第5期 中野区保健福祉審議会答申

区長に答申を手渡す本間会長の写真
中野区では、保健医療や社会福祉の総合的、一体的なサービス提供を推進するため、中野区保健福祉総合推進計画を定めています。このほど、当該計画の改定にあたり、地域での要援護者に対する柔軟で創意工夫のある支えあい活動の推進や障害者の自立生活を支えるための総合的な施策の展開について、また新たに策定される第4期介護保険事業計画及び第2期障害福祉計画に盛り込むべき基本的な考え方などについて、2008(平成20)年1月25日、中野区保健福祉審議会に諮問しました。
このことに関して、2008(平成20)年10月29日に、「中野区保健福祉総合推進計画の改定にあたり盛り込むべき基本的な考え方について」が答申されましたので、その全文を紹介します。
2008(平成20)年10月29日
中野区長 田中 大輔 殿
中野区保健福祉審議会会長
本間 昭
中野区保健福祉総合推進計画の改定及び介護保険事業計画、障害福祉計画の策定にあたり盛り込むべき基本的な考え方について(答申)
このことについて、2008(平成20)年1月25日付諮問第6号にて貴職から諮問を受けた事項に関して結論を得ましたので、別添のとおり答申します。
保健福祉総合推進計画の改定及び介護保険事業計画、障害福祉計画の策定にあたり盛り込むべき
基本的な考え方について(答申)
地域に根ざした地域福祉の諸活動の充実・促進を主要テーマとして
はじめに
少子高齢化の進展や人口減少化による人口構造の急激な変化、また長期的な経済活力への懸念がされるなか、社会保障制度を持続可能なものとするため、予防重視型システムへの転換をめざした介護保険制度の改正、医療制度改革、障害者自立支援法の施行など法制面での動きがつぎつぎと打ち出されている。しかし、医療制度改革や障害者自立支援法については、見直しの声が高まっているなど、国の社会保障を含む諸改革については途上の段階にある。
一方、地域の高齢者の状況に目を向けてみると、少子高齢化、核家族化の進展により、ひとり暮らし世帯、高齢者のみで暮らす世帯の増加傾向が目立っている。こうした中で孤独死の解消や認知症高齢者への対応、虐待の防止、地震など大規模災害発生時の対処などの生活課題が存在している。さらには、高齢者をねらった振り込め詐欺や悪質商法が横行し社会問題となっており、その対策が急がれている。
また、障害者福祉の領域では、障害者自立支援法のもと、福祉施設・病院に入所・入院している障害者について、地域生活への移行が進められており、これから地域での生活に移行する人たちを支える仕組みが求められている。
今後の地域の保健福祉の向上を考えた場合には、法やしくみによるサービスの一層の充実を図るとともに、地域における身近な生活課題に対応するための、地域住民の力による支えあいによる保健福祉の推進が緊要な課題となってくる。
今審議会における検討の中では、地域の要援護者を支えるための諸活動を住民が主体となって行うための条件整備やその動きを活性化させるための方策、身近な地域における総合相談支援体制の整備など、地域に根ざした地域福祉の諸活動の充実・促進の重要性が改めて指摘された。とりわけ、地域の要援護者を支えるための個人情報を含めた情報共有については多くの議論が交わされた。この点を踏まえ答申の中に総論としてまとめた。
地域における住民間の支えあいは、住民と行政との協働のもとでおこなわれるものであり、住民の活動が積極的、安定的に続けられるよう、行政は必要な関与を継続していく必要がある。さらには、地域の支えあいだけでは支えられないケースへの対応や、区民の尊厳と権利を守るためのセーフティネットを確保するうえでの行政の役割もある。行政の果たすべき役割の大きさを改めて再確認していただきたい。
今後、行政と地域、民間事業者それぞれの積極的な努力と協働により、本答申が具体化され、区民の保健福祉が向上することを大いに期待したい。
中野区保健福祉審議会長
本間 昭
目次
第一章 保健福祉総合推進計画の改定及び介護保険事業計画、障害福祉計画の策定にあたり盛り込むべき基本的な視点(総論)
視点1 身近な地域における総合相談体制の整備、充実
視点2 住民自らが気づき、解決に向けて動いていくためのまちづくり
視点3 自立生活を継続するための心身の健康づくり、介護予防活動の推進
視点4 見守りや簡単な手助けなど地域住民が参画し支えあう活動の推進
視点5 だれもが地域社会の一員として安心して暮らし、持っている力を発揮して元気に活動できる社会の実現
視点6 緊急時、災害時に備えた平常時からの地域の関係づくり
視点7 地域全体で支えていくための活動のネットワーク化
視点8 区民の尊厳と権利を守るためのセーフティネット機能の確保
第二章 地域での支えあい活動の推進について
第1節 地域で支えあう地域づくりの推進に向けて
- 地域の支えが必要な要援護者とは
- 地域の生活課題
- 地域の支えあいの相互性
- 実現をめざすまちの姿
- 3つの基本目標
第2節 今後、取り組むべき事項について
- 支えあうために必要となる情報を共有するためのルールづくり
- 既存の活動主体に対する支援など、支えあいを担うための受け皿の拡充
- 地域の支えあいネットワークづくり
- コーディネート役を担う人材の確保
- 区民理解の促進、活動の担い手の掘り起こし、支援
- その他の環境整備
第3節 支えあい活動の推進にあたっての視点
- 住民主体の活動の推進
- 地域でできることの整理
- 知ってもらう権利を主張できるまちづくり
- その人の考え方を尊重した関与のあり方
- 支えあいのレベルの観点
- 自分で相談に行けず問題を抱え込んでいる人や孤立している人に対する支援
- 災害時を視野に入れた平常時からの支えあい活動
- 活動を推進していくうえでの地域の捉え方(エリア、圏域)
- 活動の相互連携を円滑に進めるためのネットワークづくり
第4節 今後の区の取り組みに関する期待
第三章 介護保険事業及び高齢者を支えるための方策について
第1節 要介護状態の軽減もしくは悪化の防止又は要介護状態となることを
予防するための取り組みの推進について
- 介護予防事業の実施
第2節 事業計画期間内における介護サービスの見込み
- 高齢者人口
- 要介護等の認定者数
- 介護サービスの見込みの考え方
- 在宅サービスの見込みの考え方
- 施設サービスの見込みの考え方
- 地域密着型サービスの見込みの考え方
第3節 区民の負担能力に配慮した保険料の段階区分、料率の見直し
- 保険料の段階設定と料率
第4節 事業者への支援、その他サービス内容の質の向上に向けた取り組み
- 各職種、事業者間での連携の促進
- サービスの質の確保
- 情報の提供
- 苦情への対応
- 事業所指導
第5節 特別給付など介護保険事業の充実・改善方策
第6節 介護サービスに係る人材確保・育成について
第7節 介護サービスでは対応しきれないニーズへの考え方
第四章 障害福祉計画及び障害者の自立生活を支えるため施策の展開について
第1節 障害者の社会参加や自立支援を促進していくために
第2節 必要な取組みを進めるうえでの論点整理と方向性
- 論点1「相談支援の機能強化・充実」の方向性
- 論点2「障害者の就労支援」の方向性
- 論点3「長期入所・社会的入院から地域生活への移行促進」の方向性
第3節 相談支援の機能強化・充実
- ライフステージを一貫した相談支援体制の構築
- ニーズの掘り起こしと必要なサービスを提供するための体制づくり
- 総合的な相談体制と専門性の確保
第4節 障害者の就労支援
- 就労支援体制の強化
- 就労の場・機会の拡大
- 就労後の生活・定着支援
第5節 長期入所・社会的入院から地域生活への移行促進
- 地域移行のための計画的な基盤整備など効果的な施策の実施
- 住まいや地域移行に向けた訓練機能の強化など必要な基盤の整備
- 24時間対応の相談窓口確保など相談体制の整備
第6節 今後特に留意すべき事項
- 障害者への理解の促進
- 精神障害者の福祉サービス利用促進
- 発達障害への対応
- 高次脳機能障害への対応
付属資料(PDF版)
参考資料(PDF版)
- 中野区の現状
- 地域における活動主体の状況
- 活動、支援を行う地域単位の状況(地域センター圏域ごとの状況)
- 支えあい活動を推進していくための4層の圏域設定例(ネットワーク図)
本文
第一章 保健福祉総合推進計画の改定及び介護保険事業計画、障害福祉計画の策定にあたり盛り込むべき基本的な視点(総論)
中野区保健福祉審議会(第5期)は、平成20年1月25日、中野区長から以下の諮問を受けた。
- 中野区保健福祉総合推進計画の改定にあたり、同計画に盛り込むべき基本的な考え方、とりわけ、以下の点に係る意見
- 地域での要援護者に対する柔軟で創意工夫のある支えあい活動の推進について
- 障害者の自立生活を支えるための総合的な施策の展開について
- 第4期中野区介護保険事業計画の策定にあたり、同計画に盛り込むべき基本的な考え方、また、高齢者を支えるための方策について
- 第2期中野区障害福祉計画の策定にあたり、同計画に盛り込むべき基本的な考え方について
本審議会では諮問を踏まえ、1.地域での支えあい活動の推進、2.介護保険制度及び高齢者に対する施策のあり方、3.障害者に対する施策のあり方の3つのテーマについて、それぞれ専門部会を設けたうえで審議を進めてきたが、各部会での審議を通じて、住民主体による支えあい活動の推進や身近な地域における総合相談体制の整備、セーフティネット機能の確保といった、地域に根ざした地域福祉の諸活動を充実・促進していくことの必要性、またそのための条件整備が共通の課題として浮かび上がってきた。
子どもから、高齢者、障害者など、何らかの支援を必要とするすべての人が、地域で安心して自立生活を送ることができるよう地域の保健福祉を向上させていくためには、法やしくみによる公的なサービス提供の充実整備と、地域における身近な生活課題に対応するための、地域住民の力による支えあいによる活動の充実の2つ要素をバランスよく推進していくことが重要となる。
高齢者や障害者などの保健福祉サービスの基盤については、これまでも計画的に整備が進められてきた。特に介護保険法に基づく介護サービスや障害者自立支援法に基づく障害福祉サービスなどの分野では、サービス提供の担い手である民間事業者等が相当に力をつけてきており、サービスの質、量ともに飛躍的に充実してきている。
しかし、このような法やしくみによる公的なサービス提供だけでは、住民の多様なニーズにきめ細かく柔軟に対応していくことは難しく、また制度間の谷間にあって対応できない問題もあるため、全ての住民ニーズを法やしくみによる福祉サービスのみで対応することは不可能である。
このことを踏まえて考えると、今回、専門部会での審議を通じた共通課題の解決は、地域の保健福祉の充実をめざすうえで、欠くことのできない要素といえる。
このため、今答申では、それら浮き彫りとなった課題について、今回の答申全体を通じた基本的な視点としてとりあげることとした。
第一章では、その内容を保健福祉総合推進計画の改定及び介護保険事業計画、障害福祉計画の策定にあたって区が踏まえるべき8つの視点として、本答申の総論としてまとめた。
また、第二章以降では、各論として、各専門部会での審議内容をもとに、地域の支えあい活動の推進、介護保険制度及び高齢者を支えるための施策展開、障害者の自立生活を支えるための施策展開の3つの領域ごとに、今後区が取り組みを進めるべき具体的な方策として提言する。
「保健福祉総合推進計画の改定及び介護保険事業計画、障害福祉計画の策定にあたり盛り込むべき基本的な視点」
視点1 近な地域における総合相談体制の整備、充実
住み慣れた身近な地域で生涯にわたり相談支援を受けられるよう、子育て支援から保健福祉の相談支援までの相談支援を融合し、総合的、継続的な体制を整備するとともに、個々の対象者への対応だけでなく家庭・家族という幅広い視点でとらえた支援の実現をめざすべきである。
取り組むべき具体的内容
- ライフステージを通じた支援の充実
- 総合相談支援窓口の身近な地域への設置
- 専門相談を受けられる体制の確保
- 地域のだれもが気軽につどい、悩みを打ち明けられる場の確保
- 自ら声をあげない、あげられない人に対するアプローチ
- 予防的視点に立った相談支援の実施、必要に応じた出張相談の実施
視点2 民自らが気づき、解決に向けて動いていくためのまちづくり
地域におけるさまざまな生活課題にきめ細かく対応するために、地域で支援を求めている者に住民が気づき、住民自らが地域の生活課題を考え、その対応に向けて動いていくような、支えあいの地域づくりを進めていくべきである。
取り組むべき具体的内容
- 地域の課題を共有し、ともに考え活動していくための場の確保
- 障害者、高齢者などに対する正しい理解を促進するための継続した啓発活動
- 子どもや若い世代に福祉に関心を持ってもらうようにするための働きかけ
- 団塊の世代や若い世代の新たな参加を促すための機会、場づくり
- サロン活動など、身近な地域での気軽に立ち寄れる居場所づくりの推進
視点3 自立生活を継続するための心身の健康づくり、介護予防活動の推進
生涯を通じた心身の健康づくりと生活習慣病の予防、高齢期に入ってもできる限り要介護状態になることなく健康で生き生きとした生活を送ることができるよう必要な取り組みを充実すべきである。
取り組むべき具体的内容
- 区民自らが進める健康づくり行動、介護予防の取組みへの参加を促進し、継続させるための、参加者どうしのつながりを強めるための働きかけ
- こころの健康づくりと安心できる医療環境の整備
視点4 見守りや簡単な手助けなど地域住民が参画し支えあう活動の推進
お互いのプライバシーをきちんと確保しながらも、住民どうしが互いに認知しあって理解し、困ったときや、緊急時にお互い助け合い協力できるような関係づくりを地域に築いていくべきである。
特に、個人情報を含めた要援護者の情報を共有するためのルールづくりについては、今後の支えあい活動の推進していくための基盤となる重要な事項であることを踏まえ、新たな条例の制定を含めて早急に検討をおこなうよう提言する。
取り組むべき具体的内容
- 最も身近な地縁の団体である町会・自治会の活動を基盤とした、区内どこでも支えあい活動がおこなわれている状態の実現をめざした、新たなしくみの構築
- 町会・自治会などの活動団体が活動にあたって必要とする、要援護者の個人情報を共有するためのルールづくり
- 対象者、その人の考え方、プライバシー保護に配慮した支えあい活動の推進
- コーディネーター役を担う人材の配置など行政の積極的な関与
視点5 だれもが地域社会の一員として安心して暮らし、持っている力を発揮して元気に活動できる社会の実現
高齢者や障害者の存在を、社会に支えられ、サービスを受ける側としてのみとらえるのではなく、その人が持っている能力を発揮し活躍できるような相互性をもった関係として築いていけるよう区は働きかけをすべきである。
取り組むべき具体的内容
- 高齢者や障害者等が犯罪や事故、消費者トラブルの被害等に巻き込まれることを防ぐための取り組みの推進
- 高齢者が長年培ってきた知恵や経験、技能、意欲などを十分発揮して地域社会に参加できるようにするためのきっかけづくり、場づくり、気運づくり
- 障害のある人が、必要な支援を保障されつつ、社会の支え手として自らの能力を発揮し、自己実現していけるような施策の展開
視点6 緊急時、災害時に備えた平常時からの地域の関係づくり
災害時発生初期には公的な救助は対応が間に合わないことが予想されるため、地域における支えあい活動の役割が重要となる。日常時から災害発生時を目線に入れた関係づくりを推進していく必要がある。
取り組むべき具体的内容
- 緊急時に迅速に動けるようにするための、地域の活動団体、専門機関などとの関係づくり
- 高齢者や障害者など災害弱者に対する安全対策の推進
- 必要な行動マニュアル類の整備
視点7 地域全体で支えていくための活動のネットワーク化
地域のさまざまな活動主体が、重層的、複層的に連携して、地域を支えていることにより、それぞれの活動主体が持つ強みを活かし、弱みを補完し、全体として質の高い活動を確保することができる。これが地域支えあいネットワークを構築する意義である。区は、住民の支えあいネットワークづくりをすすめ、さらに医療機関、民間事業者なども含めた地域の包括的なケア体制を構築するための働きかけを積極的に行うべきである。
なお、住み慣れた地域での安心生活を確保するうえでは、適切な人材のもとに、地域における施設やサービス提供事業者が有効に機能し、区民のニーズに応じた質の高いサービスが提供されていることが欠かせない。このため、地域における良質な人材の確保は、地域資源の充足を考えるうえでの有力な要素となる。
取り組むべき具体的内容
- 住民による活動を活性化し、広げていくためのネットワークの構築
- 専門職、専門機関どうしのネットワークの検証と実行性確保
- 保健福祉のサービス提供を担う専門職の確保と資質向上のための支援
- 日頃からの情報交換の仲立ちや、トラブル発生時の仲裁役など、ネットワークを円滑に機能させるための行政の必要な関与
視点8 区民の尊厳と権利を守るためのセーフティネット機能の確保
民間事業者では対応が困難な事例への関与や成年後見制度の推進を始めとした権利擁護、苦情解決やサービスの質の向上など、区民の尊厳や生命を脅威から守り、個々の人々の自由と可能性を実現するための役割について、行政はしっかりと受け止め、問題の深刻化を防ぎ、解決に向けた支援をしていく必要がある。
取り組むべき具体的内容
- 虐待の予防と早期発見、早期対応
- 中野の特性である若者層が地域とかかわったり、気軽に相談できる環境の整備
- 困難事例などへの対応の充実
- 成年後見制度の普及・地域での理解、手続や後見人を支援するための取組みの推進
- 社会的排除の対象となりやすい者(外国人やニート、不安定就労層、路上生活者、犯罪被害者等など)への対応
第二章 地域での支えあい活動の推進について
本審議会では、諮問内容のうち地域での要援護者に対する柔軟で創意工夫のある支えあい活動を推進するための方策についての審議をおこなうための専門部会として、地域支えあい部会を設置し、以下の事項を付託して検討をおこなった。
本章の内容は、同部会からの報告内容をもとに踏まえて記述したものである。
地域支えあい部会に対する付託事項
- 要援護者を地域で支えあうための地域活動の相互連携、行政との連携のあり方
- 地域の支えあい活動に団塊世代や若い世代の参加を得るための方策
第1節 地域で支えあう地域づくりの推進に向けて
介護保険制度や障害者自立支援制度など法や制度に基づく公的な福祉サービスについては、これまでも整備充実が図られてきているところであるが、地域におけるさまざまな生活課題にきめ細かく対応するためには、そうした公的な福祉サービスのみでは不十分である。
今後の地域における福祉のあり方を考えた場合、公的な福祉サービスの整備充実を図るとともに、地域で支援を求めている者に住民が気づき、住民自らが地域の生活課題を考え、その対応に向けて動いていくような、支えあいの地域づくりを進めていく必要がある。
しかしながら、中野区を含む都市部では近隣関係は総じて浅く、地域の活動に参加する人も少ない状況にある。さらに、近年は個人情報保護意識の高まりなどの背景もあり、支援を必要とする人が地域からの支援を受けにくい状況となっている。
近隣にわずらわされず家族中心の生活を望む個人生活重視型の人たちが多い都市部の住民意識の中で、お互いのプライバシーをきちんと確保しながらも、住民どうしが互いに認知しあって理解し、困ったときや、緊急時にお互い助け合い協力できるような関係づくりをいかに進めていくことが今、問われている。
1 地域の支えが必要な要援護者とは
ここでは、地域の支えが必要な要援護者を、ひとり暮らし、あるいは家族がいる場合でも、自らの力だけでは、問題への対応が難しい状態にある人たちと想定する。
具体的には、ひとり暮らしの高齢者や高齢者のみ世帯、認知症高齢者、障害児・者世帯、虐待を受けている人、孤立している子育て家庭、あるいは、社会的排除の対象となりやすい人たち(外国人やニート、不安定就労層、路上生活者など)などである。
2 地域の生活課題
現在、地域には次にあげるような生活課題が存在している。今後、地域をあげてその解決を図っていく必要がある。
これらの課題は、住民どうしの支えあい活動だけで対応できる問題ではないが、支えあい活動があることにより、誰かが見ていてくれるのだという安心感を醸成することができる。また、異変が発生したときには、いち早く気づき、相談窓口等へとつなげることによって、早期対応の方向に向かうことが可能となる。
- 孤独死の防止
- 認知症で徘徊のある人などの見守り、発見
- 虐待の早期発見(高齢者虐待、児童虐待、障害者虐待、DVなど)
- 高齢者などの消費者被害の防止
- ひとり暮らしや日中孤立しがちなど、ひとりで生活している人への支援
- ちょっとしたことの手伝いを頼める相手がなく困っている人への支援
- 障害者に対する施設などからの地域生活への移行支援
- 軽度者や一時的に要援護状態にある人に対する支援
- 災害時の要援護者の支援
- 社会的排除の対象となりやすい者への対処(外国人やニート、不安定就労層、路上生活者など)
- 子どもの問題、高齢者の問題など複合的な問題のある世帯への一体的な支援
3 地域の支えあいの相互性
地域の支えが必要な要援護者に対する支援については、一方的なものではなく、住民が、時と場合に応じて、支え、支えられるという、相互の関係性があるものとして捉えるべきである。
例えば、近所の子育て経験のある方が、仕事が忙しい若い母親たちの代わりに子どもの面倒を見て、自身の経験から子育てのアドバイスをしてあげるなど、安心な子育てをサポートする。逆に、この方が、高齢になり、一人での生活がおぼつかなくなったときに、助けもらった母親たちが、この方のケアを手伝ってあげる。このように、地域全体を包み込むような子育ての支援があり、また、その動きが高齢者に対する手助けにも自然につながっているというような、相互協力の関係性を地域に築いていくべきである。
4 実現をめざすまちの姿
以上の点を踏まえ、中野区が地域をあげて、実現をめざすべき、まちの姿として、つぎの4つを想定する。
- 地域で一人も孤立していない
- 困ったとき、悩んだときにはいつでも気軽に相談できる
- 地域、団体の考え方に応じた多様な支えあい活動が行われている
- 多くの人が支えあいに関心をもち、主体的に活動に参加している
5 3つの基本目標
地域で支えあうまちづくりに向け、「めざすまちの姿」を実現していくためには、区全体が進むべき方向性を共有化し、一丸となって前に進んでいくことが必要である。
区は、以下の3つの基本目標を示し、方向性を明確にしたうえで、区民、関係機関等とともに所要の取り組みを進めていくべきである。
- 地域に顔見知りをつくる
- お互いが気にしあい、ともに考え、行動するまちづくりを進める
- 地域のさまざまな活動が連携して支えあう関係を築く
- 地域に顔見知りをつくる
支えあいは、相手に関心を持つことから始まる。特にあいさつをするという、基本的なコミュニケーションが重要であり、そこから、ちょっとしたお手伝いをするという関係や、見守り、声かけというような具体的な行為、行動につながっていく。
知ってもらい、信頼してもらうことが、良い関係を作っていくための第一歩であり、そうした関係の延長線上に、隣近所でお互いに助けたり助けられたりするネットワークが築かれ、困ったときには、誰かが自分のことを気にしていてくれる、そんな安心感の得られる地域が実現できる。
時間がかかることではあるが、あいさつが自然に交わされ、みんなが知り合いになる。そういう顔の見える関係をつくるための運動を地域の中で地道に進めていく。 - お互いが気にしあい、ともに考え、行動するまちづくりを進める
おせっかいにならない程度にお互いが気にしあい、声をかけあっているということが何かの時に支えあえる素地を生み出す。そういう関係を築いていくことができれば、孤独死などの生活課題については相当程度、未然に防ぐことができる。
今の社会は他人の生活に入り込むことや、入り込まれることを嫌うが、お互いのプライバシーを守りながらも、地域の住民がお互いの生活を何となく気にして見ているというような状態を地域の中につくっていく。
また、こうした、お互いの生活を何となく見ているというような関係を通じて、地域における生活課題を地域全体の課題として共有化し、対応していくための方策をともに考え、地域の力でその課題の解消に向けて動いていく。 - 地域のさまざまな活動が連携して支えあう関係を築く
地域の実情に応じた住民による諸活動が区内の地域それぞれにあり、自らの方針に基づき、支えあいの活動を展開している。そうした活動は、必要に応じて、対象者の情報を共有しあい、連携しながら活動している。
そうした町会・自治会など地域の住民力と、民生・児童委員、社会福祉協議会、消防、警察、医療機関、サービス提供事業者などの専門職、専門機関の力とが、うまく関係を保ちながら、重層的に地域の支えあい活動にかかわり、「地域の福祉力」を高め、お互いに連携をしながら地域社会全体で支えるしくみを構築していく。
- 地域に顔見知りをつくる
第2節 今後、取り組むべき事項について
今後、支えあいのまちづくりを進めていくうえで、区が取り組むべき内容として、次のとおり提言する。
1 支えあうために必要となる情報を共有するためルールづくり
地域の課題として今後、対応をしていかなければならない課題である、孤独死の防止や認知症高齢者に対する支援、障害者に対する支援、虐待の防止などについては、地域での細やかなかかわりあいを積み上げていくことが必要となる。
一方、地域の活動主体が活動をするためには、高齢者や障害者などの住所、氏名などの対象者に関する情報を把握する必要があるが、現在は、個人情報保護の観点から、行政からこうした情報を提供することはできず、また、地域の活動主体間で情報を共有することもできない。
こうした状況から、個人情報保護と情報の共有の両立を図り、支援にあたって必要となる対象者の個人情報を共有化するためのしくみの整備など、地域ぐるみの支えあい活動を進めていくための土台づくりを積極的に進めていくことが、喫緊の課題となっている。
なお、情報の共有については、緊急時を除き、本人から同意を得ることを前提とすべきだと考えるが、手を上げた場合には、行政はどうコーディネートして安心材料を提供してくれるのか、自身の生活はどのようになって安心できる状態になるのかといったメリットを具体的に示すことが重要であり、そうした材料がない限り同意を得ることは困難だと思われる。
また、犯罪を含め、詐欺行為等々が数多く発生している昨今、情報が共有されることに対する不安感が強いと予想される。そうした住民の抵抗感を解消し、情報を登録することのリスクをなくすために、個人情報の取り扱いについては、しっかりと責任ある体制をつくっていくべきである。
区は、こうしたことを踏まえ、しっかりと全体像を描いたうえで、以下の取り組みを進めていく必要がある。
取組み1 区の保有する情報を地域で共有するためのルールづくり
支援を必要とする高齢者、障害者等に対する見守り・安否確認など、地域の支えあい活動が日常的に区内どこでも行われている状況を実現するためには、町会・自治会、民生委員などの活動主体が、自らの活動範囲における対象者を把握したうえで、働きかけをおこない、活動を広げていくことが必要となる。
区は、区が保有している要支援者の個人情報を、地域の活動主体と共有するためのルールづくりを早急に進め、地域の活動主体が活動しやすくなるように環境を整えるべきである。
なお、ルールづくりについては、新たな条例の制定を含めて検討をおこなうよう提言する。新たな地域の支えあいを推進するための条例を制定することにより、その取り組みが継続的なものとなることに加え、議会を通し、住民が意思決定をすることによって、区民に対してアピールすることができ、区民の意識づくり、専門諸機関の連携強化にもつながっていくことが期待できる。
検討に際して留意すべき事項
- 情報提供は、本人同意を前提として組み立てを考える。
- 緊急時や客観的にみて周囲の支援が必要だと判断される場合には、本人の同意がなくても情報提供できるようにすべきである。
- ただし、2.の場合には一定の客観的な判断基準が必要と考える。
- 情報を提供する相手については、地域で実際に支えあい活動をおこなっていることを前提としたうえで、きちんと責任を持って個人情報が管理できる団体に限るべきである。
- そのうえで、どのような内容の個人情報を共有するか、活用範囲などについて、協定を結んだうえで情報の提供を開始すべきである。
- 行政から情報を提供する手段(帳票リスト、磁気記憶媒体、電話での問い合わせなど)についても明確化する必要がある。
- 情報の提供先には、責任者の位置づけや、提供した情報の保管の方法、団体内での情報の共有範囲、電子メールやホームページ掲載といったインターネット上でのやり取りなど、団体内での情報の取り扱い方を明確にさせる必要がある。
- 具体的な情報の提供範囲については、町会・自治会、民生委員、自主防災組織、地域包括支援センター、社会福祉協議会などのほか、関係機関として、消防署、警察署、障害者や高齢者関係の事業所などが想定される。
- 今後の活動の担い手拡大を視野に入れ、NPO法人、ボランティアグループを情報の提供範囲に含めて考える場合には、普段から地域で支えあいをしている団体に限り、地域の支えあいネットワークへの参加を必須条件とすべきである。
- NPO法人、ボランティアグループに対する情報提供については、住民感情を尊重するとともに、情報が想定外の利用をされることを防止するための措置について慎重に検討すべきである。
- 昨今、犯罪を含め、詐欺行為等々の事件が多発するなか、悪質業者に対する歯止め策が必須となる。罰則導入なども視野に入れてルールを検討すべきである。
区が所有する情報を活用するための条件整備
現在、区は、障害者手帳保持者、介護保険要介護認定者、ひとり暮らし高齢者調査結果など、事業ごとに名簿を作成して管理している状態であるが、今後、支えあい活動に必要となる情報を地域に提供していくことを想定すると、情報の一元化を検討すべきではないか。また、対象者の世帯や住所に変更があった場合や、死亡されたときなどにも情報の齟齬を生じないよう、住民基本台帳とも連動させるなど、情報の適正化についても検討が必要なのではないか。
また、水害や震災などの災害発生時に、支援を必要とする高齢者、障害者が該当地域のどこに居住しているかといった情報が容易に取り出せ、その方の生活状況もすぐに把握できるというような、災害時における情報活用策についても検討を進めるべきである。
取組み2 活動団体等が把握している情報の共有化
一番身近な地縁の団体である町会・自治会では、ひとり暮らし高齢者の名簿をつくって、町会・自治会内で共有している例もある。しかし、町会等が独自で確認している情報については、ほかの団体などと共有することができず、せっかくの情報を十分に活用することができない状態にある。
また、民生委員については、地域で深刻な問題を抱えている方を発見し、地域全体で受け止めてもらいたいような場合であっても、守秘義務があるため、地域に情報を出せず、悩みながら活動している状況にある。また、災害時に一人も見逃さない運動を展開するなかで地域の見守りマップを作成しているが、そのせっかく作ったマップを地域内に情報提供できないでいる。
地域の中でこれらの団体が把握している情報を、行政が仲立ちをして共有化し、これら団体を横につないでいければ、お互いに補完しあい、生活者にとっては非常に助かる例が多いのではないかと思われる。
区は、本人の承諾を基本とするなど必要なルールづくり、共有するメンバーの範囲の明確化、必要な場合に専門職や専門機関とつなぐためのしくみづくりなどを検討したうえで、各団体が連携して取り組みを進められるよう、早急に環境づくりを進めるべきである。
具体的には、地域の活動主体の活動状況を踏まえた身近な地域の範囲(地域センターエリア等)を単位として、地域の活動主体が情報を交換するための場を定期的に確保するなど、行政が関与した状況の下で、必要な情報を活動主体どうしが共有できるような方策を検討すべきだと考える。
他の自治体では、町会・自治会と民生委員、福祉委員、老人クラブと子ども会が2か月に1回程度、福祉連絡会というものを開催するようにしたことにより、円滑に活動できるようになった例などもある。
地域で得られた情報の一元管理
地域で支援を必要とする人に対しては、町会・自治会や民生委員、地域包括支援センターの職員が訪問したり、事業者がサービス提供を通じて接点を持っているなど、日常からさまざまなアプローチがある場合が多いと考えられる。それらの活動を通じて個別に得られた情報について、最終的にそれらを全体としての情報としてまとめあげ、支えあい活動に必要な、おおもとのデータベースを構築することが必要なのではないかと思われる。
区は、データベースの構築について、誰が管理し、どういう状況のときに、どこまで、誰に出すのかという、運用方法についてもしっかりと整理したうえで、検討を進めるべきである。
取組み3 判断能力の低下している方の本人同意を得るための環境整備
要援護者の個人情報を外部機関に提供するにあたっては、本人同意が前提になることが原則である。しかし、まちなかには、同意するための判断能力が低下している人も少なくない。本人の判断能力の低下により本人同意を得ることが難しいケースには、成年後見制度による後見人等の判断によって同意を得ることが可能であるが、全ての人が成年後見制度を利用しているわけではない。
高齢化の進展にともない、判断能力が低下している人の数が増加していくことが予想される。例えば、独居で認知症の症状があるというような人たちに対する支えあい活動を円滑におこなっていくためには、同意するための判断能力がない人に対しての対応についても併せて考えていく必要がある。
区は、成年後見制度への理解を深めるとともに、制度の利用促進を図るための取り組みを積極的に進めていくべきである。
2 既存の活動主体に対する支援など、支えあいを担うための受け皿の拡充
区の保有している情報を地域の活動主体と共有するためのルールづくりを進め、環境づくりが整ったとしても、その情報を活用する活動主体が地域に存在し、ある程度の規模をもって活動していなければ、その意義は失われてしまうことになる。
大都市部では、地縁による活動がほとんどない地域も存在するが、中野の地は、歴史のある住宅地ということもあり、町会・自治会活動など地縁の活動が元気さを保持しながら存在している状況にある。
この状況を活かし、町会・自治会など既存の地縁による活動団体の協力を得ながら、区内どこでも、支えあいの活動が広く行われているという状況をつくっていき、併せて、NPO団体やボランティアグループなど新たな担い手の参画を得て、その活動を重層的なものにしていくということで、支えあいの環境づくりを整えていくべきである。
取組み1 町会・自治会活動など既存の活動主体の活性化支援
地域の支えあいについては、隣近所とのお付き合いが大切であり、区は、町会・自治会、民生委員など既存の地縁による活動団体の協力を得ながら、隣近所のおつき合いを大切にできるまちづくりを進めていく必要がある。
しかし、町会・自治会、民生児童委員などについては、担い手の高齢化などの課題を抱えている。地域のボランティアコーナーについても、最盛期の6割ぐらいまで減ってきている。このように、既存の地域にある活動主体については、引き継いで続けていく人、活動を広げていくための担い手の確保が、共通の課題となっている。
区は、町会・自治会など既存の地縁による活動主体に地域の支えあい活動における基盤を担ってもらうことを期待するとともに、その活動組織を活性化していくための方策を検討し、必要な支援策を講じていくことが必要である。
取組み2 活動資金を継続的に確保するための方策の検討
地域の支えあい活動は、住民どうしの支えあいであることから、その資金は住民自らの募金や寄付などによることが原則となると考えられるが、直接の事業費ではない、事務局の運営経費等にあてることについては、寄付する側の理解が得られにくいとの指摘もある。
地域の活動主体が、支えあいの活動を広げていくためには、活動財源を安定的に確保していくことが必要であり、そのためには、当面、行政が関与した一定の支援策を講じることも検討が必要かと思われる。
中野区においても、区民の公益活動に関する政策助成や、区民公益活動推進基金からの助成などのしくみをつくり、区民団体が行う公益活動の取り組みを推進しているところであるが、最近では、「ふるさと納税」や千葉県市川市の「納税者が選択する市民活動団体への支援に関する条例(通称:1%支援制度)」のように、納税者が税金の使途を指定できる制度なども導入されている。これらの制度については、納税に対する意識を高めるとともに、地域づくりの主体となる団体等に対する活動の支援・促進、住民の市民活動に対する意識を高めるきっかけとなっているようである。これらの先行事例も参考として、地域の活動主体が活動資金を継続的に確保するための方策についてさらに研究すべきである。
3 地域の支えあいネットワークづくり
地域のさまざまな活動主体が、重層的、複層的に連携して、地域を支えていることにより、それぞれの活動主体が持つ強みを活かし、弱みを補完し、全体として質の高い活動を確保することができる。これが地域支えあいネットワークを構築する意義である。そうした、地域住民の支えあい活動が盛んにおこなわれ、法や制度に基づくサービスと結びつくことによって、区民の安心生活が確保されることになる。
このような包括的な地域のケア体制の実現をめざしていくことが重要である。
また、普段から連携のできる体制が整っていれば、日常のみならず、災害時にもかなり強い体制を築くことができる。
区は、住民の支えあいネットワークづくりを活性化し、地域の包括的なケア体制を構築するための働きかけを積極的に行うべきである。
取組み1 専門職、専門機関どうしのネットワークの検証と実効性確保
区は、当事者を支援する立場にあるケアマネジャーやサービス提供事業者、民生児童委員、ケースワーカー、保健師、地域包括支援センター、社会福祉協議会、医療機関など、さらに警察、消防なども含めた、専門職、専門機関どうしのネットワークを検証し、円滑に動くための条件を整えるとともに、その機能が十分に果たされるよう、継続的な働きかけをすべきである。
住民の力のみで、地域の生活課題に対応していくことは困難であり、多くの場合、住民の方々は、ニーズキャッチや早期通報といった、いわゆるセンサー部分を担い、その後は、相談窓口から専門職、専門機関につながることにより問題への対応を図っていくということが重要となる。
こうした意味から、区は責任を持って関与し、ネットワーク機能の成熟度を高めていくべきである。
- 現在存在するネットワークの検証
児童、障害、高齢部門のネットワークが現在どうなっているか、会議はどう開催されているのかなど、その検証をしていくことが重要である。
専門職、専門機関どうしのネットワークの質を向上させるためには、ネットワークを通じての連携した取り組みを積み重ねていくことが重要であり、そのノウハウを現場の人たちが、いかに蓄積できるかが鍵となってくる。建前や形だけのネットワークではいけない。 - 個別の支援に関する情報を共有するためのコーディネート
現在は、地域の見守りの動きとか、介護保険サービスなど、それぞれの支援がばらばらにリンクせずにかかわっていて、一人ひとりを重層的に支えるためのアプローチの調整が十分にできていない状況にある。
ケアカンファレンスのあり方も含め、支援にあたってのコーディネートをどのように組み立てていくべきかについて、区が主導して整理をしていくべきである。
また区は、地域での専門職、専門機関どうしの連携を図る場や機会の確保について、現在休止状態となっている保健福祉センター圏域を単位とした地域ケア会議の開催のあり方も含め、早急に検討すべきである。 - 緊急対応を担う関係機関への情報提供
警察、消防、医療機関など、緊急時に対応する関係機関等との連携を密にし、適宜、必要な情報を提供するなど、迅速な対応ができる体制を区は責任を持って整えていく必要がある。 - 制度間のサービス調整
現状では、障害者福祉と高齢者福祉のそれぞれの制度間の連携したサービス提供、特に精神的な支援に関わる部分に関する連携などの部分について、十分機能していないとの意見もある。(仮称)すこやか福祉センターについては、子どもから高齢者、障害者の総合的な相談支援体制を実現することとなるので、そうした制度間のサービス調整についても十分に機能を果たせるよう検討すべきである。
取組み2 社会福祉協議会との連携強化
社会福祉協議会は、支援を求める人と支援をしたい方を結びつけることに重点を置き、草の根的な社会資源の開発をめざして、地域の中でさまざまな活動をおこなっている。また、地区担当制をとり、行政単位である地域センターエリアを意識した形で職員を配置し、地区の連合町会役員会や民生委員協議会の会議などに出席するなど、情報提供と収集の役割を果たしている。
現在、社会福祉協議会は第2期活動計画の策定について検討を進めている状況にある。区は、社会福祉協議会と共同歩調をとりながら、今後の地域の支えあい活動の推進を図っていくべきである。
取組み3 地域包括支援センターの果たす役割の明確化
地域包括支援センターについては、何か連絡があった場合には、適切な橋渡しをしてくれて、とても助かっているとの声があるなど、高齢者領域における地域の相談支援拠点として着実に地域に根づいてきている。
しかしながら、新しい施設であるため、実際に災害対応のマニュアル等に組み込まれていない状態にあるなど、位置づけが不明確な部分も存在している。
現在は、機関と機関をつなげるためのケースカンファレンスを行うことに力を入れて活動をしている実態にあるが、今後、(仮称)すこやか福祉センターが開設された後に、地域包括支援センターにどのような役割を期待していくのか、支えあいネットワークにおける位置づけをどう考えるのかなど、区は今後の方向性を明確化にして、必要な条件整備を進めていく必要がある。
4 コーディネート役を担う人材の確保
今後の支えあいネットワーク化を進めるうえでは、地域で支援を求める人と、支援をしていきたいという方、それぞれを結びつける役割も重要である。
また、既存の地域資源、また、これから開発していくものを含め、さまざまな地域資源を結びつけていく、地域のつなぎ役を果たす人材の存在が欠かせない。
さらに、地域住民の参加を活発にするという点では、公的であれ、民間であれ、専門的な知識を持った人の適宜適切なアドバイスというものが、活動を長期に安定的に継続させることを考えた場合、重要となる。
区は、そのような役割を果たすコーディネート役を担う人材を確保していくべきである。
取組み1 コーディネート役を担う人材の育成・確保
地域の事情をわかったうえで、近隣どうしの支えあいを推進し、地域の協力を得やすい状況をつくっていくため、住民に身近な圏域である地域センターエリアの地区ごとにコーディネート役を担う人材を確保すべきである。
また、(仮称)すこやか福祉センターに地域の活動を支援していくための職員を確保すべきである。
区は、それらの人材を活用を図り、地域の多様な地域福祉活動を推進する役割を果たす社会福祉協議会とも協働しながら、地域全体の福祉サービスや支えあい活動を柔軟にコーディネートしていくべきである。
5 区民理解の促進、活動の担い手の掘り起こし、支援
今後の地域の支えあい活動の推進にあたっては、既存の町会・自治会等地縁による支えあい活動を基盤として、さらに活動を重層的なものとしていくため、団塊世代、若い人たちなどに対するインセンティブを考え、区民を活動に巻き込んでいくための方策を考えていく必要がある。
そのためには、時間はかかるが住民同士のコミュニケーションを豊かにしていく必要がある。そういった働きかけの部分については、この領域の取り組みを得意分野とする社会福祉協議会や、NPOなどとうまく連携しながら進めていくべきである。
取組み1 団塊世代を地域の活動につなげるためのアプローチ
高齢者と一概に言っても、すべての人が支援を必要とする側ではない。区は、いわゆる団塊の世代の方々など、元気な高齢者を地域活動に導いていくための取り組みについて検討すべきである。また、団塊世代は情報通信技術(ICT)にも通じた世代であるので、パソコンや携帯電話を活用した地域のコミュニケーション手段(メールや地域型SNSなど)の導入についても研究すべきである。
取組み2 町会・自治会など地縁型活動とNPO団体、ボランティア等との連携推進
町会・自治会、民生委員など地縁型の従来からずっと支えてきた人たちの活動と、テーマや知縁といったつながりで活動するボランティアグループやNPOの活動が、地域でうまく組み合わされ、協働しながら機能させていけるよう、区は働きかけをしていくべきである。
現状では、お互いに発想が異なり、なかなかうまく折り合いがつかないというのが実情であるが、社会福祉協議会や、地域でコーディネート役を担う人たちが、うまくバランス、舵をとりながら、つないでいき、両者がうまく補完しあいながら活動をしていけるよう条件整備を進めていく必要がある。
取組み3 地域における気軽な居場所の確保
地域におけるサロン活動を始めとして、身近で気軽な居場所の問題に着目し、その動きを支援するとともに、そこに芽生えた住民間の関係性を地域の支えあいのネットワークに結びつけることを視野に入れて取り組みを進めるべきである。
まちなかサロンについては、そうした場を通じて顔見知りとなり、自然に打ち解けあい、相互の助け合いの動きが生まれてくる例もあるなど、新たな関係づくりの拠点となる可能性を秘めている。社会福祉協議会としても注目しており、個人の住宅や店舗の一角などを提供していただき、近隣の方に集まってもらう形で活動の充実を図っているところである。
また、高齢者会館などの区の地域拠点施設についても、身近な気軽な居場所として機能を果たせるよう、事業内容等を検討していく必要がある。さらに高齢者間の活動である友愛活動についても新たな支えあいを生み出す環境として評価すべきである。
取組み4 子育て世代へのアプローチ
子育てについては地域との関係が非常に強い。学校であるとか、友達の関係であるといったところから、徐々に地域とのかかわりを持っていくことになる。
しかしながら、関心が地域の外に向いている人が多いため、地域の行事などできっかけづくりをしようとしても、地域のことに関心がいかない状態にある。
区は、引き続き、地域の行事への参加を働きかけるなど地縁型の活動と結びつけていくとともに、テーマ型や知縁型の活動であるNPOやボランティア活動への参加も併せて促すなど、地域での活動に参加するための選択肢の幅を広げられるよう工夫をすべきである。
取組み5 マンションや共同住宅に対するアプローチ
マンションについては、一戸建てに比較して、住民間の関係が薄いうえに、最近増えている入口がオートロック化されているマンションの場合には、外からのアプローチがしにくいといった難しさもある。
しかし、マンション内での認知症高齢者の迷惑行動が問題となった事例の中には、民生委員が仲介して調整したことにより、マンションの理事会が動き出し、その結果、その高齢者に対する理解が深まり、一所懸命生活をしているのだということが住民に認識され、マンション内に支えあう雰囲気が生まれたというような例もあった。
正しい情報があり、仲介役、コーディネート役を担うような人がいれば、マンション内でもそういう見守りや支えあいの体制を築いていける可能性もある。区は、そうした草の根的な働きかけを何らかの形で支援していくべきである。
取組み6 ポイント制導入の検討
まちぐるみで支えあいの活動を推進していくためのきっかけづくりとして、支えあいの担い手に対してのインセンティブとなるポイント制、預託制度を導入するなど、地域通貨の考え方などとも関連付けながら、参加の機会を広げるためのしかけづくりを検討すべきである。
なお、他自治体では、介護保険制度と絡ませた導入の例などもあるが、可能な限り、全年齢を対象とし、子どもから、高齢者まで、すべての人が気軽にちょっとしたことで参加できるしくみとして組み立てるべきである。
検討に際して留意すべき事項
- コーディネートするための手間ひま、コストが大きくかかることを踏まえて検討する必要がある。社会福祉協議会が実施している有償ボランティアサービス「ほほえみ」についても、人件費相当分については、区からの補助を受けている。
- 先行自治体では、参加できる状態にある人だけが有利になるということで、不公平感を訴える人も多くあるということである。そうした住民感情にも十分に配慮して検討する必要がある。
- 高齢者については、取り組みに参加することによって、介護予防の効果が期待できるため、介護予防プログラムの一つとして考えることも可能である。既存のプログラムに比較すると社会参加することの達成感もあり、介護予防への参加意識の向上も期待できる。
- 民間企業も巻き込んで、ポイントカードの発行器やカードリーダーなどの必要機器類の導入コストについて支援してもらうなど、官民共同の取り組み方について研究すべきである。
取組み7 地域に芽生えてきた活動に対する支援
地域には、元気でねっとの活動をきっかけとして、支えあいの活動をおこなうようになったグループなど、今後、地域で活動を広げようとしている人たちが存在している。このように、地域活動に前向きな人たちの、支えあいの力をどう活かし、今後の支えあいネットワークの構築に活かしていくのか、区として必要な支援策を検討すべきである。
6 その他の環境整備
その他、変革期にある中野区の状況を踏まえ、今後の地域の支えあい活動を推進するための環境整備に向けた以下の取り組みを検討すべきである。
取組み1 (仮称)区民活動センターを拠点とした支えあい活動の推進
地域センターはこれまで、中野区において区民の活動拠点として大きな役割を担ってきた。今後、住民の意思に基づく地域自治の推進を目的に(仮称)区民活動センターとして新たな展開を図っていくことになるが、引き続き、身近な区民の活動拠点として、地域の支えあい活動の推進にあたっても、地域のさまざまな活動が展開されていくことを期待している。
区は、区内4か所の(仮称)すこやか福祉センターが、地域の(仮称)区民活動センターの運営委員会と連携をとりながら、必要な支援をしていくためのしくみをつくるなど、転換後の(仮称)区民活動センターが、地域の支えあい活動を推進していくうえでの役割を十分に果たせるよう、必要な条件整備を検討すべきである。
取組み2 モデル地区による取り組みの検討
支えあいの地域づくりを進めていくためには、住民自らが動くことをしくみとしてしっかりと位置づけていくことが重要である。
今後、区内4か所に展開していくことが予定されている、(仮称)すこやか福祉センターのそれぞれの圏域ごとに、住民が参加する運営協議会的なしくみをつくること、また、その下の階層である地域センター圏域の範囲(ネットワークの第3層)の部分についても、地区町連、地区民協、NPO、ボランティアなどをメンバーとした、実際に動くためのしくみを整備していくことを検討すべきである。
区は、そうした住民の主体的な動きを側面から支援し、支えあいのまちづくりを推進していく必要があり、新たに設置される(仮称)すこやか福祉センターがそうした一連の取り組みを担っていけるよう、体制の整備について検討をしていくべきである。
他の3地域に先がけて(仮称)仲町すこやか福祉センターの開設が予定されている中部圏域をモデル地域として位置づけて重点的に取り組みを進め、そこでの実績を他の地域にも反映していく形で、取り組みを進めてはどうか。
取組み3 災害発生時に迅速に対応するための環境整備
発生直後など一刻を争う事態では、行政などの公的機関による支援が間に合わないため、地域の主体的な対応が重要であることが、過去の災害時の教訓として明らかになっている。災害時の要援護者の避難支援については、見守り活動や声かけなど、普段から町会・自治会の活動などを通じた隣近所の身近な人たちの支えあいの関係がなければ、実行は不可能であり、日常から顔の見える関係の構築、地域の支えあい活動を推進していくことが災害発生時にも重要であることが言える。
しかしながら、そうした関係ができていたとしても、災害時の要援護者を具体的にどのようにサポートしていけばよいのか、関係機関との連携をどう取っていけばよいのかということが分からなければ効率的な支援活動を行うことはできない。
いつ発生するか予想のできない災害に対する備えを万全なものとするため、区は、今後の支えあいのまちづくりの全体像を踏まえ、対応の基本となる行動マニュアル類の見直しを含め、災害が発生したときに実際に動けるようにするための環境整備を進めていくべきである。
また、難病患者や障害者の方などについては、特別な支援体制を組むことが必要な状況となることが予想されるため、専門職、専門機関との連携についても明確にしておく必要がある。
取組み4 孤立傾向にある若い世代に対する支援
中野区の特性として20代~30代の若い人のひとり暮らしが多いことがあげられるが、近隣との関係を持たず、何かあったときには、誰に助けを求めたらいいのだろうかと不安を感じている人たちも少なからず存在すると思われる。
こうした中野区の地域特性を踏まえ、アパートなどに住んでいる若い人たちに対する、情報が足りないことの解消策、相談先の確保など、日常から災害時も含めた何らかのサポートが必要なのではないか。
若い人はあまり危機感を持っておらず、地域にかかわりたくないという人も多い中での難しさはあるが、行政の施策のはざまにある若い人に対して、参加しやすい情報の流し方や、安心してもらえるような施策とかプログラムをどう考えるか、また不安感を覚える人たちを受け入れるインフォーマルなネットワークを地域の中でつくっていくことなどについて、検討をしていく必要がある。具体的には、携帯電話を利用したIT相談サイトなどや駅周辺の利便性の高い場所での相談場所の確保などの方策も有効かと思われる。
また、若い世代とのかかわりあいをつくることで、地域の活動の担い手としての広がりも期待ができるのではないか。
第3節 支えあい活動の推進にあたっての視点
1 住民主体の活動の推進
地域の支えあい活動については、住民自らが地域の生活課題に気づき、それを解消するための活動を重ねながら地域力をつけていくことが何よりも大切であり、行政が一方的に動くのではなく、地域の実情であるとか、地域活動の実態に合わせて、住民が動きやすいよう行政が応援していくことが必要である。
また、支えあい活動を推進していくうえでは、住民活動の組織化についても検討が必要である。地域で支えあい活動を推進していくための母体は、抽象的なものではなく、活動する実態として、しっかりと位置づけていくべきである。そして、(仮称)すこやか福祉センターが、どう絡んでいくのかが鍵となる。
そういう意味では、区がイメージしている懇談会というような形での展開では弱く、行動を伴うものとして構築していく必要がある。
地域センターが(仮称)区民活動センターへと転換していく中で、地域の支えあい活動のための住民主体の組織をどのように描き、期待し、どのように活動を支援していくのか、今後の区の検討に期待をしたい。
2 地域でできることの整理
ひとくちに住民といっても、一般の近隣住民と、ボランティア活動をしている人とでは、知識も経験も異なっている。そういう観点を含めて、地域でできることをていねいに整理していく必要がある。
また、地域の生活課題については、住民の力だけでは対応できるものは少なく、住民が発信した情報を相談窓口などにすばやく伝え、それを専門職、専門機関のネットワークが支えるという、地域全体の包括的なケア体制がうまく機能するかどうかが、問われてくる。
例えば、孤独死を防止するという課題に関して、一般の人は、何ができるか、ボランティア活動をしている人はどうなのか。声かけすることや、日常的に交流すること、異変に気づいた場合に知らせるという範囲のことであればできるのではないか。万一、異変があった場合の連絡、通報はどうするのか。そうしたことを一つひとつ具体化していく必要がある。そうすることによって具体的な動き方が見えてくる。
高齢者などの消費者被害の防止に関してはどうか、子どもや高齢者などの問題を抱えた外国人への支援に対してはどうなのか、障害者の方が入所施設から地域生活に移行していくときに何ができるか、他の生活課題についても同様である。
そうした検討を住民自らがおこない、解決に向けて活動をしていくことにより、地域の力が養われていく。区は、そのための場づくりや仲介役など、積極的な側面支援をしていく必要がある。
3 知ってもらう権利を主張できるまちづくり
プライバシーを知られたくないということで、他からの支援を拒否される方もいるが、もう一方で、困っている状況を近隣の人に知ってもらい、第三者の目でいつも見守られていることを希望する方もいる。
個人情報の保護という流れの中で、知ってもらうということを主張する権利を守り尊重するということに目が届きにくくなっているが、例えば、高齢者のひとり暮らしや、高齢者夫婦でお一人が病気であるというような状況で困っているというような場合には、自分の置かれている状況を近隣にも知ってもらい、必要に応じて手助けをしてもらいたいというようなケースは当然にあると考えられる。
そういう意味で、プライバシーを侵害されないことを主張できる権利と、必要なときに知ってもらうことを主張できる権利をバランスよく使い分けできるよう整理したうえで、情報の共有化に関するルール化などについて検討していく必要がある。
4 その人の考え方を尊重した関与のあり方
孤独死の心配があるのではないかというような状況でも、本人は、自分はこれでよいのだ、放っておいてほしいと主張するような場面もある。
場合によっては、支援する側が、その方とかかわったとき、支援するという行為自体が、その人が誇りをもって生活しているスタイルを無視することになる場合もあるかもしれない。周囲から気の毒だと言われることにより、自信を喪失させてしまうようなことが起こる可能性もある。
一人ひとりの価値観を認め、尊重しながらどうかかわっていくか。他者がかかわっていくということの難しさである。
一方、基本的には支援を必要とする当事者の考え方というものを尊重すべきであるが、緊急時、いざというときには、本人の意向を尊重するだけでは済まない場合もあり、本人の緊急性に対する認識が遅れたために、非常に危険な状態に陥るということを予防するために、客観的な判断により対応せざるを得ない部分もある。
他からの関与を必要とするか、しないかというご本人の主張については、ご本人の知識、経験であるとか、生き方とか、外部との関係性、家族との関係性とか、さまざまな要因が絡んでいる。また、ことばとしてのあらわし方、表現の方法についても人さまざまである。そうしたご本人の主張を尊重しながら、その人にふさわしいかかわり方を見出していくためには、かかわる人が支援の必要性を見極めるスキルを持っていることが前提となるが、それは専門職の領域である。
地域の支えあい活動については、こうした相談窓口、そして専門職、専門機関のかかわりをうまく絡ませながら進めていく必要がある。
5 支えあいのレベルの観点
地域の支えあいということを考えた場合、人の生命を守るということに直結するような活動のレベルと、一人ひとりのQOL(生活の質)を向上させるような働きかけのレベルなど、いくつかの層、レベルがあるということを意識すべきであり、その内容に応じてアプローチの方法、個人情報の共有のあり方を考えるべきである。
前者の人の生命に直結するレベルについては、生命に関係するような状況をできるだけ未然に防ぐための対応であり、緊急性を要することも多く、場合によっては、ご本人の意思にかかわらず、他者の判断に基づき解決を図っていく場合も考えられる。またこの場合には、関係する者どうしでの個人情報の共有化も必要となってくる。
一方、後者のQOLを向上させるためのレベルについては、人生を豊かにするための働きかけであり、できるだけその人らしい生活を過ごしていくために、何らかのサポートをしていくという働きかけとなる。
また、対象者のリスクに応じた対応の観点も重要である。対象者のリスクを判断するための客観的な観点としては、1.ご本人の健康度であり、2.親族とのつきあいの状況、3.近隣とのつきあいの状況といった社会関係、以上の3つが材料となる。例えば、体が弱って身寄りがなくて孤立しているという場合には非常にリスクが高いことになる。なお、ご本人の健康度については、身体だけではなく心の問題も重要である。認知症やうつ病の場合、程度が軽い場合には、見逃されやすいため注意が必要となる。
6 自分で相談に行けず問題を抱え込んでいる人や孤立している人に対する支援
ひとり暮らし調査では、自らは訪問を希望していないが民生委員の目で客観的に見た場合、支援の訪問をしてフォローすべきだと判断された件数が、一定の割合で存在していた。こうした地域でのかかわりを求めない、または望まない人が地域に一定割合存在しているということを十分に意識する必要がある。
今後、出張相談(アウトリーチ相談)など、積極的にアプローチしていくための方策を検討していくことが必要である。(仮称)すこやか福祉センターで予定している総合相談支援の実施内容にも、その点を十分に踏まえるべきである。
また、地域の活動主体が持つ情報の突き合わせをおこない、対象から漏れている人がいないかどうかを確認することも必要と思われる。
7 災害時を視野に入れた平常時からの支えあい活動
ひとたび災害が中野で起これば、非常に深刻な状態になるのは目に見えているので、その点も視野に入れながら、検討を進めるべきである。
日常的な支えあいがしっかりしていないと、いざ災害時といっても機能しないことは明らかであるので、災害時の支えあいについては、日常活動の中での支えあいの延長線上にあるという認識を持つことが大切である。
8 活動を推進していくうえでの地域の捉え方(エリア、圏域)
地域の支えあい活動を推進するための単位となる圏域については、区民が活動をしやすくなるように地域の実情を踏まえた適切な設定をすることが必要である。
そのためには、住民がどの範囲を活動範囲と認識しているかといった点や、地域の活動主体がこれまでにどの範囲を活動の範囲としてきたかなどといった経過など、住民の意識、行動を踏まえながら共通認識をつくっていくことが大切である。
そのうえで、地域福祉に関する情報交換とか連携の場としてのエリア設定、具体的に問題の解消に向けて動いていくための活動の単位としてのエリア設定(活動範囲)など、目的に応じた圏域設定の整理をしていくべきである。
また、地域センターから(仮称)区民活動センターへの転換など、これから区が想定している施策展開の動きと整合性をとっていくことも見落としてはいけない。
圏域の設定例 (巻末・参考資料2 ネットワーク図参照)
- 第4層 近隣単位 町会・自治会の範囲
顔の見える関係づくり、気づき、声かけ、見守りなど日常の支援活動の場
主な活動主体:町会員、民生児童委員、近隣住民、ボランティア、サービス従事者など - 第3層 活動、支援を行う地域単位 地域センター((仮称)区民活動センター)の範囲
近隣単位を通じて顕在化してきた地域課題を共有し、ともに考え、その対応に向けて動いていくための場
主な活動主体:地区町会連合会、地区民生児童委員協議会、育成活動団体など - 第2層 (仮称)すこやか福祉センター単位 (仮称)すこやか福祉センターの範囲
第3層、第4層における地域課題に向けた住民の動きと、事業者、医療機関、地域包括支援センター等の関係専門機関を結び付けるなど、包括的なケア体制を確保するための場
主な活動主体:事業者、医療機関、地域包括支援センター等関係専門機関など - 第1層 中野区全域
課題解決に向けた区全体の仕組みやルールづくりの検討などをおこない、区としての統一的な対応を推進していくための場
主な活動主体:区、中野区町会連合会、民生児童委員協議会、医師会、歯科医師会、薬剤師会、社会福祉協議会、保健福祉審議会など
9 活動の相互連携を円滑に進めるためのネットワークづくり
ネットワークについては、ややもすると、形だけ、会議体だけといった、いわば砂上の楼閣となってしまう危険性があるが、現実に困っている方、要援護な人たちを具体的に救っていくために機能していなければ意味がない。住民や、住民組織、ボランティア、NPO、専門機関などをいかに巻き込むか、そして実際の動きにつなげていけるかが課題である。
支えあいのネットワーク、また、法律の中で規定をされている、高齢者や児童の虐待防止ネットワークが本当に機能しているかをしっかりと検証し、万一、機能していなければ、機能していない原因を究明し、対策を検討していかなければならない。
決して、ネットワークを運営する側の自己満足になってはならず、厳密に運用していくべきである。
第4節 今後の区の取り組みに関する期待
すでに述べたように、地域の地縁団体の活動を基盤とした地域の支えあい活動のしくみを早急に構築すること、また、その活動をおこなううえで前提となる対象者の個人情報を地域で共有するためのルールづくり、地域の活動を結びつけるためのコーディネーター役を担うための人材確保など、地域の支えあい活動を推進するための核となる取り組みを、区が積極的に打ち出し、計画的に進めていくことが重要である。
また、その活動を柔軟で創意工夫のあるものとし、継続し拡大するものとしていくためには、地域の活動主体の自主的行動を助けながら進めていくという視点が必要となる。そうした姿勢に基づいた区の取り組みの充実を期待したい。
さらに、虐待であるとか、成年後見に関する部分の取り組みなど、区民の生命と財産を守るのは、第一義的に区の役割である。対応困難ケースへの対応については、行政がしっかりと責任をもち、それを受け止めるための体制を整えるべきである。
特に、成年後見制度の利用促進については、支えあい活動を行うための前提を整える意味で、今後、力を入れて取り組んでいく必要がある。
また、住民活動を盛んにするための参加促進の働きかけとともに、活動を通じて事故や組織間などでトラブルが発生した場合に解決を図るためのルールづくりなど、安心して活動できるためのしくみづくりも今後検討が必要である。
今後、区は (仮称)すこやか福祉センターの整備を区内4か所に予定しているが、そこで掲げている6つの機能(1.支えあいのネットワークづくり機能、2.ワンストップの相談・支援機能、3.区民の健康づくりや健やかな子育て、子育ちを支援する機能、4.サービス提供の拠点機能、5.地域のサービス資源の維持・向上機能、6.地域における保健・福祉・子育てに関する課題検討、情報発信機能)をバランスよく提供し、今回の答申内容も踏まえたうえで、地域の支えあい活動を推進していってもらいたい。
行政が方向性をしっかりと打ち出し、しっかりとしくみを考え、動くべきところは動かなければ、地域は動かない。このことを十分に踏まえて、困ったときに孤立しない、させない、安心できる地域づくりの実現をめざし、所要の検討を進めていただきたい。
第三章 介護保険事業及び高齢者を支えるための方策について
本審議会では、諮問内容のうち、介護保険事業計画の策定及び高齢者を支えるための方策に関する審議をおこなうための専門部会として、介護保険部会を設置し、以下の事項を付託して検討をおこなった。
本章の内容は、同部会からの報告内容をもとに記述したものである。
介護保険部会に対する付託事項
- 要介護状態の軽減若しくは悪化の防止又は要介護状態となることを予防するための取り組みの推進
- 事業計画期間における介護サービス量の見込み
- 区民の負担能力に配慮した保険料の段階区分、料率の見直し
- 事業者への支援その他サービス内容の質の向上に向けた取り組み
- 特別給付など介護保険事業の充実・改善方策
- 介護サービスに係る人材確保・育成
- 介護サービスでは対応しきれないニーズへの考え方
区が介護保険事業計画素案を11月に作成する予定であることから、この素案に審議結果を反映させることができるよう、これまでの審議過程で出された意見をとりまとめて答申をおこなうものである。
今後、計画素案に対する区民意見等を踏まえたうえでさらに審議を重ね、第二次答申(最終答申)を来年3月におこなう予定である。
第1節 要介護状態の軽減もしくは悪化の防止又は要介護状態となることを予防するための取り組みの推進について
1 介護予防事業の実施
第3期事業計画に引き続き、介護予防事業については、閉じこもりがちな高齢者、介護予防サービスが必要な高齢者などの心身が虚弱な状態にある「特定高齢者」の方をいかに的確に把握するかが要となる。区は、現在行っている「いきいき生活チャレンジアンケート」や「生活機能評価(中野区民健診)」などの事業について、対象となる高齢者の方ができるだけ多く介護予防事業に参加いただけるよう、実施方法、実施時期など工夫をしていく必要がある。
区は、日常生活の中でも継続的に介護予防のための高齢者の努力を促進するため、事業参加者の意見を反映するなど介護予防関係の施策(メニュー)の充実を図る。また、介護予防事業の参加者同士のつながりから参加者が増えた事業もあることから、地域におけるきめ細かな事業への誘導策を講じるとともに、特に高齢者が理解しやすく、より効果的な周知を徹底すること。
さらには、介護予防事業に参加した高齢者の方々の介護予防の効果を継続的に把握し、一人ひとりの高齢者の状態に応じた取り組みが可能になるような評価方法の検討を行う必要がある。
第2節 事業計画期間内における介護サービスの見込み
1 高齢者人口
平成24年度には、高齢化率が20%に達すると予測される。さらに平成27年度には、「団塊の世代」が前期高齢者に移行し、文字どおり「超」高齢社会に入る。第4期事業計画期間のみではなく、中・長期的な展望のもとに基盤整備を想定する必要がある。
第3期事業計画で設定した4つの「日常生活圏域」を継続し、圏域ごとの地域特性に配慮をした基盤整備目標を設定する。南部圏域など介護サービス等が相対的に不充分な圏域でのサービス確保を引き続き推進すべきである。
2 要介護等の認定者数
第3期事業計画では、介護予防導入の効果を勘案し要介護等認定者数を推計したが、実績値は、要支援2及び要介護1、2の「軽・中度認定者数」の一定の乖離が見られた。要支援1・2の認定者数については、利用者の視点に立った介護予防サービスの基盤整備の過不足の状況分析を踏まえながら、適切に見込む必要がある。
特定高齢者数の見込みについては、国による対象者数の目安が見直され、保険者の判断とされた。中野区では、これまでの2年間の介護予防事業の実績をふまえ、参加者の動向を含む実施状況を分析して適正に数値を見込むよう努めるべきである。
3 介護サービスの見込みの考え方
区内における介護サービスの利用量については、認知症高齢者や単身世帯・高齢者のみ世帯の増加などを勘案し充実を目指すものとする。
4 在宅サービスの見込みの考え方
第3期事業計画の実績から、要介護3以上の「中・重度者」のサービス利用が伸びていることを十分に勘案し、介護サービスの量を見込む必要がある。
在宅介護の3本柱である「ショートステイ」については、介護保険サービス意向調査結果からも不足感が高い「ショートステイ」の利用実態等を分析しながら、区内におけるショートステイの整備の誘導が必要である。
5 施設サービスの見込みの考え方
75歳以上の高齢者人口の増加及びそれに伴う要介護認定者の重度化、団塊の世代調査に見られる「単身者」の増加、平成23年度末をもって廃止となる「介護療養型医療施設」の動向を踏まえて、東京都の目標整備率等も参照しつつ適正に見込むことが望まれる。
東京都の目標整備率から推計すると、区内において100床程度の特別養護老人ホームの整備が必要である。中野区においては、公有地の活用を行うなど積極的に整備誘導を進めるべきである。
6 地域密着型サービスの見込みの考え方
入居希望者が多く待機者もいる「認知症高齢者グループホーム」は、東京都の目標整備率に達していない。認知症高齢者の増加に伴い需要の多い事業であること、「住み慣れた地域での入居希望」があることから、地域密着型サービスとしての必要性は明らかである。そのため、第3期事業計画において不足状況にある圏域への整備目標数を重点的に増加させることを目指し、公有地の提供などの方策を講じる必要がある。
「小規模多機能型居宅介護」については、認知症高齢者を主なサービス利用者としていることから、ショートステイ利用との相互補完においても重要であり、未設置の圏域については、重点的に迅速に整備する必要がある。さらに各圏域について、複数箇所の整備を進めることが望まれる。
第3節 区民の負担能力に配慮した保険料の段階区分、料率の見直し
1 保険料の段階設定と料率
現行の8段階設定の経過、及び保険給付の動向をふまえて、第1号被保険者の中で所得の低い層の方に着目し、激変緩和終了に伴う保険料の大幅な上昇を回避する、低所得者の保険料負担を抑える方向で、対象所得の幅が広い段階を見直すことなどを考慮し、概ね12段階の設定を軸に保険料率を定める必要がある。
現時点では、保険料段階設定と料率については、引き続き介護保険部会の中での十分な審議を踏まえて適切な決定がなされることが望まれる。
第4節 事業者への支援その他サービス内容の質の向上に向けた取り組み
1 各職種、事業者間での連携の促進
第3期事業計画では、その必要性は理解されていながらも関係者が多忙であることなどにより、保健、福祉、医療関係者の連携・調整のための会議が充分に開催できないといった状況があった。関係者の連携が困難との状況を踏まえ、引き続き、保健福祉センターをはじめ、区の機関が中心となり調整・支援を図っていく必要がある。
2 サービスの質の確保
区や介護保険事業に携わる全ての関係者が連携し、昨年来の介護保険事業者の不祥事を克服して、介護保険制度の適正化を推進するとともに、介護サービスの質の向上に向けた取り取り組みが求められている。現在、中野区の介護サービス事業所が実施している連絡会や研修会などは、事業者自らの質の向上を図る取り組みとして重要であり、区は第4期事業計画期間においても継続的に支援していく必要がある。
介護従事者の「育成」質の向上は、後段でふれる介護人材確保の課題とともに大変重要ではある。中小の事業所では、事業所内の研修のみでは難しいとの声もあり、区は、介護保険事業者が、地域や事業所単位で自主的に研修などの活動が行えるよう、指導的な人材の養成や経験年数による研修体系の構築や主任ケアマネ・研修講師となれるスタッフの養成の支援に努めるべきである。
3 情報の提供
区は保険者として、引き続き高齢者とその家族に対して制度の趣旨やしくみ、手続き等についてわかりやすい情報提供を持続的に行い、利用者の状態に即した介護サービスを利用できる情報提供の方法等について見直し・改善に努めるべきである。
要介護者等やその家族が介護サービスを自由に選択し、利用できる権利を保障するためには、介護保険制度や介護サービスについて正確、適正、迅速な情報提供が必要である。区は、引き続き、介護サービス事業者等と連携して、介護保険以外の区の保健福祉サービスを含め、利用者が介護サービスを選択するにあたっての必要な情報を総合的に提供する必要がある。
4 苦情への対応
区は、苦情については、「利用者の権利擁護」という側面と「適切なサービス提供が行われているか」という側面をチェックするための重要な仕組みであるという認識をさらに徹底して周知していくとともに、苦情や申立てをしっかり受け止め、その調整等については、適切な対応が要請される。区は保険者として介護サービス事業者等とその苦情の内容の共有や事故報告の活用を工夫しながら、介護サービスの質の向上のための周知を図るため啓発を行うよう努めるべきである。
5 事業所指導
制度改正により、介護サービスへの指導監督権等に係る保険者機能が強化された。加えて新たに創設された「地域密着型サービス事業所」については、区が介護保険事業所として指定権限と指導監督権をもっており、厚生労働省、東京都及び関係機関等と連携しながら介護サービスが適正に運営されるよう指導の充実に努めるべきである。
第5節 特別給付など介護保険事業の充実・改善方策
現在のショートステイの基盤整備状況を勘案すると、江古田の森保健福祉施設の開設により20床増床されたものの、特に「南部・中部生活圏域」における著しい不足状況は解消されておらず、ショートステイに伴う送迎の一部を給付する特別給付は継続実施することが必要と考える。
寝具乾燥・訪問理美容については、在宅生活を支援するサービスとして第3期事業計画策定時に特別給付として加わった。一定数の利用者もいることから、第4期事業計画期間においても引き続き継続していくことが必要である。特別給付として継続実施する。なお、区の一般施策として実施する等実施方法のあり方については引き続き介護保険部会で検討すべきである。
関連事項として、高額介護サービス費の給付については、該当者すべてに円滑な給付が行なわれるべきである。
第6節 介護サービスに係る人材確保・育成
区内の介護保険施設や居宅サービス事業所における介護職員の不足等の諸問題を解消するとともに、区は、継続して介護に従事できる環境づくりを推進するよう努めるべきである。引き続き介護保険部会において方策を求める議論を行い最終答申で示すものとする。
方策の例示
- 区の関係機関等が開催する研修の情報提供や参加促進
- 介護サービス従事者のスキルアップ、キャリアアップ研修の実施
- 資格取得経費の助成
第7節 介護サービスでは対応しきれないニーズへの考え方
介護保険以外の「安全・安心のまちづくり」施策や「社会資源」を確保することは重要である。単身高齢者や認知症高齢者が増えるという予測の中、「見守り」「探索サービス」などの具体的な推進のあり方については、今後、介護保険部会で議論を行い、最終答申で示すものとする。
第四章 障害福祉計画及び障害者の自立生活を支えるため施策の展開について
本審議会では、諮問内容のうち、障害者の自立生活を支えるための施策の展開及び障害福祉計画の策定に関する審議をおこなうための専門部会として、障害福祉部会を設置し、以下の事項を付託して検討をおこなった。
本章の内容は、同部会からの報告内容をもとに記述したものである。
障害者部会に対する付託事項
- 障害者が安心して暮らすことのできる地域社会のあり方
- 長期入所・社会的入院から地域生活への移行促進のあり方
- 保健福祉総合推進計画(障害者計画)の改定とあわせて策定する、第2期障害福祉計画における留意すべき事項
第1節 障害者の社会参加や自立支援を促進していくために
障害者基本法は、すべての障害者の尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活が保障されること、さらには社会の構成員としてあらゆる分野の活動に参加できる社会の実現を基本理念としている。
また、平成18年4月に施行された障害者自立支援法は、障害者の地域生活と就労を進め、自立を支援する観点から、障害者基本法をふまえ、障害の有無に関わらず全ての人が共に支えあいながら豊かに生きる「共生社会」の実現を基本的な理念としている。この社会では、障害者が、障害の状況や本人の意向に基づき、必要な支援を受けながら地域で安心して自立生活できるまちづくりを目指している。その前提として、障害者が必要とするサービスが事業者によって地域で十分に提供されていることが最も重要であるが、障害者自立支援法では、これらのサービス提供の責任は一義的に区市町村にあるとしている。
中野区は、全国の自治体に先駆けて地域生活支援事業の原則無料化を打ち出し、障害者自立支援法の施行時に見られた障害者や関係者の不安を解消するなど、利用者本位の障害者福祉施策を推進している。しかし、同法は施行後3年後の抜本的な見直しが予定される等、未だ制度が安定的に運営されているとは言えず、一方で、相談支援体制の強化等、今後積極的に取り組むべき課題は多い。
区は、障害の有無に関わらず誰もが相互に人格と個性を尊重するまちを実現するために、障害及び障害者に関する区民の理解を促進するとともに、継続して障害者のニーズを受け止めながら、障害者の社会参加や自立支援の取り組みをいっそう強化すべきである。
また、これら取り組みを計画的かつ着実に進めるため、保健福祉総合推進計画及び第二期中野区障害福祉計画においても、必要な施策やサービスの量及び提供方法について的確に定めていくことを望む。
第2節 必要な取組みを進めるうえでの論点整理と方向性
障害者の社会参加や自立支援を促進していくために、今後区が重点的に取り組むべき事項について、次の3つの論点を設定し方向性を整理した。
3つの論点
- 相談支援の機能強化・充実
- 障害者の就労支援
- 長期入所・社会的入院から地域生活への移行促進
1 論点1「相談支援の機能強化・充実」の方向性
障害者に対する相談支援の機能強化・充実については、障害者自立支援法が、身体・知的・精神のいわゆる「三障害」に対応した総合相談機能の強化を要請している。例えば、福祉サービスの利用の点では、これまで精神障害者の相談支援は担当窓口、担当職種とも分化していた。今後は、必要な福祉サービス等を利用するための相談支援が、障害種別によらず等しく提供されなければならない。
一方、障害者個人に着目すると、幼年期・学齢期・成年期等のライフステージの移行に応じた適切な「ケアマネジメント」体制を構築し、各ステージにおけるニーズに対応する支援の方策を充実することが強く求められる。
2 論点2「障害者の就労支援」の方向性
障害者の就労支援については、障害者の働く権利を保障する視点から、障害者の能力や意向に基づき、一般就労やいわゆる「福祉的就労」等を選択できるよう適切に支援するしくみが求められる。
特に、自立支援法施行により、これまでの個別法令に基づく施設サービスや根拠法を持たない「法外」の施設サービスは原則として「日中活動の場」へと移行することとなり、実際に就労移行支援、就労継続支援等へ移行が徐々にではあるが進んでいる。
これらの新サービスが地域で持続して提供されるための区による支援の方策や、一般就労への再チャレンジを地域全体で支え、障害者が安心してチャレンジできる体制が求められる。また、障害者が地域で就労する機会を増やすために、例えば特例子会社の設立を支援する等行政による一定の環境整備も望まれる。
3 論点3「長期入所・社会的入院から地域生活への移行促進」の方向性
長期入所・社会的入院から地域生活への移行促進については、障害者の障害の程度や病状よりも様々な個人的・家族的理由から入所・入院している障害者に、地域が必要な支援を行うことによって、地域での自立生活を促すものである。障害者が、その意思と尊厳を守られ、障害の有無に関わらず地域で共生することこそが中野のめざすまちの姿であろう。
そのためには、東京都等の他の機関と緊密に連携を図りながら、地域への移行を働きかける体制を強化するとともに、地域において障害者の生活を支えるサービスの整備が欠かせない。
特に、長期的に入所・入院を経た障害者が一人で地域生活することは簡単ではない。居宅系サービス以外にも、賃貸住宅への入居や緊急時の対応など、日常生活を支援するサービスが十分に整備されることが肝要である。
これらの論点を通じて共通することは、障害者自立支援法の名称にいみじくも表されるとおり、「自立生活」の「支援」策の強化に尽きると言ってよい。
障害者は、入所施設への在籍でなく、住み慣れた地域での在宅生活が保障されなければならない。
そのための相談支援体制の充実であり、権利としての就労の保障やすまいの場の選択の自由としての地域生活移行であると言える。
障害者権利条約の批准に向けて、今後ますます障害者主体の施策が求められよう。
第3節 相談支援の機能強化・充実
障害者が自ら望む生活を送るためにサービスを利用する場合、障害者の立場から、様々なサービスをどのように利用すればよいのかについてアドバイスし、実際に利用した結果をふまえて(モニタリング)、サービスの利用方法を工夫していくことが求められる。相談支援の継続的な取り組みにより、障害者にとって、より適切なサービス利用につながる。
こうした視点から、相談支援には特に以下の機能が求められていると言える。
1 ライフステージを一貫した相談支援体制の構築
- 環境の変化に対応する体制整備
障害者が幼年期から学齢期に移行する時期や就労に移行する時期などは、それまで障害者を支えていた福祉サービスや教育体制などの環境が大きく変化する。こうした時期には特に、あらかじめライフステージの移行を想定した相談支援の取り組みを強化し、スムーズな移行を支援するとともに、必要な福祉サービスが過不足なく利用できる支援体制を整えるべきである。 - 家族・家庭支援との連携
地域包括支援センターが対応すべき高齢者の相談支援、障害者相談支援事業者が対応すべき障害者の相談支援というものがあるが、オーバーラップしている問題については、家族・家庭という観点に立って相談支援を行う仕組みづくりが重要である。 - 相談支援の情報の活用
障害者の情報は常に、本人または保護者に返し、利用・活用できるようにする必要がある。特に、「いつ、どういう視点から、どのようなサービスを利用したか、ニーズを十分に満たすものであったか」、また、「今後の生活ではどのようなサービスが必要なのか」について障害者本人(または保護者等)が十分自覚的であることが、自らサービスを選択し利用するうえで不可欠である。
ライフステージの視点からは、その人が育っていく過程で発生するさまざまな情報を行政だけが持つのではなく、本人に情報の意味を伝えて、本人が納得してその情報を自分のものとして活用することのできる仕組みとすべきである。
そのために区は、それらを記録するための「(仮称)自立支援ノート」などの配布を検討すべきである。
2 ニーズの掘り起こしと必要なサービスを提供するための体制づくり
- 「受身の相談」から「予防的相談支援」へ
単に、現在顕在化しているニーズについて相談を受けるという受身の姿勢ではなく、将来を見据えて、危機的な(緊急な)状況にならないようにするための相談支援体制を整備する必要がある。例えば、家族による介護により地域生活を送る障害者については、その介護者が高齢になってから生活について相談を受けるのではなく、本来は、予防的視点から、そうなる前に問題を解決しなければいけない。 - 相談支援からサービスをつくる
相談内容には簡単には解決できないものもある。その際、障害者の自立生活支援の視点に立ち、相談窓口での課題把握からサービスのあり方を考えたり、制度改正につなげたりする機能が不可欠である。例えば、高次脳機能障害の方の相談について、「現在サービスがないから仕方がない」のではなく、制度がないからどうしようかと考えることが相談支援における最も重要な役割である。あらゆる相談支援業務は常に、単に現行サービスの利用の可否の判断だけでなく、「現行サービスの質及び量、利用のしやすさ」等の観点からの課題把握をあわせて行うべきである。
また、障害者自立支援協議会など、具体的な相談事例を深く掘り下げて検討する場も必要である。表面に現れた事例には、どのような問題が潜んでいて、その背景にはどんな要因が存在しているのかを整理して、支援の仕組みづくりを進めるべきである。 - アウトリーチ(訪問・出張)相談の充実
具体的に困っていることや相談したいことがはっきりしている障害者は相談窓口まで出かけていくが、むしろ相談窓口まで足を運ばない人へのアプローチが重要である。また、福祉サービスについて本人が知っていても相談しようとしない人や情報を提供しても行動につながらない人がいる。自分で自分のことができる人の場合は、自己決定の尊重が基本であるが、できない人の場合は、周りの人がその人の幸せを考えて「介入」する必要もある。 - たまり場活動から相談支援へ
障害者自立支援法の施行により、「たまり場」的な機能は地域活動支援センターに、相談は相談支援事業所に分化されている。現在、精神障害者地域生活支援センター「せせらぎ」が両機能を備えているが、身体・知的障害者に関しても、「障害者相談」という看板を前面に出すよりも、両機能を一体的に行うことにより、相談しやすい雰囲気・場所をつくることが必要である。
更に、少人数でも気軽に集まることのできる場所を数多く作ることや障害者と健常者・高齢者などが集える場の提供でも、当事者相互の情報交換や支えあいの効果が期待できる。「相談」を「窓口」に限定するのではなく、当事者同士の支援なども包含した広義の基盤整備も必要であろう。
3 総合的な相談体制と専門性の確保
- 総合的なケアマネジメント体制の整備
障害者の自立のためには、障害者にとって最も適切な社会資源(地域にある官民のさまざまなサービスや活動)について、いわゆる「ケアプラン」を中心として包括的な助言と利活用の支援を行う機能が不可欠である。現在検討を進めている(仮称)すこやか福祉センターでの障害者相談支援事業所は、これらの機能を担い、子育てや高齢者相談との連携を緊密にし、三障害に対応するワンストップの総合的な相談拠点として早急に体制を整備することを望むものである。 - 専門性の確保とチームアプローチ
障害者に関する相談では、医療職などの専門職による専門相談が必要な場合も多い。しかし、多くの専門職を相談員として確保することは現実的ではない。例えば、ひとつの相談に対して、一人の相談員だけで判断するのではなく、複数の相談員が検討する、あるいは、専門職の意見を聞いたうえで回答するなど、専門家による相談と同等の相談支援をする工夫が必要である。 - ピアカウンセリング
障害者の相談については、障害者の生活状況や「困り具合」について理解と共感が前提となる。ピアカウンセリングは、障害当事者によるきめ細かい相談が期待できるので、障害者が果たすべき社会的役割として相談支援事業に位置付け充実すべきである。また、相談に際して顕在化したニーズに対する「支援」についても、当事者性が優先される場合はピアサポートとして強化することが望ましい。 - 相談支援体制のネットワーク化
障害者自立支援協議会は、相談支援体制の評価やネットワークづくりについて協議する場として十分機能させるべきである。
また、既に実施している障害者相談員、「つむぎ」、また「せせらぎ」等の相談機能を併せ持つ関連機関についても、情報の共有度を高めることを通じて、現在のニーズに十分対応できるよう活性化することが求められる。
第4節 障害者の就労支援
障害者が、働くことを通じて社会に参加し、その報酬で自らの生活を支えることは、障害者が地域で自立した生活を送るうえで極めて重要である。障害者がその能力と意向に基づき、ふさわしい就労形態を選択し、当たり前に働ける環境を整える必要がある。
障害者雇用促進法による障害者雇用率制度は雇用ニーズを高め、障害者雇用を後押ししている。しかし、現在も就労を希望する障害者と雇用希望者とのミスマッチは少なくない。今後一層、就労支援の取り組みを充実させ、障害者の安定した雇用を促進しなければならない。
1 就労支援体制の強化
- 関係機関の連携強化
就労支援については、中野区内にある特別支援学校や、区内の障害者関連施設、障害者福祉事業団、公共職業安定所等との連携の中で進めることが大切である。
今後は、学校と就労支援の中核となる民間事業者(例えば指定就労移行支援事業者)との強力な協力関係が求められる。
現在障害者福祉事業団が事務局として関与している就労支援ネットワークの構成メンバーや活動内容について見直し、就労促進の視点から機能強化に取り組むべきである。 - 就労支援策の強化
障害者が一人で一般企業に雇用されても、定着することが難しいケースが散見される。企業で働く前に福祉施設が企業から仕事を受注するなど、事前訓練の機会を設けることが有効である。また、企業で障害者が孤独にならないために、チームでの雇用を斡旋するなど、就労支援策の多様化を図るべきである。
2 就労の場・機会の拡大
- 特例子会社の誘致
障害者を雇用する企業は増えているとはいえ、従業員を増やしている企業に偏っている。障害者の雇用を一層促進するためには、区内に特例子会社を誘致し、区内の施設等から積極的に採用を斡旋する取り組みなども必要である。 - 優先的発注の促進
地方自治法施行令の改正をふまえ、区から区内障害者施設へ物品購入や役務の提供等を優先的に発注すべきである。 - 既存業務の確保
これまで区立施設等で実施していた清掃等業務の障害者関連の事業所への発注について、当該施設の民営化・委託化の促進の場面においても、他の事業者への条件との均衡に配慮しつつ、障害者の就業機会及び収入の確保の観点から、優先的に業務を確保できるよう対策を講じる必要がある。
3 就労後の生活・定着支援
- 障害者福祉事業団・事業所の役割
企業サイドで雇用意欲が高まり、受け入れ態勢の整備が進んでいる。
一方で、一定の就労に近い現場の中で日中活動を行い、工賃を受け取るという、いわゆる「福祉的就労」へのニーズも高い。こうした就労形態から一般就労へチャレンジする場合等、障害者に対する一定期間の就労定着支援・生活支援は、「安心して」就労するための条件でもある。現在実施している障害者福祉事業団のジョブコーチ派遣だけでなく、各事業所がこうした定着支援等について一定の機能を果たせるよう、事業所内にジョブサポーターの役割を担う人を位置づけるなど、区全体の就労促進体制における事業所の役割を強化すべきである。 - 就労相談の充実
就労に関する相談については、就労に結びつくまでのプロセスに注目が集まるが、就労した後の生活相談や離職・退職後の生活等、就労後のいわゆるアフターケアも同様に大切である。こうしたニーズについては、相談支援事業を含む地域生活支援事業の中で適切に対応すべきである。
第5節 長期入所・社会的入院から地域生活への移行促進
障害者が入所に至った理由及び退所が困難な理由の両者に共通していることは、障害福祉サービス意向調査の結果から明らかなように、家族の支援が期待できない・難しいということである。現在障害者及び保護者の高齢化を鑑みれば、地域生活移行の最大の課題は、日常生活を支えるサービスの拡充に尽きると言ってよい。入所・入院している障害者の地域への移行と平行して、現在家族による保護・支援によって地域で生活している障害者が施設へ入所・入院することを予防することが必要である。
1 地域移行のための計画的な基盤整備など効果的な施策の実施
- 長期入所者
長期間入所している身体・知的障害者については、現入所施設が平成23年度末までにどのような新体系移行を予定しているか、現施設の近辺に「住まいの場」の整備予定があるか、入所者本人の意向はどうか、等について、実態把握をきめ細かく実施する必要がある。特に障害の程度が相対的に低いにも関わらず入所している者については、地域生活への移行の可能性が高いことから、地域移行に関わる支援について十分計画的に基盤整備を進めなければならない。 - 社会的入院患者
医療機関に社会的入院をしている精神障害者の地域生活移行については、行政が関与せず在宅から入院に至っている者も相当数含まれることが想定されるなど、正確な実態把握が困難である。こうした状況で着実に退院を促進するためには、都が実施する「東京都精神障害者退院促進支援事業」との緊密な連携や生活保護制度下においてケースワーカーが一定程度本人情報を把握している精神障害者について優先的に取り組む等、効果的な推進が求められる。
2 住まいや地域移行に向けた訓練機能の強化など必要な基盤の整備
- 住まいの整備
地域生活の基盤となる住まいへの支援については、一般賃貸住宅への入居手続きへの同行や移行時の生活支援の充実とともに、経過的な住まいの場としてのグループホーム・ケアホームを計画的に整備すべきである。
なお、計画的な整備の視点からは、社会的入院患者・退所を希望している障害者、現在家族による保護・支援を受けながら地域で生活する障害者のうち将来その保護・支援を期待することが困難な者等の状況を精査し、具体的な数値を見込む必要があろう。 - 地域生活への移行訓練機能の強化
入所・入院中の障害者が地域で生活するためには、大きな環境の変化と伴に本人や保護者等にも相当のストレスが生じる。そのためにはショートステイ事業を拡充し「地域生活の体験」の場を確保することが重要である。例えば、グループホームを建設する際にショートステイ機能を併せ持った複合型の施設として整備していく等の移行支援基盤の充実が求められる。
また、「地域生活の体験」の継続的な取り組みは、介護者の高齢化に伴い将来の地域生活に関する不安を解消する点からも有効である。
3 24時間対応の相談窓口確保など相談体制の整備
- 24時間の相談体制整備
地域移行後生活が安定するまでの障害者が、精神的に不安定になったり、つらくなった場合は、無理をせず、再度短期間入所・入院し地域に戻っていくような対応も必要である。地域に必要なのは、そのようなときに、「常時」相談できる窓口が整備されていることである。このような窓口は、他の緊急ニーズ(保護者の病気等)に対応するためにも強化すべきである。 - 日中活動の場等の整備
地域生活が安定するまでの障害者に対しては、平日だけでなく、休日も障害者が安心して過ごすことのできる場所(たまり場)を確保する必要がある。地域で障害者が孤立感を感じることなく、まわりからサポートされているという安心感を確保することが必要である。
第6節 今後特に留意すべき事項
1 障害者への理解の促進
障害者については、障害当事者が抱える「障害」について個性であると見なす一方で、障害者を取り巻く社会参加の困難さや人々の障害への意識を含めた社会的環境にこそ障害があると見なすこともできる。
障害の有無に関わらず、すべての人に対して等しく参加が保障される社会の実現のためには、障害や障害者に対する情報を区民に積極的に提供し、障害者像を前向きに変化させていくことが求められる。
2 精神障害者の福祉サービス利用促進
精神障害者については、自立支援法が三障害の区別なく、等しく福祉サービスの利用等を通じて地域で自立生活を送ることを明記したことをふまえ、既存の事業の見直しも含め、利用者のニーズに応じてサービスを拡充・強化すべきである。
3 発達障害への対応
発達障害については、発達障害児への支援として、早期発見、早期支援に向けた取り組みや医療機関や学校など関係機関との連絡体制を強化させていくとともに、区民、関係者の発達障害への理解に向けて啓発を充実する。さらにライフステージを通じた相談支援、サービスの提供ができる体制を区全体で構築するなど、地域での自立生活の支援の観点に立った所要の取り組みを進めていくべきである。
4 高次脳機能障害への対応
高次脳機能障害のある人に対しては、現在障害者福祉会館で相談及びリハビリテーション支援を実施しているが、比較的年齢も若いため、就労意欲が高い。今後、区は更に障害者のニーズを踏まえ、相談及び支援の体制を明確にするとともに、就労に向けた支援を強化するべきである。
注釈
地域生活支援事業
障害者自立支援法に基づく事業のうち、サービス内容、基準、利用者負担のあり方等を、区市町村が地域の実情に応じて独自に定めて実施することとされている事業。
就労移行支援、就労継続支援等
障害者自立支援法に基づく事業のうち、「日中活動の場」の提供を目的とする事業。就労に関する事業としては、一般就労に向けた訓練を目的とする「就労移行支援」、雇用契約による給与が支払われる「就労継続支援A」、雇用契約によらない賃金が支払われる「就労継続支援B」や「生活介護」などがある。これらの他に地域生活支援事業による「地域活動支援センター」で生産的活動に従事するサービスもある。
特例子会社
「障害者の雇用の促進等に関する法律」で事業主に課せられる法定雇用率(法人の総従業員数に応じて算定される障害者の従業員数の割合)の算定に関して「特例」が認められる子会社。特例子会社が雇用した障害者数を、親会社の法定雇用率の算定に際して通算することができる。特例子会社は、勤務条件や採用の方法などを親会社とは別に定めることができることから、障害者の特性に応じた柔軟な対応によって障害者雇用を促進するとされる。
障害者自立支援協議会
平成18年10月から適用された国の「地域生活支援事業実施要綱」において区市町村(サービス圏域)ごとの地域自立支援協議会の設置が定められた。障害者が相談支援に基づくサービス利用を通じて地域で自立した生活が営めるよう、相談支援事業の公平・適切な運営や体制強化について協議・検討する。また、具体的な相談支援事例の蓄積を通じて、地域での障害者福祉に関するしくみづくりについても併せて協議するとされる。
発達障害
「発達障害者支援法」第二条では、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」と定義されている。
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、交通事故で脳が損傷を受けた場合などに発生する、言語、記憶、及び行動などに関わる障害で、就労など日常生活への影響が課題となっている。
関連ファイル
第5期保健福祉審議会答申(PDF形式 117キロバイト)
附属資料1(PDF形式 8キロバイト)
附属資料2(PDF形式 9キロバイト)
附属資料3(PDF形式 15キロバイト)
附属資料4(PDF形式 20キロバイト)
附属資料5(PDF形式 20キロバイト)
附属資料6(PDF形式 10キロバイト)
附属資料7(PDF形式 10キロバイト)
参考資料1(PDF形式 17キロバイト)
参考資料2(PDF形式 17キロバイト)
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