個人情報保護審査会答申(第20号)

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更新日:2023年8月3日

答申第20号
2015年8月5日

中野区長 様

中野区個人情報保護審査会
会長 佐藤信行

中野区個人情報の保護に関する条例33条2項の規定に基づく諮問について(答申)

2015年1月16日付け、26中経経第2927号 による下記の諮問について、別紙のとおり答申します。

諮問事項

中野区個人情報の保護に関する条例に係る異議申立てについて(諮問)

1 審査会の結論

 本件で「自己情報」開示請求された公的記録は「不存在」であると認められるが、適時に公的記録を残していないことは、本件請求の前後に区の実施機関が作成したと知られる関連文書類に照らして、著しく適切を欠いていたと判断せざるをえない。

2 不服申立ておよび審査の経緯

(1) 異議申立人(○○○○さん。以下「申立人」という。)は、2014年11月14日付けで、中野区個人情報の保護に関する条例(以下「保護条例」という。)22条1項に基づき、関係する地域包括支援センター所長(以下「センター所長」という。)が養父の個人情報を無断で他人に教えようとしたという件に関する申立人の苦情申出に対する処理記録の「自己情報」開示請求を、実施機関である中野区長(以下適宜、「実施機関」または「区長」という。)に対して行った。

 これに対し実施機関は、同年11月28日付けで、「該当する文書がないため」との理由を記した「自己情報不開示決定」を申立人に通知した。

 申立人は同決定につき、同年12月17日付けで区長に異議申立てをし(2015年1月3日付け「補正」書を伴う)、区長が2015年1月16日付けで当審査会に不服審査の諮問をしたものが、本件である。

(2) 当審査会の審査手続において、実施機関から2015年2月16日付けで理由説明書が提出された(地域支えあい推進室副参事・地域活動推進担当の所管)。

 これに対し申立人は、同年3月31日付けの意見書を提出するとともに、同年6月8日に口頭意見陳述を行っている(当日の補佐人は申立人の配偶者)。

 他方、実施機関からの事情聴取は同年4月6日と6月8日に行われた。

3 審査会の判断

3-1 請求対象とされた公的記録の不存在について

(1) 申立人が開示請求した前記の「自己情報」について、実施機関は、全く公的記録を残していないとの理由で「不開示」決定をしたと主張している(決定通知書、理由説明書)。そしてその趣旨は、申立人の苦情電話に対して口頭で回答したのみであり、「記録」は残していないと述べている(理由説明書、事情聴取)。

 そこで審査会として調査したところ、後述のような後発関連文書の件を別にすると、請求「自己情報」については公的記録を残していなかったものと認められる。

(2) ところで、保護条例に基づき申立人が「自己情報」開示請求をなしうる「個人情報」(2条2号)は、組織共用の公的記録であると解される。この点では、区の情報公開条例(略称)にいう「区政情報」が「組織的に用いる」組織共用文書の意味合いである(2条2号)のと同様であって、職員個人扱いの“メモ文書”とは異なる、と考えられる。

 そこで、本件の決定時において、請求された公的記録が不存在であった事実は、肝要と判断される。

 それに対し本件で申立人は、請求文書の不存在について失当である旨の主張を併せしていると認められる(意見書)。

3-2 請求対象の公的記録が不存在であることの当否について

(1) 申立人は、本件電話苦情の原因情報である養父の「病名」問題(認知症かどうか)に関連して、自らの養子縁組を無効と争う訴訟を起こされている事実を訴えており、裁判所に回答した区作成報告書等の裁判記録によって不利を強いられていると主張している(意見書、口頭意見陳述)。

 本件申立人が養父の親族から訴訟を起こされているという重大事情にあることは、当審査会も理解しているが、審査会はあくまで、請求対象の公的記録が不存在であったことの当否を審査しうるのみであって、関係するセンター所長が養父の病名・個人情報を他人に漏らしたという苦情の事実的真否は、本件で必須の審査事項には当たらないと判断される。

(2) もっとも、申立人が本件苦情電話をしたのは、2012年9月および11月の時点であったのだが、当審査会の調査によると、申立人養父の病名問題はすでに、2011年における当時存命中の妻から区への電話相談にかかわっており、また、2012年3月に申立人からセンター所長あてに養父の病症・生活問題の相談電話があったむね公式記録されているので(申立人あて後掲2014年10月開示決定の添付書類による)、区の関係機関としては申立人の本件苦情電話の時点での情報価値を把握しているべきところであった、と認められる。

 したがって、センター所長による個人情報取扱いに「問題がなかった」と調査のうえ電話回答したという場合に、公的記録を残していなかったことは、当時にあっても適切でなかったと考えられる。

(3) さらに、本件の決定時点(2014年11月28日)における処理となると、本件請求の前2014年8月の申立人自身による「養父の記録のすべて」に関する自己情報開示請求(同月28日付け)に対する開示決定通知(同年10月2日付け)において、介護保険申請等をめぐるセンター所長の「支援・対応経過シート」が添付されそこに養父の病症・生活問題として記されていたことが、認められる。

加えて、当審査会が見分したところでは、すでに裁判所への区報告書が作成されていたので(そこに2011年相談情報も含まれている)、本件「不存在」決定に際しては、可能な情報記録文書を作成して請求者に提供するといった措置も考えられたところなのである。

(4) なお、当審査会に判明しているところでは、本件決定後の申立人による「説明責任申立書」(2014年12月)に対応した区側の「説明会」(2015年2月12日)に関しては、当日やりとりの「概要」記録文書が作成されている(実施機関事情聴取に基づく)。

 この「概要」記録文書は、説明会のそれとして公的記録に該当しており、その内容を見分すると、本件請求情報を含めて関連情報が具体的に文書化されている。もっともその内容は申立人側に詳かのはずだが、改めて申立人に提供してもよいであろう。

 かくして、本件決定時に請求情報が公的記録として不存在であるということは、条例による「自己情報」開示請求権の保障原則の下で、著しく適切を欠いていた、と判断せざるをえない。

 以上により、本件異議申立ては請求公的記録が不存在の故に棄却を免れないにしても、当審査会としては標記のとおりの結論表現をするものである。

中野区個人情報保護審査会
委員 兼子 仁
委員 岸本有巨
委員 幸田雅治
委員 佐藤信行(会長)
委員 府川繭子

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