規定するものは含まないものであること。

3 個別の法律(又はそれに基づく政令等)において、「条例の定めるところにより○○に関し必要な措置を講ずることができる」又は「条例で規制することができる」という形式で処分を規定しているものがあるが、これらの法律の規定の趣旨は「条例による規制を妨げない」ということにとどまり、具体的な規制の在り方等を条例にゆだねているものであると解される。したがって、この場合には、条例に具体的根拠を有するものとして行政手続法の適用除外となり、中野区行政手続条例が適用されること。

4 個別の法律(又はそれに基づく政令等)において、「○○については、地方公共団体の規則により定める」等と規定しているものについては、処分の根拠が法律に基づく命令(政令等。告示を含む。)にある場合と同一に扱われるべきであって、当該規制の実施を地域の実情を考慮して行わせる必要があるため、特に地方公共団体の執行機関にゆだねたものと解される。したがって、このような個別の法律の特別の規定に基づき制定される規則中に処分に関する具体的規定が存在するとみられる場合であっても、処分の根拠はあくまでも個別法に置かれていると解されるため、行政手続法が適用されるものであること。

第2 申請に対する処分

一 審査基準の設定(法第5条第1項・第2項、条例第5条第1項・第2項関係)

1 審査基準は、中野区事案決定規程(平成31年中野区訓令第5号)の定めに従い、原則として申請に係る許認可等の所管部長(担当部長等を含む。以下同じ。)が決定すること。

2 国や東京都からの運用通達等に示された判断の基準、方針等をもって審査基準とする場合においても、部長は、審査基準が当該運用通達等と同内容である旨の決定を行い、当該運用通達等のどの箇所が審査基準に該当するかを申請をしようとする者に明確に分かるようにしておくこと。

3 審査基準は、法令の定めに従って判断するための基準であって、法令の規定それ自体は審査基準には含まれない。しかし、法令の規定において、審査基準が具体的かつ明確に定められており、当該法令の定めのみによって処分の可否を判断することができる場合は、別に審査基準を定めることを要しない。

4 予測できなかったケース若しくはそれまで審査実績のないケースについて初めて審査する場合又は中野区においては申請があり得ない場合や見込まれない場合など、やむを得ない事情がある場合には、審査基準を定めることを要せず、遅くとも審査の必要が生じた段階で何らかのものが定められれば良いこと。

5 個々の申請に対して、それを許諾するか拒否するかを判断するための基準を明らかにすることが求められているので、審査基準の設定に当たっては、申請者等が許認可等を得るに当たって何を準備して申請をすれば良いかが分かるかどうかという観点からその内容をできる限り具体化するよう努めること。

6 申請に対する諾否に裁量が与えられている場合には、裁量権行使に当たっての考え方が具体的に明らかにされることが重要であって、処理を画一化すること自体が目的ではないので、個々の申請についての当てはめ基準の作成が困難である場合であっても、審査に当たって、どのような要素が考慮されるのか、個々の要素はどの程度の評価を与えられることになるのかといったことをできる限り示しておくことが必要である。

例えば、「実務経験」という指標で説明すると、許認可等を付与するに当たって実務経験が必須の条件である場合には、○年以上というように定量的に定めることが最も望ましいが、他の条件が同一であれば実務経験の有無が考慮されるという場合には、そのこと自体、あるいは経験年数が多い方が有利かどうかといったことを明らかにすることが求められている。

二 標準処理期間の設定(法第6条、第9条、条例第6条、第9条関係)

1 標準処理期間は、申請に係る許認可等の所管部長が決定すること。

2 国や東京都から通達等で具体的な期間を示して指導が行われる場合において、それをそのまま受け入れるとしても、部長は、当該期間を標準処理期間とするという旨の決定を行うこと。

3 標準処理期間は、原則として日をもって定めること。ただし、これによることが適当でないと判断するときは、週、月又は年をもって定めることができる。

4 標準処理期間は、申請が区役所(中野区組織規則(平成31年中野区規則第13号)第3条に規定する行政機関等を含む。)に到達した日(期限を定めて申請を受け付ける場合は、当該期限に当たる日)の翌日から起算して、当該申請に係る許認可等の可否の決定について申請者に対する通知を各部が行う日までの日(週、月、年)の数とする。ただし、申請を受けた日中に処理する場合の標準処理期間は、「即日」とすること。

5 次の期間は、標準処理期間に算入しない。ただし、①については、標準処理期間を週、月又は年をもって定めるときは、この限りでない。

② 形式上の不備の是正等を求める補正に要する期間

③ 申請の処理の途中で、申請者が申請内容を変更するために必要とする期間

④ 審査のため、申請者に必要な資料の提供等を求める場合において、申請者がその求めに応答するまでの期間

6 標準処理期間を設定する場合において、経由機関、協議機関(4の行政機関等を受付窓口としているにすぎない場合等は含まれない。)があるときには、それぞれの機関で要する期間を定め、それぞれの期間を明らかにした上で、全体としての処理に要する期間を定め、標準処理期間を決定すること。審議会、審査会等における審議、審査等に要する期間についても同様とする。

7 申請の内容によって処理(審査)期間の相当なバラツキがある場合には、標準処理期間の設定が困難であるが、このような場合においても、申請事案の過半が一定の期間に処理されるものであるときは、その期間を標準処理期間として定めること。

8 標準処理期間は、「○日」、「×月」等と具体的な期間として定めることが望ましいが、そのような設定が困難な場合には、一定の幅をもった期間(例えば「○日~△日」)として定められないかどうか、あるいは、申請内容を類型化して区分することによって、その区分ごとに定められないかどうかなど、許認可等の性質に応じた工夫をすることによってできる限り申請の処理に要する目安として何らかの期間を示すよう努めること。

9 上記7及び8のような工夫をしてもなお定めることが困難である場合は、実際に標準処理期間が定められなくともやむを得ないものであること。

10 法第6条及び条例第6条は、申請を放置した場合の法的な効果ではなく、行政運営の適正化の観点から、申請の迅速な処理の確保を図るため、行政庁の行為規範を定めたものである。標準処理期間は、あくまでも申請の処理に要する期間の「目安」に過ぎないものであり、本制度によって、申請者が当該標準処理期間内に申請に対する行政庁からの何らかの応答(処分)を受け得ることを保障するものではない。したがって、申請に対する処分が標準処理期間を経過してもなされないからといって、そのことのみで、直ちに当該行政庁が行政事件訴訟法第3条第5項にいう「不作為の違法」に当たることにはならないと解釈されていること。

11 上記10のように解釈されてはいるが、申請者からの照会に対しては、迅速な処理に努めていることが理解されるよう、法第9条第1項又は条例第9条第1項の規定の趣旨に沿って適切に対応すること。

三 審査基準及び標準処理期間の公表(法第5条、第6条、条例第5条、第6条関係)

1 審査基準及び標準処理期間の公表は、各部において行う。「公に」しておく具体的方法は、各部の課等(必要に応じ、事業所等)において、区のホームページに掲載する方法、当該申請の提出先の窓口における備付け(掲示板等への掲示、簿冊形式で閲覧に供する等)による方法又は申請をしようとする者の求めに応じ提示する方法をもって原則とする。ただし、これにより難いと認めるときは、各課長(担当課長等を含む。以下同じ。)の判断により、他の適当な方法によることができる。

2 「公にしておかなければならない」とは、申請をしようとする者あるいは申請者に対し、審査基準及び標準処理期間を秘密にしないとの趣旨であり、対外的に積極的に周知することまで義務付けるものではない。

3 審査基準を公にするに当たっては、審査基準が、申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準であることから、当該法令に規定されている条文や解釈に関する文書を併せて申請者等に示すことができるようにしておくこと。

4 法の施行の日(平成6年10月1日)又は条例の施行の日(平成7年4月1日)以後に新設される許認可等について審査基準及び標準処理期間を公にしておくべき時期は、当該許認可等を定める法令(条項)が施行される日からである。また、事情の変化により審査基準や標準処理期間を設定し直したものについては、その時点から新たな審査基準や標準処理期間を公にしておくことになる。

5 公にされている審査基準を変更する場合の区民への周知については、その審査基準が一般的に定着している場合には、当該申請に係る区のホームページの掲載内容の変更等といった方法だけでなく、関係者への情報提供などの方法により積極的に区民が知り得るような措置を講ずるよう努めること。

6 「公に」してある審査基準について、申請をしようとする者又は申請者から複写の求めがあった場合には、これを認めることができること。その際には、区政資料センター又は権限を有する出納員を置く各部において、複写の実費相当額(現行 1枚10円)を徴収できること。

7 「行政上特別の支障があるとき」とは、定められた審査基準について、これを公にしておくと当該個別法の適正な運用に著しい支障をきたすおそれがあって、申請者又は申請をしようとする者の不利益を考慮してもなお公益上の観点から公にしておかないほうがよいと判断される場合であるが、具体的には事案に応じて課長が判断すること。

8 審査基準が、公にできないものについては、その理由が「行政上特別の支障があるとき」に該当することによるものか、あるいは、従来より審査実績がないなどやむを得ない事情があって具体的にできないことによるものか、いずれにしてもその間の事情を、また、公にできる場合においても、基準として十分に具体化することが困難なものについては、その理由を、申請者等に説明できるよう、関係窓口の職員等に対してその徹底を図ること。標準処理期間の設定が困難である場合についても、同様とする。

四 申請に対する審査、応答(法第7条、条例第7条関係)

1 個々の申請が、国民の申請権の具体的行使である点にかんがみれば、申請が権限ある機関の事務所(窓口)に到達したにもかかわらず、申請を「受け付けない」、「受理しない」等の取扱いをし、その間に申請の取下げや申請内容の変更を求める行政指導を行ったり、処理を遅延させる等の事態は排除されるべきものであるとの考えに基づき、申請が到達したときの審査開始義務及び応答義務が行政庁に課せられたものである。この趣旨の徹底を関係職員に図り、申請の的確かつ迅速な処理の確保に努めること。

2 「遅滞なく」とは、時間的に「すぐに」という意味であるが、複数の申請を一定期間保留し、一括して審査する取扱いを行っているものについては、それが合理的範囲内で行われている限り、規定の趣旨に反するものではないこと。

3 申請が申請の形式上の要件に適合しないものであっても、申請が到達した時点で当該申請に対する具体的審査行為を遅滞なく開始する義務が生ずることとなる。したがって、当該申請が申請の形式上の要件に適合していない場合であっても、これを放置することは許されない。

4 「補正を求める」、「求められた許認可等を拒否する」のいずれかの措置を講じれば、法律上の義務を履行したことになる。申請の不備について補正が可能な場合には、必ず補正を求める義務が課されているということではない。

なお、相当の期間を定めて補正を求めたにもかかわらず、当該期間を経過しても、申請の不備が補正されない場合には、その申請により求められた許認可等は原則として拒否されることになる。

また、申請書に記載された事項のうち、明らかな誤字、脱字等の軽微な不備については、職権で補正できる。

五 拒否処分をする場合の理由の提示(法第8条、条例第8条関係)

1 申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合に示す理由については、許認可等の性質、その根拠法令や審査基準の内容や具体性によりその程度は異なるものと考えられ、許認可等の性質、当該法令の趣旨、目的に照らして判断されるべきものであるが、抽象的・一般的なものでは不十分で、どのような事実を基に拒否処分が行われるのか申請者において十分認識し得る程度に示す必要がある。

2 「許認可等を拒否する処分」とは、申請によって求められた許認可等をしない旨の処分(申請の形式上の要件に適合しないことを理由として申請を拒否する処分を含む。)をいい、不許可、不認可、登録の拒否、不合格、申請の棄却、却下等その表現振りのいかんを問わない。

また、申請により求められた許認可等につき、その一部を拒否する場合にも、当該拒否部分については理由を示さなければならない。

3 本制度により理由を提示すべき場合であるにもかかわらず、理由を提示せずに行った処分は、手続上瑕疵かしある処分となる。

4 理由の提示は、処分時(処分の告知と同時)になされることを要する。

5 「数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合」とは、距離、重量、資本金額等について数値等によりその内容・範囲が画然と定められており、適合・不適合の判断が客観的に行われる場合をいう。

6 許認可等の要件又は公にされた審査基準に適合しないことが申請書の記載又は添付書類その他の申請の内容から明らかである事実以外の事実(職権調査等によって探知された事実)によって認定される場合には、相手方(申請者)はそのことを知り得る立場にあるとは限らないので理由を示すべき場合に当たる。

7 法第8条第2項及び条例第8条第2項は、処分が書面により行われるか口頭により行われるかは、当該処分を規定する法令において決められるべきものとの考え方の下に、処分が書面で通知されても、その理由が口頭で示されるだけでは、判断の慎重、合理性を担保し、併せて処分の相手方に対して事後の便宜に資するという趣旨が損なわれるおそれがあることから規定しているものである。したがって、処分を口頭で行うことが容認される根拠とすることのないよう留意すること。

8 理由を示す義務がある場合において、理由を示す書面は、必ずしも不許可等の通知書と同一であることを要しないが、理由の提示忘れを防ぐためにも、できるだけ同一書面であることが望ましい。したがって、通知書等の様式で区で定めているものについては、速やかに理由欄を設ける改正を行うこと。

第3 不利益処分通則

一 処分の基準(法第12条、条例第12条関係)

1 処分基準の設定については、一般に処分に関する行政庁の裁量が比較的広く、また、処分の原因となる事実の反社会性や処分の名あて人となるべき者の情状等を個別の事案ごとにどう評価するのかといった問題もあり、その性質上、これをあらかじめ具体的な基準として画一的に定めることが技術的に困難なものもあるということで努力義務とされているが、その設定に当たっては、基本的には、「第2 申請に対する処分 一 審査基準の設定」に準じて、その運用を行うこと。

2 処分基準を公にしておくことについては、これにより脱法的な行為が助長される場合も想定されるということで努力義務とされているが、合理的な理由なく処分基準の設定や公にすることを怠ることは許されないものであること。

二 聴聞手続又は弁明手続の選択(法第13条、条例第13条関係)

1 聴聞又は弁明の機会の付与の別は、行政手続法(以下「法」という。)又は中野区行政手続条例(以下「条例」という。)の規定に従い、各部で確認すること。なお、個別法令において、法に定める聴聞及び弁明の機会の付与の手続の適用を除外し、意見陳述のための手続に係る特別の定めを設けている場合には、中野区聴聞及び弁明の機会の付与に関する規則(以下「規則」という。)の規定にかかわらず、各部において、当該個別法令の定めるところにより当該意見陳述のための手続を別途実施する必要があること。

2 不利益処分の名あて人となるべき者について弁明の付与の手続を執った場合にあって、その結果として、法第13条第1項第1号イからハまでに掲げる処分又は条例第13条第1項第1号ア及びに掲げる処分を行うことが相当であると判断し、当該処分をしようとするときには、改めて聴聞手続を執る必要があること。

3 処分の原因となる事実が発生した場合に、その事実に基づいて、聴聞を相当とする処分を行うこととするか、又は弁明を相当とする処分を行うこととするかについて、あらかじめ予定できない事情がある場合には、聴聞手続を執ることが適当であること。

三 不利益処分の理由の提示(法第14条、条例第14条関係)

1 不利益処分の理由の内容については、理由の提示がなぜ処分を受けたかを被処分者が理解するためのものであることから、法令の根拠条項の内容、具体性等によってその程度は異なるものの、原則として不利益処分の根拠条項、処分要件に該当するその原因となる事実を明示する必要があること。その他不利益処分をする場合の理由の提示については、基本的には、「第2 申請に対する処分 五 拒否処分をする場合の理由の提示」に準じて、その運用を行うこと。

2 不利益処分をする場合に名あて人の所在が判明しないときにおけるその処分の理由の通知の取扱いについては、処分に関する慎重な判断を担保し、名あて人の事後救済手続上の便宜を図るという本条の趣旨にかんがみ、処分の通知を公示の方法により行う際に、併せて、その理由をいつでも名あて人に提示する旨を公示しておくこと。

第4 聴聞

一 事前通知(法第15条、条例第15条規則第4条第5条関係)

1 聴聞の通知において記載する「不利益処分の原因となる事実」については、不利益処分の名あて人となるべき者等が防御権の行使の準備を行う上で欠かせないものであり、名あて人となるべき者の防御権を保障する趣旨が損なわれないよう事実の概要を具体的に記載すること。

2 法及び条例では必要とされていないが、聴聞手続上の便宜のため、通知の中に「聴聞の件名」を記載すること。聴聞の件名は、法第15条第1項各号又は条例第15条第1項各号に定める事項の前に記載することとし、下記の例による。

例:「聴聞の件名 甲野乙郎に対する××許可取消処分に係る聴聞」

3 聴聞の通知において記載する「聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地」は、聴聞の期日までの連絡・照会先として記載するものであり、例えば、利害関係人の参加許可や文書等の閲覧(請求)に関し連絡する場合などを念頭においているものである。したがって、主宰者が属する組織(下記五の1により指名した主宰者の属する部及び課)と文書等の閲覧に関する事務その他の聴聞に関する事務を所掌する組織(不利益処分の主管部及び課)の両方の組織を記載すること。

4 聴聞の通知は、規則により、聴聞の期日の1週間前の日までに行うこととされたが、これはその日までに当該通知が不利益処分の名あて人に到達することを意味するものである。したがって、通知を郵送により行う場合においては、通常配達に要する日数を加えて発送する必要がある。なお、後日の争いを防ぐために、配達証明郵便等で郵送することが適当である。

5 不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合に法第15条第3項又は条例第15条第3項に規定する公示の方法により通知を行うに当たっては、掲示を始めた日から2週間を経過したときに当該通知がその者に到達したものとみなされることにかんがみ、公示送達する通知において記載する聴聞の期日は、掲示を始めた日から数えて、3週間後の日より前の日を設定してはならないこと。

二 代理人(法第16条、条例第16条規則第6条関係)

1 代理人となる資格については、法文上制限が設けられていないので、弁護士などの有資格者には限らない。また、代理人の選任は、本人の意思によるものであり、行政庁の許可を要しないので、代理人の選任を拒否することはできない。したがって、代理人の立場いかんによってその代理人が聴聞手続から排斥されるものではなく、仮にも当該代理人が聴聞の審理における秩序を不当に混乱させるなどの行為を行った場合に、その段階において、主宰者が当然保有する聴聞指揮権により聴聞の場から退場を命ずるといった運用により対処していくことが適当である。

2 代理人は、当事者のために聴聞に関する一切の行為をすることができるので、もとより、文書等の閲覧(法第18条、条例第18条)、聴聞の審理における意見陳述等(法第20条、条例第20条)、陳述書の提出(法第21条、条例第21条)等聴聞に関する一切の行為をすることができる。なお、これに関連して、当事者に代わり代理人が聴聞の期日に出頭すれば、法律上の効果としては当事者本人が出頭したことになるので、当事者本人が正当な理由なく出頭しなかったものとして聴聞の終結をする(法第23条第1項、条例第23条第1項)ことはできないこととなるほか、続行期日の通知(法第22条第2項、条例第22条第2項)など代理人に対して行う行為についても、当事者のために行うことを示して行えば、その効力は当事者本人に帰属するので、改めて当事者に通知することは特に必要でない。

3 代理人の数については、法文上制限が設けられていないが、代理人が多数選任され聴聞の場に入場しきれないほどの事態が生じた場合には、審理の円滑迅速な進行と公正な運営に協力するという代理人制度の趣旨にかんがみ、当事者の防御権を妨げないと判断される限りにおいて、聴聞の場に出頭できる人数を制限することがあってもやむを得ないこと。

三 関係人の聴聞に関する手続への参加(法第17条、条例第17条規則第7条関係)

1 規則第7条第1項の規定により、法第17条第1項又は条例第17条第1項に規定する許可を受けようとする関係人は、聴聞の件名、氏名、住所及び当該聴聞に係る不利益処分につき利害関係を有することの疎明を記載した書面を、聴聞の期日の4日前の日までに主宰者に提出しなければならないが、この期限は、主宰者による参加許可手続に通常要する日数を考慮して決められたものである。したがって、この期限を経過して当該書面が提出された場合においても、主宰者においてその参加許可手続を速やかに処理することにより対応できるときにまで拒否することのないよう留意すること。

2 関係人の認定に当たっては、法第18条又は条例第18条の文書等の閲覧手続及び法第24条第3項又は条例第24条第3項の報告書作成手続を適切かつ円滑に進めるため、その者が自己の利益を害されることとなる関係人か否かについても判断しておくこと。

四 文書等の閲覧(法第18条、条例第18条規則第8条関係)

1 規則第8条第1項の規定により、資料の閲覧を求めようとする当事者等は、閲覧を求めようとする資料の標目を記載した書面を提出しなければならないこととされた。各部においては、適宜、資料目録を作成し、その内容を相手方に教示するなど、関係人等の資料の閲覧が円滑に進められるよう配慮すること。

2 「第三者の利害を害するおそれがあるとき」とは、例えば、個人のプライバシーに係る事項や、企業秘密が記載されている文書であるときなどがそれに当たり、また、「第三者の利益」とは閲覧請求者以外の当事者及び参加人の利益についても該当するものであること。

3 「その他正当な理由があるとき」とは、閲覧させることにより取締りの秘密等機密が漏れるなど公益上の支障があるときのほか、審理の争点に関係がないものを求められたときや他に閲覧させた文書等(既に閲覧させた文書等である場合を含む。)で審理の必要にこたえているとき、聴聞期日においてむやみに閲覧請求を乱発する等明らかに聴聞の引き延ばしを図るための閲覧請求など、法を適正に運用する上で著しい障害がもたらされるときをいう。

4 資料の閲覧を許可することにより第三者の利益を害するおそれがあるなど正当な理由があるとして、その閲覧を拒む場合にあっては、拒む理由となる部分以外の関係のない部分まで閲覧を拒むことはできないこと。したがって、閲覧請求の対象となる資料のすべてについて閲覧を拒む理由があると判断するのでなければ、支障がある部分を伏せるなどして閲覧させることが適当であること。

5 法第18条及び条例第18条は、資料の閲覧に際して、閲覧請求対象資料の複写を行うことまで保障する趣旨ではない。しかし、複写を禁止するものでもないので、閲覧請求者から資料の複写の申出があった場合には、その資料の保全状態やその閲覧に係る申出者の便宜の程度又は事務負担の程度等を参酌して、特に支障のない限り、複写を認めることができること。その際には、区政資料センター又は権限を有する出納員を置く各部において、複写の実費相当額(現行1枚 10円)を徴収できること。

五 主宰者の指名(法第19条、条例第19条規則第9条関係)

1 主宰者には、原則として総務部法務担当課長を指名すること。ただし、総務部法務担当課長が法第19条第2項各号若しくは条例第19条第2項各号のいずれかに該当する場合若しくは当該処分に係る事務を主管する課長である場合又は当該不利益処分の内容により他の特定の課長を主宰者とする必要がある場合には、他の課長を主宰者に指名すること。なお、規則第2条に規定する他の定めとして、個別法令において、法第13条第1項の規定による意見陳述のための手続の区分にかかわらず聴聞を行わなければならない旨の聴聞の特例が定められている場合には、当該個別法令に定めるところによるほか、当該不利益処分の所管部において、当該個別法令を踏まえた当該聴聞に係る所要の手続を定めるとともに、当該所管部に所属する課長のうちから適宜当該個別法令の規定による聴聞の主宰者を指名し、別途当該聴聞の手続を実施する必要があること。

2 主宰者は、聴聞の期日の前においても、関係人の参加の許可(法第17条、条例第17条)、補佐人の出頭の許可(法第20条、条例第20条)、陳述書等の提出(法第21条、条例第21条)など当事者と手続上のやり取りを行う必要があるので、主宰者が誰であるのかが関係人にあらかじめ了解されている必要がある。このため、聴聞の通知の中に記載する「聴聞に関する事務を所掌する組織」において、主宰者の属する部及び課名を記載すること。

六 聴聞の期日における審理の方式(法第20条、条例第20条規則第10条~第12条関係)

1 当事者又は参加人の質問について主宰者の許可によることとしているのは、質問権が濫用されることとなれば、聴聞の審理の円滑かつ適切な進行が妨害されることとなるおそれがあることを配慮したものであり、当事者又は参加人の質問権を不当に制限することがあってはならないこと。

2 「補佐人」とは、聴聞の場において、不利益処分の原因となる事実について専門的知識をもって当事者又は参加人を援助することができる第三者をいい、当事者又は参加人の発言機関としての立場から事実上又は法律上の陳述を行う者である。具体的には、当事者又は参加人が言語障害者や外国人である場合にその者の陳述を補佐する者であるとか、当事者又は参加人が法人である場合の会計等の具体的な事務担当者などが該当する。補佐人と代理人との差は、当事者又は参加人とともに出頭しない限りなにもなし得ないところにあり、補佐人の補足した陳述は、当事者又は参加人の陳述として効力を有する。補佐人は、当事者又は参加人の発言機関として陳述するものであり、聴聞の期日における付添人としての地位しか認められていないもので、当事者又は参加人に代わって単独で当該期日に出頭したり、期日外の文書閲覧等の手続を行うことはできない。

3 主宰者の許可に際し、補佐人の人数制限については、聴聞の期日における当事者又は参加人の防御権の行使を妨げない限度において可能とされていること。

4 法第20条第4項及び条例第20条第4項は、当事者又は参加人の主張の内容等をより明らかなものとし、もって当事者又は参加人の権利利益の保護に資するとの趣旨で規定されているものであるので、主宰者は、同項の規定により、不利益処分の原因となる事実を立証することとなる証拠書類等の提出まで促すことができるものではないこと。

5 聴聞においては、特定の分野において専門的知識を有する第三者等のいわゆる参考人等からの意見聴取の手続まで定めているものではないが、必要に応じ、聴聞に係る事案に関し参考人等からの意見聴取を行い、もって適正な審理に資することまで排除するものではないこと。

七 陳述書等の提出(法第21条、条例第21条規則第13条関係)

1 陳述書及び証拠書類等は、法第21条第2項又は条例第21条第2項の趣旨から、原則として、聴聞の期日(開始時間)までに到達していることを要すること。ただし、聴聞手続の進行上特に支障のない場合は、柔軟に取り扱い、当事者及び参加人の手続への参加の保障に努めること。

2 陳述書及び証拠書類等の提示の方法については、当該陳述書等又はその写しを提示する方法によることとなるが、陳述書については、提示を求める者が了解する場合には、口頭でこれを読み上げることもできると解されること。

3 陳述書の提示については、陳述書はその提出者の意見陳述に代わるものと位置付けられるので、原則として主宰者はこれを拒むことはできないものと解されるが、証拠書類等については、これを提示することにより提出者又は第三者の正当な利益を害するおそれがある場合には、その部分について提示を拒むこととしてもやむを得ないものと解されること。

八 続行期日の指定(法第22条、条例第22条規則第14条関係)

1 続行期日の指定に関し、なお聴聞を続行する必要があるかどうかの判断については、当該事案について当事者及び参加人の防御権を保障する上でその意見陳述等の機会が十分に与えられたかどうか、また、当該不利益処分の原因となる事実について当事者等の主張に根拠があるかどうかについて判断する上で、なお当事者又は参加人の意見陳述等を促す必要があるかどうか等の観点に照らし、法又は条例の趣旨を十分に踏まえてこれを行うこと。

2 当事者が聴聞の期日に出頭しなかった場合には、法第23条又は条例第23条に該当する場合を除き、その当事者に意見陳述等の機会を与えるため、改めて聴聞の期日を定めることとなるが、その場合には、法第22条又は条例第22条に定める手続によること。

3 最初の聴聞の通知は、行政庁(不利益処分の主管部)が行うものであるが、2回目以後の期日の通知については、聴聞の続行等の判断が主宰事務に含まれるものであることから、主宰者がこれを行うものとされていること。

4 2回目以後の聴聞の通知については、法第15条第2項及び条例第15条第2項の規定の適用はないので、規則第4条の規定に従い聴聞の期日の1週間前の日までに通知することは必ずしも要しないこと。また、最初(又は前回)の聴聞の期日の通知を公示送達で行った相手方に対して再度公示送達を行う必要がある場合には、法第22条第3項又は条例第22条第3項により、「掲示を始めた日の翌日」に当該通知がその者に到達したものとみなされるので、他の当事者又は参加人に対して書面による通知を行うのとほぼ同時期に掲示すれば足りること。(遅くとも聴聞の期日の前日には掲示する必要がある。)

九 当事者の不出頭等の場合における聴聞の終結(法第23条、条例第23条関係)

1 「正当な理由」とは、当事者の責めに帰すべからざる理由(例:天災、交通機関の途絶等)又は出頭しないことがやむを得ないと認められる理由(例:交通事故等により入院している場合、海外出張中である場合等)を指す。

2 参加人については、正当な理由があるか否かにかかわらず、期日に出頭しなかった場合には聴聞が終結され得ることとしているが、参加人が期日に出頭しなかったことにつき正当な理由がある場合でも、参加人は当事者と異なり処分の名あて人ではなく、あくまで関係人に過ぎないことから、当該参加人に対して改めて防御権を保障する必要はないこと。(なお、個別の案件により、当該参加人の意見を聴かなければ十分な審理ができないと主宰者により判断されれば、聴聞は続行されることとなる。)

3 当事者に代わり、その代理人が聴聞の期日に出頭し、若しくは陳述書若しくは証拠書類等を提出し、又は参加人に代わり、その代理人が聴聞の期日に出頭した場合にあっては、その当事者又は参加人については法第23条及び条例第23条の適用はないこと。

4 法第23条第2項及び条例第23条第2項は、やむを得ない理由により当事者の聴聞の期日への出頭が相当期間見込めないにもかかわらず、その当事者が自ら口頭による意見陳述をあくまで求めるなどしてその陳述書又は証拠書類等を提出しようとしないことが、一方で、処分により確保されるべき公益を不当に害するおそれがあることに配慮したものである。本規定の適用に当たっては、当事者の権利利益を不当に損ない、聴聞本来の趣旨を没却することのないよう、当事者の意向、状況等について慎重に検討を行い、判断すること。

十 聴聞調書及び報告書(法第24条、条例第24条規則第15条第16条関係)

1 聴聞調書は、行政庁が不利益処分の決定についての事実認定を行う上で、重要な基礎となるものであり、適正な事実認定に十分に資することとなるよう、当事者及び参加人の陳述の要旨は的確に記載すること。

また、当事者等から提出された証拠書類等とその当事者等が行った陳述との関係が明確なものとなるよう、証拠書類等と陳述内容との対応関係を明らかにしておくこと。

2 聴聞の期日に当事者が正当な理由がなく出頭せず、かつ、参加人も出頭しなかった場合、又は当事者及び参加人とも陳述書を提出した場合などには、聴聞の期日における審理が行われることはないが、聴聞調書及び報告書は作成する必要があること。

3 聴聞調書及び報告書の行政庁への提出に当たっては、併せて、当事者等から提出された証拠書類等を添付すること。

4 聴聞調書は、「各期日ごとに」作成しなければならないが、これは聴聞調書の作成に関する時期的な単位を示しているものであり、当該期日(又は当日)中に聴聞調書を作成し終えることを意味しているものではない。

5 主宰者は、聴聞の審理(陳述書等に基づくものを含む。)の結果を踏まえ、法又は条例により授権された権能の下、主宰者としての責任において報告書を作成するものである。

なお、報告書の具体的な記載方法については、特に制約があるものではないが、主宰者は、客観的な証拠の有無、当事者等の主張に関する心証等に基づいて、公正・中立的な立場から、当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載すること。例えば、次のような例が考えられる。

① 当事者等の主張に理由がないことが明白であるとの心証を抱いた場合

「~なので、当事者等の~の主張には理由がないものと考える。」

② 客観的・明白な証拠はない(行政庁が保有する証拠書類等と当事者等が提出した証拠書類等と整合しないような場合。以下同じ。)が心証として理由がないと考えられる場合

「~の観点からみれば、当事者等の~の主張には理由がないのではないかと考える。」

③ 客観的・明白な証拠はないが心証として理由があると考える場合

「~の観点からみれば、当事者等の~の主張には理由があるのではないかと考える。」(又は、「~の点については、行政庁が保有する証拠書類等では十分に証明されないのではないか。」という書き方もあり得ると考えられる。)

④ 当事者等の主張に理由があることが明白であるとの心証を抱いた場合

「~なので、当事者等の~の主張には理由があるものと考える。」

また、聴聞の審理の場で、当事者等が、例えば、「(不利益処分の原因となる事実の存在自体は認めた上で)~という事情があるので、処分は勘弁してほしい。」といういわゆる情状に関する事実を述べることを排除する趣旨ではないので、その情状事実に理由があると思料するときは、例えば、「処分に当たっては、~の点についても参酌願いたい。」旨の意見を記載することもできる。

6 聴聞調書及び報告書は、聴聞の終結後速やかに行政庁に提出されることとなるが、特に続行期日が定められた場合における第1回目等の聴聞の期日に係る聴聞調書については、その作成後行政庁に提出するまでの間は、主宰者において適切に管理が行われること、また、その間、その閲覧の求めがあったときには主宰者がこれに対応すべきものである旨留意を要すること。

7 聴聞調書については、聴聞の審理における当事者等の陳述の要旨等を主宰者が責任をもって記載すべきものであるので、当事者等にその訂正権まで認めるものではないこと。なお、当事者等は調書の閲覧を求めることが可能であり、その結果、調書に誤りがあればその旨を事実上申し出ることはできる。また、誤った聴聞調書に基づいて処分がなされた場合には当該処分の取消訴訟においてその誤りを主張することも可能である。

十一 聴聞の再開(法第25条、条例第25条関係)

1 「聴聞の終結後に生じた事情」とは、不利益処分の主管部において聴聞の終結後に不利益処分の原因となる事実に関する新たな証拠書類等を得た場合や既存の証拠書類等に瑕疵があったような場合などをいう。また、新たな証拠書類等については、行政庁及び当事者又は参加人のいずれの側でも発見され得ることが想定されるが、当事者又は参加人の側において発見があった場合には、行政庁に対して事実上その旨を申し立てるなどの方法によることとなる。

2 処分の原因となる事実以外の新たな事実又はこれに関する証拠が判明した場合には、同一の処分となるものであってもその原因となる事実が異なることから、当該事実を原因として処分を行おうとする場合には、新たに聴聞を開くこととなる。

十二 聴聞を経てされる不利益処分の決定(法第26条、条例第26条関係)

1 「十分に参酌して」とは、行政庁が不利益処分の決定に際し、聴聞手続を経て不利益処分の原因となる事実についての認定を行う上で、聴聞調書の内容及び報告書に記載された主宰者の意見を十分に酌み取り事実認定を行わなければならないということである。「参酌」とは、“(聴聞調書の内容や報告書に記載された意見等の)事情を十分に考慮して程よく取り計らうこと、照らし合わせて善をとり悪をすてること”の意味であり、行政庁は、聴聞調書の内容や報告書に記載された意見を基礎として、聴聞調書の内容等を十分に考慮し、これを酌み取って不利益処分の決定を行う必要がある。

2 聴聞調書の内容等を「参酌」するものではあっても、不利益処分をしようとするときはその原因となる事実を処分の相手方に通知しなければならない(法第15条第1項、条例第15条第1項)ことから、相手方に通知していない別の事実を持ち出して(例えば、聴聞の審理を経た結果、通知した事実に理由がないとされたので、行政庁が別途把握している処分の原因となる別の事実を持ち出すこと)、その事実に基づいて(当該事実について聴聞を経ることなく)処分をすることがあってはならない。

十三 審査請求の制限(法第27条関係)

1 「この節の規定に基づく処分その他不作為」としては、行政庁における当事者等の文書閲覧の許可等(法第18条第1項)が、主宰者における利害関係人の参加の許可(法第17条第1項)、補佐人の出頭の許可(法第20条第3項)、当事者等による行政庁の関係職員への質問の許可(同条第2項)などが、これに当たるものであること。

第5 弁明の機会の付与

一 弁明の機会の付与の方式(法第29条、条例第27条規則第18条第19条関係)

1 口頭による弁明の機会の付与を行う場合にあっては、不利益処分の名あて人に、質問を行う権利まで保障する趣旨ではないが、弁明を聴取する職員は、法又は条例の趣旨を十分に踏まえ、不利益処分の名あて人となるべき者の弁明の権利の行使を不当に損なうことのないよう、真しな対応に心掛けること。

2 口頭による弁明の機会の付与を行う場合にあっても、法又は条例の趣旨を確保していく上で、弁明を受ける職員は、その弁明内容を的確に記録し、適切な管理に努めることとし、また、法又は条例の趣旨からは、その者が書面で提出することを希望すれば当然これは許容すべきであると解されること。

3 証拠書類等は、弁明書(又は口頭による弁明)と併せて提出されるべきものであるので、弁明書の提出期限(又は日時)までにその提出を行う必要があること。

4 法第13条第2項第4号及び条例第13条第2項第4号の規定により、一定の金銭の納付を命ずる処分等については法第13条第1項及び条例第13条第1項に規定する意見陳述のための手続に係る規定は適用されないが、普通地方公共団体の長が過料の処分をしようとする場合においては、地方自治法第255条の3の規定により弁明の機会を与えなければならない旨の特別の定めが設けられていることから、同条の規定により弁明の機会を与える場合においては、当該過料の処分の所管部において、所要の手続を定め、別途当該弁明の機会の付与に係る手続を実施する必要があること。

二 弁明の機会の付与の通知の方式(法第30条、条例第28条規則第20条関係)

1 弁明は、書面を提出して行うことが原則であり、口頭による弁明の機会の付与は、行政庁が特に必要があると認めるときに、その職権により行うものであることから、通知した口頭による弁明の日時の変更について相手方に申し出ることまでを認めるものではないこと。

三 口頭による弁明の機会の付与の方法(規則第21条関係)

1 弁明を聴取する「行政庁が指名する職員」は、当該弁明に係る不利益処分の決定権者が、その所属職員のうちから選び、指名の決定を行うこと。

四 弁明書の不提出等(規則第22条関係)

1 弁明書は、原則として、法第30条又は条例第28条の規定に基づき通知した提出期限までに到達することを要する。ただし、事務処理上特に支障のない場合は、提出期限までに発信されたものについては認める等柔軟に取り扱い、不利益処分の相手方の手続への参加の保障に努めること。

第6 行政指導関係

一 行政指導の明確原則と書面の交付(条例第33条関係)

1 行政指導については、不透明、不明確との批判があることを踏まえ、それが口頭又は書面によるかを問わず、その趣旨、内容、責任者が明確に示されなければならないという明確原則を定め、その具体化の方法として、求めに応じて書面を交付することとしている。このような条例の趣旨を行政指導に携わる者に十分周知徹底する必要があること。

2 条例第33条第2項の「権限を行使し得る旨を示すとき」とは、行政指導をする時点において既に許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を行使することが可能である場合に、当該権限を行使し得る旨を示すときのほか、行政指導に従わないときに法令等において当該権限を行使することができることとされている場合に、当該権限を行使し得る旨を示すときも含まれるものであること。

3 条例第33条第2項各号に掲げる事項については、行政指導の相手方が、許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限の根拠及び要件並びに当該権限を行使し得る理由を明確に認識し得るよう具体的に示される必要があること。例えば、当該権限を行使する具体的な要件が非常に多岐にわたる場合や下位法令等に規定されている場合には、同項第3号の「当該権限の行使が前号の要件に適合する理由」として、これらの要件のうち当該権限を行使し得る根拠となる要件に適合する理由が具体的に示される必要があること。

具体的には、「あなたの◇◇という行為が、…法第▽条の規定に違反することが認められたため、◆◆業務の運営の改善措置を講ずるよう指導します。また、この指導に従わず、業務の運営の改善が確認できない場合や、再び違反行為があった場合には、以下のとおり、◆◆業務に関する許可が取り消される場合があります。

① 許可取消処分の権限を行使し得る根拠となる法令等の条項(条例第33条第2項第1号)…法第○条

② 上記の条項に規定する要件(条例第33条第2項第2号)…法第○条第△号の政令で定める技術的基準に適合しないこと

③ 当該権限の行使が上記の要件に適合する理由(条例第33条第2項第3号)あなたの◇◇という行為が、許可取消処分の要件である…法第○条第△号の政令で定める技術的基準のうち…施行令第●条第▲号に定める「□□」という類型に該当しないため

といった示し方が考えられる。

4 条例第33条第2項各号に掲げる事項について、各事項をそれぞれ分けて示すか各事項を一括して示すかは任意であるが、行政指導の相手方がこれらの事項を明確に認識し得ることが必要であること。

5 条例第33条第2項各号に掲げる事項を相手方に示す方法については、個別の事案に応じてそれぞれの区の機関において適切に判断するものであるが、本条第3項の規定により、口頭で示した場合において、相手方から書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、本条第2項各号に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならないこと。

6 条例第33条第3項に規定する書面の交付に際しては、行政指導の内容等を明らかにすることが相手方の協力を得るために有益であることに留意し、書面は、できるだけ具体的かつ分かりやすく記述すべきものであること。特に、だれが当該行政指導を行うことを決定したものであるかを示す「責任者」を明示することが重要であり、当該「責任者」を特定できるよう具体的な職名等を明記する必要があること。

7 条例第33条第3項に規定する「行政上特別の支障」に該当するか否かについては、事例ごとに行政指導を行った区の機関において判断すべきものであること。また、既に口頭で行った行政指導を書面化するものであることから、これを拒み得る「行政上特別の支障」とは、口頭の場合には趣旨、内容、責任者を明らかにすることはできても、書面を交付することによってその内容が一般に明らかになることで、行政目的の実現が妨げられるおそれがある場合などに限られ、単に事務量が増大する等の理由では認められないこと。

8 広範多岐な行政分野において様々な形で行われている行政指導について、一律に書面化を義務付けることは困難であるため、行政運営の効率性とのバランスを考慮した結果、その端緒を相手方から「求められたとき」としたものであり、相手方からの求めがあれば、行政上特別の支障がない限り、できるだけ速やかに書面を交付すべきこと。ただし、条例第33条第4項に規定する場合のように、本制度の趣旨に照らし、相手方からの書面の請求に応じる必要がない場合についてまで書面交付を義務付けるものではないこと。

二 行政指導の指針の策定、公表(条例第34条関係)

1 策定し、公表すべき「共通してその内容となるべき事項」とは、一定の類型化された行為を行う者に対して、区の機関として該当者に求める事項の概要をいうものであること。また、指針を策定する場合には、行政指導の透明性・公平性を確保するという条例の趣旨を踏まえて、個々の行政指導を行う当該機関の基本的な考え方を明確に示すこと。

2 「共通してその内容となるべき事項」としては、具体的には、「○○指導要綱」として定められるものが典型例であるが、おおむね、次のような事項が定められる必要があること。

① 行政指導を行う趣旨(目的)

② 対象となり得る者の範囲又は該当する行為

③ 行政指導として求める一定の作為又は不作為の内容

④ 当該行政指導を行う場合の責任者

3 行政指導については、法令にその根拠となる規定が置かれているものを除いて、一般にはどのような行政指導が行われるのか区民にとって必ずしも明確ではない。このため、指導要綱等の策定当初に行政指導の周知をする場合には、事案に応じて、関係者への情報提供などの方法により積極的な公表措置を講ずる必要があること。

三 行政指導の中止等の求め(条例第34条の2関係)

1 実際に行われる個々の行政指導が「行政指導の中止等の求め」の対象となるか否かについては、それぞれの区の機関において、以下の点を踏まえつつ、個別の事例ごとに、申出の具体的内容や当該行政指導の内容、社会通念等に照らして、適切に判断する必要があること。

① 「法令又は条例等に違反する行為の是正を求める行政指導」とは、法令又は条例等に違反する行為自体の中止や適法な状態へ回復する措置その他の法令又は条例等に違反する行為を改めただすことを内容とする行政指導をいい、具体的には、法令又は条例等に違反する行為をした者に対して行われる次のような行政指導を指すものであること。

・ 法令又は条例等に違反する行為(法令又は条例等に規定されている義務又は要件に反する行為をいう。)自体の解消を内容とするもの

・ 法令又は条例等に違反する行為自体は終了しているが、当該行為によって生じた影響の除去又は原状の回復を内容とするもの

・ 法令又は条例等に違反する行為自体は終了しているが、当該行為の再発防止を内容とするもの

なお、個々の行政指導が条例第34条の2の対象となるか否かについては、当該行政指導の法律又は条例上の要件が「必要があると認めるとき」とされている場合など、法令又は条例等に違反する行為があることが明文上の要件とされていない場合も含めて、法令又は条例等に違反する行為を改めただすことを内容とする行政指導か否かという観点から、個別の事案ごとに判断するものであること。

② 「その根拠となる規定が法律又は条例に置かれているもの」とは、行政指導を行う権限及びその要件が法律又は条例に規定されているものをいい、条例の委任に基づかない規則又は要綱の規定に基づいて行われる行政指導その他区の機関の任務又は所掌事務を定める規定に基づいて行われる行政指導は含まないものであること。

③ 条例第34条の2第1項ただし書の「弁明その他意見陳述のための手続を経て」とは、当該行政指導を行うことについて、その相手方となるべき者が意見を陳述する機会が付与されたことをいうものであること。

これには、法律や条例に定められた弁明手続に限らず、運用上、当該行政指導を行うことについて、その相手方となるべき者の意見を聴取する機会を付与した場合も含まれるが、行政指導の相手方となるべき者に対し、書面などにより、行おうとする行政指導の内容及びその理由(根拠条項、原因となる事実等)を明らかにした上で、当該行政指導を行うことについて意見を陳述する機会が付与されたものである必要があり、行おうとする行政指導の内容等を明らかにすることなく、単に当該行政指導の原因となるべき事実の有無について意見を聴取したにとどまる場合などは、該当しないものであること。

また、行政指導の相手方となるべき者に対し、社会通念上、意見を陳述するために十分な期間を定めて意見陳述の機会を付与したにもかかわらず、正当な理由なく何ら意見が提出されなかった場合などは、「意見陳述のための手続を経て」に含まれるものであること。

なお、「弁明その他意見陳述のための手続」の方法については、特に限定はないものであること。

2 申出書の提出に関する区の機関の対応

① 申出書の書式については、特段の定めはなく、申出人は任意の書式により申出をすることが可能であること。

なお、それぞれの区の機関において、申出人の便宜等のため、参考となる「様式」を作成し、公にすることも考えられるが、その「様式」を用いていないことを理由に、不利益な取扱いをしてはならないものであること。

② 条例第34条の2第2項第5号の「当該行政指導が前号の要件に適合しないと思料する理由」については、例えば、行政指導の要件に適合するという行政機関の判断が誤っていることや、当該行政指導が事実誤認に基づくものであることが具体的かつ合理的に示されるなど、「要件に適合しない」と考える具体的かつ合理的な根拠が示される必要があるものであること。

③ 申出書の記載が具体性を欠いていても、申出の対象となる具体的な行政指導が特定され、当該申出を受けた行政機関が「必要な調査」その他の条例第34条の2第3項に規定する措置をとるに当たって特段の支障が生じない場合には、相手方からの申出を端緒として行政指導をした行政機関が改めて調査を行うという本制度の趣旨に照らし、「必要な調査」を行う等の本項に規定する対応をとるべきものであること。

一方、申出書の記載が具体性を欠いており、申出の対象となる具体的な行政指導が特定されない場合であっても、行政指導がされた際に申出書の記載事項である「当該行政指導がその根拠とする法律又は条例の条項」(条例第34条の2第2項第3号)や「前号の条項に規定する要件」(本項第4号)がその相手方に具体的に示されていなかったため、当該申出をしようとする際に具体的に記載することが困難であった事案が想定される。このような事案については、当該申出を受けた行政機関が当該申出書の記載が具体性を欠いていることを理由に、不適法な申出として取り扱うことは許されず、申出人に当該行政指導の内容を確認するなどの対応をとるべきものであること。

なお、条例第34条の2に定める手続の円滑な運用の観点も踏まえ、行政指導に携わる者は、「当該行政指導がその根拠とする法律又は条例の条項」や「前号の条項に規定する要件」を具体的に示すよう努めるべきであること。

④ 例えば、「○○管理員」や「□□監視員」がした行政指導について、これらの者の所属する「△△部」宛てに申出書が提出された場合など、申出書に軽微な記載上の誤りがあっても、申出を受けた区の機関が「必要な調査」その他の条例第34条の2第3項に規定する措置をとるに当たって特段の支障が生じない場合には、上記③と同様に、不適法な申出として取り扱うことなく、「必要な調査」を行う等の本項に規定する対応をとるべきであること。

3 申出を受けた区の機関の対応

① 条例第34条の2第3項の「必要な調査」とは、当該行政指導の根拠となる法律又は条例に規定する要件に違反するか否か、違反がある場合はその違反の内容及び程度等を確認し、どのような是正手段が適切かを判断するのに必要な調査をいうものであること。その具体的な内容及び手法については、申出の具体的内容や当該行政指導の内容、社会通念等に照らして、それぞれの区の機関において適切に判断する必要があること。

なお、それぞれの区の機関は申出書を受けて当該行政指導の根拠となる法律又は条例に規定する要件に違反するか否かを確認する必要があるが、申出書の記載に具体性がなく、その確認が困難な場合や、既に詳細な調査を行っており、事実関係が明らかで申出書の記載によってもそれが揺るがない場合などは、それぞれの区の機関の判断により、改めて「必要な調査」を行わない場合もあり得ること。

② 条例第34条の2第3項の「当該行政指導の中止その他必要な措置」とは、当該行政指導がその根拠となる法律又は条例の規定に違反する場合に、その是正のために必要となる措置をいい、当該行政指導の内容やその相手方が受けた不利益の内容等に応じ、適切な措置を講ずる必要があること。

当該行政指導が継続している場合には、一般に、その中止又は変更の措置を講ずる必要があると考えられるが、行政指導がされたことを公表することにより相手方が社会的信用の低下等の不利益を受けている場合には、併せて当該行政指導が違法であった旨を公表し、相手方の社会的信用を回復すること等が考えられる。

③ 申出を受けて区の機関が行う「必要な調査」等の対応については、手続の公正性の観点から、当該行政指導に実質的に関与した職員や当該行政指導について利害関係を有する職員以外の職員が行うことが望ましいものであること。

④ 申出を受けた区の機関の対応の結果については、法律又は条例上、申出を受けた区の機関に申出人に対する通知義務を課すこととはしていないが、それぞれの区の機関は、行政指導の相手方の権利利益の保護等に資する観点から、行った調査の結果、講じた措置の有無やその内容など、申出を受けた対応の結果について、申出人に通知するよう努めるべきであること。

第7 処分等の求め(法第36条の3、条例第34条の3関係)

一 申出人から求められた個々の処分又は行政指導が「処分等の求め」の対象となるか否かについては、それぞれの行政庁又は区の機関において、以下の点を踏まえつつ、個別の事例ごとに、申出の具体的内容や当該処分又は行政指導の内容、社会通念等に照らして、適切に判断する必要があること。

1 「法令に違反する事実」、「法令又は条例等に違反する事実」とは、法令又は条例等に規定されている義務又は要件に反する事実をいい、「法令に違反する事実がある場合」、「法令又は条例等に違反する事実がある場合」とは、申出の時点において法令又は条例等に違反する行為又は状態が反復継続している場合に限らず、申出の時点では法令に違反する行為又は状態自体は終了している場合も含まれる。具体的な法令又は条例等に違反する事実の発生を前提とせずに、将来における法令又は条例等に違反する事実の発生を未然に防止することを内容とする処分又は行政指導は、「法令に違反する事実」、「法令又は条例等に違反する事実」が存在しないため、法第36条の3又は条例第34条の3の対象とならないこと。

2 「その是正のためにされるべき処分又は行政指導」とは、法令又は条例等に違反する事実自体の解消や適法な状態へ回復する措置その他の法令又は条例等に違反する事実を改めただすことを内容とする処分又は行政指導をいい、具体的には、法令又は条例等に違反する事実を生じさせた者等に対して行われる次のような処分又は行政指導を指すものであること。

① 法令又は条例等に違反する事実自体の解消を内容とするもの

② 法令又は条例等に違反する事実によって生じた影響の除去又は原状の回復を内容とするもの

③ 法令又は条例等に違反する作為又は不作為の再発防止(業務停止命令や許認可等の取消し、課徴金の納付命令などを含む。)を内容とするもの

なお、個々の処分又は行政指導が法第36条の3又は条例第34条の3の対象となるか否かについては、当該処分又は行政指導の法律又は条例等上の要件が「必要があると認めるとき」とされている場合など、法令又は条例等に違反する事実があることが当該処分又は行政指導の根拠となる法律等において明文上の要件とされていない場合も含めて、法令又は条例等に違反する事実を改めただすことを内容とする処分又は行政指導か否かという観点から、個別の事案ごとに判断する必要があること。

3 行政庁がした処分を違法であると思料して求める当該処分の取消しについては、行政事件訴訟法の取消訴訟又は行政不服審査法の不服申立て等によることとなり、法第36条の3又は条例第34条の3の対象とはならないこと。

4 「行政指導(その根拠となる規定が法律又は条例等に置かれているものに限る。)」とは、行政指導を行う権限及びその要件が法律又は条例等に規定されているものをいい、条例の委任に基づかない規則又は要綱の規定に基づいて行われる行政指導その他区の機関の任務又は所掌事務を定める規定に基づいて行われる行政指導は含まないものであること。

二 申出書の提出に関する行政庁又は区の機関の対応

1 申出書の書式については、特段の定めはなく、申出人は任意の書式により申出をすることが可能であること。

なお、それぞれの行政庁又は区の機関において、申出人の便宜等のため、参考となる「様式」を作成し、公にすることも考えられるが、その「様式」を用いていないことを理由に、不利益な取扱いをしてはならない。

2 申出は、同一の事実について一の処分又は行政指導しか求めることができないものではなく、申出人が一通の申出書に同一の事実についてとり得る複数の処分又は行政指導を併記して、それらのいずれかをすることを求める旨を記載することも可能であること。

3 法第36条の3第2項第2号の「法令に違反する事実の内容」や本項第5号の「当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由」及び条例第34条の3第2項第2号の「法令又は条例等に違反する事実の内容」や本項第5号の「当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由」については、合理的な根拠をもって客観的にその旨を考えられる理由が具体的に記載されている必要があること。

4 例えば、法令上、「○○管理員」や「□□監視員」の権限とされている処分又は行政指導について、これらの者の所属する「△△部」宛てに申出書が提出された場合など、申出書に軽微な記載上の誤りがあっても、申出を受けた行政庁又は区の機関が「必要な調査」その他の法第36条の3第3項又は条例第34条の3第3項に規定する措置をとるに当たって特段の支障が生じない場合には、法令又は条例等に違反する事実を知る者からの申出を端緒として行政庁又は区の機関が必要な調査を行うという本制度の趣旨に照らし、不適法な申出として取り扱うことなく、「必要な調査」を行う等の法第36条の3第3項又は条例第34条の3第3項に規定する対応をとるべきであること。

5 上記4のほか、処分の権限を有さない行政庁又は行政指導の権限を有さない区の機関に申出がなされた場合には、当該申出を受けた行政庁又は区の機関は、申出先となる行政庁又は区の機関(処分の権限を有する行政庁又は行政指導の権限を有する区の機関)を確認して、申出人に対して情報を提供するよう努めるべきであること。

三 申出を受けた行政庁又は区の機関の対応

申出を受けた行政庁又は区の機関は、必要な調査を行わなければならず、当該行政庁又は区の機関は、当該調査の結果に基づき必要があると認めるときは、求められた処分又は行政指導をしなければならないこと。

1 法第36条の3第3項又は条例第34条の3第3項の「必要な調査」とは、法令又は条例等に違反する事実があるか否か、違反がある場合はその違反の内容及び程度等を確認し、どのような是正手段が適切かを判断するのに必要な調査をいうものであること。その具体的な内容及び手法については、申出の具体的内容や当該処分又は行政指導の内容、社会通念等に照らして、それぞれの行政庁又は区の機関において適切に判断する必要があること。

なお、それぞれの行政庁又は区の機関は申出書を受けて法令又は条例等に違反する事実があるか否かを確認する必要があるが、申出書の記載に具体性がなく、その確認が困難な場合や、既に詳細な調査を行っており、事実関係が明らかで申出書の記載によってもそれが揺るがない場合などは、それぞれの行政庁又は区の機関の判断により、改めて「必要な調査」を行わない場合もあり得る。

2 法第36条の3第3項又は条例第34条の3第3項の「必要があると認めるとき」とは、必要な調査の結果に基づき、法令又は条例等に違反する事実があり、その是正のために処分又は行政指導をする必要があると当該行政庁又は区の機関が認めるときを指すものであること。

他方、必要な調査を行った結果、次のいずれかに該当する場合など、「必要があると認めるとき」に該当しない場合には、求められた処分又は行政指導を行わないこととなる。この場合において、それぞれの行政庁又は区の機関の判断に応じて、法令又は条例等に違反する事実の是正のために、求められた処分又は行政指導に代わって、別のより適切な措置を講ずることが適当であると認められる場合には、当該措置を講ずるべきであること。

① 求められた処分又は行政指導が、その本来の目的やその根拠となる法令又は条例等の規定の趣旨等に合致しない場合

② 求められた処分又は行政指導により、法令又は条例等に違反する事実が是正されることに伴う利益に比べて、その相手方の受ける不利益が著しく大きい場合

3 申出を受けた行政庁又は区の機関の対応の結果については、法律又は条例上、申出を受けた行政庁又は区の機関に申出人に対する通知義務を課すこととはしていない。他方、それぞれの行政庁又は区の機関は、申出人の便宜等の観点も踏まえ、当該処分又は行政指導の相手方となるべき者の正当な利益が損なわれる場合や事務処理上著しい負担が生じる場合等を除き、行った調査の結果、講じた措置の有無やその内容など、申出を受けた対応の結果について、申出人に通知するよう努めるべきであること。

4 申出人の氏名等の個人情報は、もとより個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)等に基づき適切に管理されるべきものであるが、当該申出人が処分又は行政指導の相手方に特定された場合には、当該申出人が不利益を受けるおそれがあるため、特に申出人の個人情報の管理を徹底し、申出人の個人情報が漏えいすることがないよう万全を期す必要があること。

また、労働者が、その労務提供先における法令に違反する事実の是正のための処分又は行政指導を求める申出をした場合において、当該申出が公益通報者保護法(平成16年法律第122号)の「公益通報」に該当するときは、当該申出人は同法による保護を受けることとなること。

(平成29年3月31日28中経経第3844号)

この通知による変更は、平成29年4月1日から実施する。

(令和5年3月31日4中総総第4371号)

この通知による変更は、令和5年4月1日から実施する。

行政手続制度運用細目について

平成7年4月21日 中総総第45号

(令和5年4月1日施行)

体系情報
要綱通知編/
沿革情報
平成7年4月21日 中総総第45号
平成17年6月20日 中総総第1494号
平成21年4月1日 中経経第42号
平成27年4月1日 中経経第3995号
平成28年4月1日 中経経第4168号
平成29年3月31日 中経経第3844号
平成31年4月1日 中総総第3号
令和4年4月1日 中総総第6号
令和5年3月31日 中総総第4371号