中野区基本構想(昭和56年1月20日制定)

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更新日:2023年8月3日

制定 昭和56年 1月20日
改正 昭和62年12月11日

基本構想をつくる
基本構想の理念
あすの中野
「あすの中野」をめざす道
基本構想を達成するために

 中野区が誕生して半世紀。かつて、武蔵野の豊かな大地にはぐくまれた田園の里は、やがて近郊市街地へと変貌し、戦後は、経済の高度成長とともに、一望の大都市のなかに埋まった。
 いま、中野区は、わずか16平方キロメートルほどの地域に、35万人もの人が軒を連ねて住み、人と車があふれ、一見、繁栄と活力に満ちているかに見える。
 しかし、人びとが安らぐ武蔵野の樹林はおろか、ほっと息をつくみどりの広場さえ、いまではまちなかに見つけることは難しい。人びとが安心して歩き、ともに交流する道、そして人や住まいを災害から守るべき道にも乏しい。
 都市化の波は、洪水のような人口増加と激しい人口流動も加わって、地域と人、人と人との結びつきを押し流し、地域社会を形ばかりのものにしてしまった。
 いまこのまちは、老人や子どもをはじめ、人が生まれ健やかに育ち、心豊かにくらすことができる「人間のまち」と、私たちは誇りをもって言えるだろうか。
 この現状は、区民と区政あげての長い間の努力にもかかわらず、中野区が東京のなかでも恵まれた位置にあるために、避けることのできない過密化によってもたらされたものである。
 この中野を住みよいまちにつくり変えていくために、私たちは、中野のめざす方向をみずから選び、限られた自治の力ではあっても、これをのばし最大限に生かして、おたがいに努力していかねばならない。
 私たちには、古くからの人間の営みと自治を育てた長い歴史がある。そして、みずからの手で大都市東京の歴史のなかに中野の先進性を刻み続けてきた誇りと伝統がある。
 この伝統と高い自治の精神を踏まえ、私たちの中野区は、中野を真に「人間のまち」につくりあげていくことを、新しい未来に向けての目標とし、中野の将来像と、区民と区政がはたすべき役割を明らかにするため、この基本構想をつくる。
 中野区民は、この基本構想を区民一人ひとりの行動の指針として、区政に参加し、みずから地域社会の課題の解決にあたる。
 中野区は、この基本構想を区政の指針として、民主的、計画的に区政を運営し、区民の信託にこたえる。
 私たち区民は、国や東京都に対し、この基本構想を尊重すべきことを求める。また、企業や団体その他中野にかかわる人たちも、この基本構想を尊重して活動し行動するよう要請する。

 私たちの中野区は、次に掲げる「ともにつくる人間のまち中野」の考え方を基本理念として、これにふさわしい地域社会を、中野につくりあげていくことを目標とする。

中野のまちは、人の基本的な権利をまもる

 中野のまちは、だれもが平和を愛し、自由と平等を尊び、あらゆる差別を許さない。
 区民は、憲法によって保障された基本的人権を侵されることなく、市民の自主性と創造性が尊ばれる。

中野のまちは、人のくらしを大切にする

 中野のまちは、すべての人がわけへだてなく、健やかに、そして心豊かにくらすことを最も大切にする。
 区民は、安全で健康な、心配のないくらしが保障される。

中野のまちは、みずから参加してつくる

 中野のまちは、ほかから与えられ、押し付けられるのではなく、区民が主体となって、自主的に考え、みずから参加してつくる。
 区は自治の力を高め、民主的で能率のよい区政を行って、ともにつくる人間のまちの実現を推し進める。

中野のまちは、ともにつくる

 中野のまちは、区民と区政そして区民おたがいがたすけあい、それぞれの役割に応じて力を出しあい、協働してともにつくる。
 区民は、地域社会を形成する市民としての責任をはたす。

中野のまちは、人と人とを地域のなかで結ぶ

 中野のまちは、大都市が失った人と人とのふれあいと連帯を、協働の活動を通してよみがえらせる。
 区民は、おたがいに交流を深め、どの子にもわが子のように呼びかけ、老人や障害のある人に手をさしのべる。

 「ともにつくる人間のまち中野」の基本理念にふさわしい地域社会をつくることは、これから長い時間をかけて、一歩一歩実現していくべき区民と区政の共通の目標である。
 これからのまちづくりを進めるにあたって、中野がもっている地域の歴史と沿革、そして中野が置かれている現状を踏まえ、あすの中野のあるべき姿を、五つの柱をたてて明らかにする。

1 自由にのびのびと個性を生かし能力をのばす

 区民はすべて、人として尊ばれ、ひとしく重んじられる。そして、みずから能力と個性をのばし、自由に生き方を選ぶことができる。
 区民はすべて、地域社会における役割と責任を自覚した市民に成長する。

1―1 地域社会のなかで育つ子どもたち

 子どもはすべて、人として尊ばれ、社会の一員として心身ともに健やかに育つ。
 子どもは、親の愛情と正しい知識をもって育てられる。家庭に恵まれない子どもは、それにかわる環境が与えられる。
 子どもは、障害のある子どもや保育に欠ける子どももひとしく、健やかに成長できる環境のもとで、愛情のこもった教育を受ける。
 家庭、学校、地域社会は、相互の連携をはかりながら、それぞれの責任をはたして、子どもたちの豊かな可能性、能力と個性を最大限にのばしていくよう努める。
 自由な遊びや自然とのふれあいは、子どもが心身ともに均衡がとれ、たくましく育つために欠かすことができない。
 中野の過密なまちにも、自由な遊びと生活の空間が屋内や屋外に確保され、また区の外で豊かな自然とふれあう機会が与えられる。そして子どもたちは、いろいろな年齢の子どもが集まったなかの遊びを通して交流を深め、思いやりの深い、きまりと責任をまもる子どもに育つ。
 子どもも、地域社会の一員として地域について学び、地域の生活と社会活動を体験する。とくに年長の子どもはその年齢にふさわしい役割をはたす機会をもつ。

1―2 自立してひろく社会に参加する婦人

 婦人は、社会や家庭での固定的な性別役割分業の考え方や古い社会慣習から解放されて、自由な生き方を選択することができる。
 女性と男性は平等である。この認識がひろく社会に確立されるよう、家庭や学校そして社会で、あらゆる教育の機会を生かす。
 婦人は、社会のあらゆる領域に参加し、その能力を育てて個人として充実した生活を過すとともに、経済的に自立することができる。
 母性は十分に尊重され、保護される。
 婦人は働く権利をもつ。その権利は母性を理由として差別されない。
 中野の婦人は、地域社会を形成する一員としての権利と義務を自覚して、地域社会の活動に積極的に参加し、また区政の運営に参画する。
 母子家庭の母に、そして介護の必要な老人や障害のある人のいる家庭の婦人に負わされる負担は、行政と地域社会が協力し、それぞれの役割に応じてわかちあう。

1―3 みずから能力を豊かに成長させる区民

 区民はすべて、生涯を通じ、主体的、自主的に学習し、教育、文化、芸術、スポーツなどの分野で活動して、創造力と活力にあふれた豊かな人間形成に努める。このことは、みずからの人生をよりよく生きるためにも、欠かすことのできない営みとして保障される。
 区民は、だれもが自由に個性をのばし、人として、また地域社会における役割と責任を自覚した市民に成長する。
 区民は、興味ある課題や地域の問題を自主的に学習するための場が保障される。
 学校は、地域の文化施設、スポーツの広場として活用され、地域での利用がさらに進められる。
 区民は、市民活動やボランティア活動に参加し、地域と福祉への理解を深める。
 区民は、教育や文化について、みずからの問題として、積極的に考え、さらにこれを発展させていくため、参加の場が保障される。

2 安心して充実したくらしを営む

 すべての区民は、みずからの勤労を基礎として、地域社会のなかで、わけへだてなく充実したくらしを営むことができる。
 老人や障害のある人にとって住みよいまちは、すべての人にとっても住みやすいまちである。
 老人、障害のある人、病弱者、母子家庭そして所得の低い人びとは、それぞれがかかえているくらしの不安や貧困と、いわれのない差別から解放され、だれもが地域社会の重要な一員として、人間性が重んじられ、ゆとりと生きがいのあるくらしをおくることができる。

2―1 だれもが能力を生かし安定したくらしを営む

 区民は、能力と適性に応じて自由に職業をもつことができる。そのため、職業訓練の機会が提供され、雇用の促進がはかられる。
 中小企業で働く区民は、適切な労働環境と福利厚生が企業自身の手で、または行政の援助で確保される。
 働きたくとも働くことのできない区民や、働いても十分な所得を得ることができない区民は、生計の心配のないくらしが保障され、自立をめざして、必要な援助を受けることができる。
 母子家庭や父子家庭は、子どもの養育に不安なく、自立した生活ができるよう、援助を求めることができる。
 行政や地域社会は、くらしの援助を求める人の平等な社会生活が損われることを許さない。

2―2 老人は生きがいのある生活をおくる

 老人は、社会から孤立することなく、豊かな経験を生かして、自立することを基本に、日常のくらしや医療の心配をせずに、地域社会のなかで生きがいのある生活をおくることができる。
 このため、老人は意思と能力に応じて働き、また、社会活動に参加することが保障される。
 老人は、寝たきりになっても、家庭や身近な施設で介護を受け、療養に専念することができる。
 寝たきりの老人のいる家庭の介護の負担は、行政の援助や通所施設などの施設サービス、住民の地域活動によって軽減される。
 老人は、ひとりでくらすときも、必要な援助を受けて、地域社会のなかで生活することができる。
 区民は、ともに地域社会を形成する一員として、老人と積極的に交流を深め、たすけあう。

2―3 障害のある人もいきいきとくらす

 障害のある人は、社会の一員として、ひとしく教育を受け、学び、働き、社会活動に参加する。そして生涯を通じていきいきとくらすことができる。
 障害のある人は、仕事につく能力を高める機会と仕事の場が保障され、行政や地域社会の協力のもとで、みずからの生活基盤をきずく。
 重い障害を背負う人やその家庭の負担を軽減するため、医療や介護などの施設が整えられ、行政の援助や住民の地域活動が家庭の努力を支える。
 障害のある人が、不便なく活動し、生活の場をひろげることができるように、まちの生活環境と施設が整えられる。
 区民は、ともに地域社会を形成する一員として、障害のある人と積極的に交流を深め、たすけあう。

2―4 区民は安心して消費生活をおくる

 区民は、安全で質のよい商品・サービスを、適正な表示、公正な取引、安定した価格で購入することができる。このため、適切な情報が提供され、消費者被害を受けたときは、すみやかに救済される。
 区民は、消費者としての自覚を高め、その権利を実現するため、連帯して行動する。あわせて、商店との相互理解と連携を深め、くらしよい地域社会をつくるため協力しあう。

2―5 中小企業は安定した経営を営む

 中小企業は地域社会の一員として、区民生活の向上とまちの健全な発展に欠くことのできない役割を担う。中小企業はこの立場に立って地域の環境を損うことなく活動する。
 中小企業は、地域社会のなかで、それにふさわしい個性をもち、経済環境の変化に応じて、健全な経営を営むことができるよう、必要な労働力と事業資金を確保し、安定した経営基盤の整備に努める。この努力に対し、中小企業は、経営や技術に関する指導、助言、情報の提供、融資など必要な援助を受けることができる。
 商店は、安全で質のよい商品、親切なサービスを提供し、消費者との相互理解を深めて、快適な店舗、商店街づくりに努め、ともに住みよい地域社会をつくる。

3 心身の健康をまもる

 健康は、単に身体にとどまらず、精神に及ぶひろがりのなかで、とらえられなければならない。一人ひとりが健康であることは、その個人の生活だけでなく、家庭や地域社会のあり方と深くかかわる。とりわけ、乳幼児、老人、障害のある人が健康な生活をおくるためには、地域社会の暖かい支えが大切な役割をはたす。
 区民は、安全で快適な環境のなかで、公衆衛生の向上と医学の進歩の成果をひとしく享受し、健康なくらしをおくることができる。

3―1 心身の健康をまもり増進する

 区民は、みずから健康をまもる意思をもち、そのために努力する。
 区民は、単に病気にならないだけでなく、健康を維持し、さらにこれを高めていくことができるよう、母性の保護をはじめ、胎児期から老年期にいたるまで、一貫した保健医療サービスが区民の身近なところで提供され、スポーツの場など健康づくりの条件が整えられる。
 区民は、一人ひとりの健康を維持し、増進することを地域社会共通の目標として、地域の住民が協力して体力づくりを進めるとともに、家庭や街の清潔を保つなど、健康に住むことのできる環境を整える。

3―2 適切な医療を身近に確保する

 区民は、必要なときはいつでも、身近なところで、すみやかに適切な医療を十分に受けることができる。
 家庭のなかで長く療養する区民は、看護や指導、リハビリテーションを受けながら、家族とともに安心して療養生活をおくることができる。
 区民は、だれでも健康や医療について、気軽に相談ができるように、かかりつけの医師をもつとともに、医療とその制度についての認識を深めるように努める。
 区民、医療機関および行政は、相互の役割を理解しあうとともに、それぞれの責任をはたして、地域を中心とした望ましい保健医療体制をつくりあげる。

4 安全で快適に住めるまち

 中野のまちは、人が住むにふさわしい都市として、人が生れ、健やかに育ち、心豊かに、そして安心してくらせる環境を整える。
 中野のまちは、住宅地であることを基本として、子ども、老人、障害のある人など、すべての区民がのびのびと活動し、公害のない日照に恵まれた環境のもとで、みどりに親しむ安全な都市に整備される。
 この環境は、限られた都市空間のなかで、道路、公園などの公共空間と、区民の住宅、商店、工場など、私的空間を一体として、過密の解消をめざした土地利用の純化と施設の適正配置をはかることにより創り出される。
 区民は、みずから住むまちの主人として、まちのあり方を考え、まちづくりに参画し、行政とともにその実現に努力する。
 区は、都市計画事業を行う権限と財源の強化に努める。

4―1 人がいきいきと住むまち

 区民は、あらゆる災害に強く、静かなうちにも活気にあふれた都市のなかで、いのちと財産が守られ、いきいきとした都会のくらしを営む。
 木造の密集市街地では、行政の誘導と援助のもとで、区民が主体となって、土地の集約的、合理的な利用をはかり、家族がゆったりと生活できる住宅水準を確保するとともに、住宅をとりまく生活道路やみどりの空間を生み出し、快い景観のまちを形成する。
 障害のある人も含め、すべての区民が活発に活動し、交流を深めるために必要な区民施設が、区民の身近なところに体系的に整備される。
 道路は、歩行や散策を優先して整備され、バス路線の確保、防災機能の強化など、区民のくらしの環境を改善するために活用される。
 区民の日常のくらしを支え、地域活動を活発にするため、歩行や自転車、バスを中心とした安全で便利な交通手段が用意される。
 残された川やみどりは、都市の貴重な財産として保護され、さらにその価値を高める方策がとられる。これにあわせ、まちなかの、たとえ小さな空間でも緑化を進めて、環境のなかに生かす。
 まちの文化財や遺跡は大切に保存され、これからの区民の努力でつくる美しい街並みとともに、次の世代に引き継がれる。

4―2 どんな災害にも強いまち

 住む人のいのちと財産の安全を守ることは、まちづくりの基本である。すべての区民は、どんな災害にも強い都市のなかでいのちと財産が守られ、安心して住むことができる。
 区民は、身のまわりの安全はみずから守るべきことを自覚する。そして、安全を守ることを地域社会共通の目標として相互に協力する。
 震火災時などの情報の収集・伝達や救援・救護が適切に行われるよう、区の防災体制が関係機関や区民の協力のもとで確立される。
 区民の発意と合意を基本とし、行政の誘導と援助によって住宅を不燃化、集合化し、燃えにくいまちがつくられる。
 震火災時に備え、空地は可能な限り防災活動の拠点として、また、大規模な空地は区民の身近な避難の場として、活用がはかられる。これらの周辺と避難路沿いは重点的に不燃化され、まちのなかに安全な空間が連続的に確保される。
 区民を水害から守るため、河川は、水辺の環境を生かして整備される。

5 区民がみずからきずく地域社会

 「あすの中野」がめざす地域社会は、区民が主体となり、自主的な行動と区政への参加を通じてきずきあげる。
 区は、区民のくらしをまもり高めていくことを目標として、その持てる力を最大限に発揮する。
 区は、自治権の拡充、強化に努め、区民に身近な「最初の政府」としての使命をはたす。

5―1 豊かな市民活動がつくる地域社会

 「あすの中野」の地域社会を支える暖かいふれあいと連帯は、豊かな市民活動によってはぐくまれる。
 区民は、自由な意思に基づいて市民活動に参加し、互いの自由と権利を尊重しあって交流を深める。
 区民は、地域社会を形成する一員として、地域の福祉を高めるための市民活動に積極的に参加する。
 区民は、みのりある市民活動を進めるため、地域の施設の整備と改善を求め、必要な情報や人材を活用することができる。
 区民は、地域の施設をみずからのものとしてよりよく生かすため、その管理や運営に積極的に参加する。
 市民活動は参加する区民の自由な意思で進められるものであり、行政はその自主性を損なってはならない。

5―2 区民が主体となって進める区政

 区民は、自治をまもり育てる主役として、その役割と責任を自覚し、積極的に区政に参加する。
 区民は、その意思を区の施策に反映させる機会が、区政のしくみのなかに保障される。
 区は、区民の意思に基づいて、だれに対しても公平で民主的な区政を、適正な経費で、能率よく計画的に進める。区の職員は、豊かな創造力と活力を生かして参加の区政を担う。
 区民は、地域における身近な問題はみずから解決するように努める。区は、区民が地域の問題について自主的に話しあい、合意を形成する場として、住区協議会など地域の住民組織を尊重する。
 区は、行うべき施策の選択を決定し、それを実施する責任を区民に対してはたす。
 区民が区政に参加し、地域社会の問題をみずから解決していくため必要な資料は、プライバシーを侵さない範囲で、すべて公開される。

 「あすの中野」をめざして、区政が取り組む施策の方向と区民がはたす役割とをここに明らかにする。
 区政は、これを施策の選択の基準とし、区民は、区政に参加し、地域活動を進めるにあたって、これを行動の指針とする。

1 自由にのびのびと個性を生かし能力をのばすために

1-1 地域社会のなかで育つ子どもたち

 いまの社会や都市の環境のなかには、子どもたちの心身の健やかな成長を阻むものがあまりにも多い。
 このため、家庭、学校、地域社会の共通の責任のもとで、子どもたちが快適に生活し、のびのびと育つことができる環境を地域社会のなかに整えていくことが必要である。

〈施策の方向〉

  1. 教育委員会の自主的な権限と責任に基づいて、区民や教師の意見も反映させながら、地域の特性を生かした教育を進め、そのため必要な研究と教師の研修の場を整備する。
  2. 地域住民の学識、生活体験、技能を、学校教育の場で活用するなど、地域と学校の結びつきを深める。
  3. すべての子どもが、家庭の状況にかかわらず、ひとしく教育や保育を受けることができる施策を進める。
  4. どのような障害のある子どもでも健やかに成長できるよう、教育と保育、訓練と医療を進めるための施策を充実する。
  5. 子どもの健康をまもり、教育効果を高めるため、安全で十分な広さを持つ学校とその環境の整備を進める。
  6. まちなかに子どもの遊べるみどりの空間を確保する。 あわせて、区外にも豊かな自然環境に恵まれた校外施設を充実する。
  7. 子どもの意見を取り入れながら、子どもの感覚と行動にあった公園や児童館などを整備し、その機能の充実と施設相互の連携をはかり、子どもの生活空間を確保する。また、子どもたちが老人など世代の異なる区民と交流できるよう、児童館や老人会館、青年館など地域の施設の相互活用を進める。
  8. 子どもの遊び、スポーツ、あるいは地域についての学習を育てる区民のボランティア活動を援助する。
  9. 子どもがボランティア活動を積極的に行えるよう、また、年長の子どもが、年齢にふさわしい地域社会での役割をはたせるよう、地域、学校と協力する。

〈区民の役割〉

  1. 親は、子どもの成長に最も大きな影響力をもつことを自覚し、健全な家庭環境をつくり、子どもの成長に心をくばるとともに、自信を持って子どもをしつける。
  2. 区民は、地域の子どもたちに関心をもち、積極的に子どもたちとまじわり、健全な成長を助ける。
  3. 区民は、みずからの生活と地域での活動を通じて、子どもの教育にとって好ましい地域の環境の確保に努め、また、教育のあり方について積極的に自己の意見を表明する。

1-2 自立してひろく社会に参加する婦人

 男女の差別は長い歴史のなかで培われ、人びとの意識や社会の制度、組織、慣習、文化など、区民の生活のあらゆる分野に根強く残されている。
 このため、教育をはじめあらゆる分野において、性別に基づく差別を解消するための施策を進めるとともに、区民一人ひとりが家庭や社会のなかで、自己の意識、態度、行動を改めていくことが必要である。

〈施策の方向〉

  1. 男女平等の意識の形成と婦人の地位向上をはかるため、学校教育や社会教育を通じて性別に基づく差別の解消に努め、また、婦人の自主的な学習を援助する。
  2. 婦人の就労を援助するため、多様な保育需要への対応に努めるとともに、職業指導や労働相談を充実する。また、婦人労働に対する理解を深めるための講座を拡充する。
  3. 行政委員会や審議会などへの女性の参加を積極的に進め、男性と同じ比率になるように努める。
  4. 婦人が社会活動や学習に参加し連帯を深めるため、必要な施設を整備し情報を提供する。また、公共施設には託児施設を整える。
  5. 障害のある人や寝たきりの老人がいる家庭や、母子家庭などの婦人のため、相談機能を充実し、家事援助者を派遣するなど必要な援助を行う。

〈区民の役割〉

  1. 区民は「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業の考え方を解消し、男女があらゆる分野に平等に参加する権利と責任があることを認識する。
  2. 区民は、男女の平等な協力と共同の責任によって家庭をきずくよう努める。
  3. 婦人は、区政や地域社会の活動あるいは政治、文化活動などにすすんで参加し、地域福祉の向上に積極的な役割をはたす。

1-3 みずから能力を豊かに成長させる区民

 区民の生涯学習の意欲は、日常的な余暇活動がたかまるなかで、教育、文化、芸術、スポーツなど多岐にわたっている。また、ボランティア活動を通じて、自己啓発の機会を求める区民も多い。
 このため、体系的、継続的な学習の機会や情報を提供するなど、区民の学習意欲に対応した施策と施設の整備を進める必要がある。

〈施策の方向〉

  1. 区民の意見を取り入れて、多様な意欲に対応する学習プログラムを体系的につくり、区民が幅広く継続的に参加できるように学習の機会を充実するとともに図書館などの施設を区民の身近に整備する。
  2. 区民の学習活動やスポーツ、文化、芸術活動のための施設を、地域センターなど区のあらゆる施設を生かして総合的に整備する。国や都、民間の施設も区民が生涯学習のために利用できるよう協力を求める。
  3. 学校の地域利用をさらに高めるため、施設や設備を整備するとともに、教師の知識、技能の活用を進める。
  4. 区民の自主的なスポーツ、文化、芸術活動を援助するため、区の施設に専門指導員を配置するとともに、講師の派遣制度を拡充する。また、区民のなかから指導者を養成する。
  5. 地域の文化財や伝統文化の保存に努め、これを学校教育、社会教育に活用する。
  6. 同和問題は基本的人権の侵害にかかわる問題であることを区民が正しく理解するよう、区民の学習の機会を生かして啓発に努める。

〈区民の役割〉

  1. 区民は、あらゆる機会を利用し、学習活動やスポーツ、文化、芸術活動に積極的に参加して、教育と学習の権利を確保する。
  2. 区民は、地域の文化財や伝統文化、生活文化を大切にし、これを次の世代に引き継ぐことに努める。

2 安心して充実したくらしを営むために

2-1 だれもが能力を生かして安定したくらしを営む

 区民が地域社会のなかで充実したくらしを営むためには、能力と適正にあった安定した職業につくことを欠かすことができない。
 しかし、区民のなかには、雇用の不安定さや労働条件の低さ、さらには老齢や病気、事故など、さまざまな要因によって、不安定なくらしをおくる人が少なくない。
 このため、雇用や生活についての相談機能を充実する一方、これにあわせ、きめ細かな生活援護の施策を充実する必要がある。

〈施策の方向〉

  1. 中小企業に働く人びとの交流を深め、学習活動やスポーツ、文化、芸術活動を行う場を確保する。また、働く人の福利厚生について企業者に対し適切な指導を行う。
  2. 収入が十分でない区民に対して、生計への援護を行う。また、このような公的な生活の援護を求めることは、区民の正当な権利であるとともに、みずから自立する努力を求めるものであることの理解を広める。
  3. 年金やその他生活保護の内容と水準を逐次高めるため、国に要請するなど努力する。
  4. 母子家庭や父子家庭の親の就労を容易にするため、保育および職業訓練等について必要な援助を充実する。
  5. 母子家庭や父子家庭に対する生活相談の機能を充実するとともに、家庭生活に支障を生じたときの家事援助を充実する。

〈区民の役割〉

  1. 企業の経営者は、安全で衛生的な労働環境の整備に努め、また、勤労者の学習活動やスポーツ、文化、芸術活動に対し、積極的に協力する。
  2. 区民は、生活保護制度をはじめ、その他の公的な援護の制度について理解を深め、正しい認識をもつ。

2-2 老人は生きがいのある生活をおくる

 社会の高齢化が急速に進むなかで、老人が日常の生活や医療、住宅、就労など多くの分野にわたって抱えている不安や苦しみは、かつて見られなかったほどに深刻となっている。
 このため、行政はもとより、家庭、地域社会、職場なども相互に連携して、老人のための施策を総合的に進めることの重要性が高まってきている。

〈施策の方向〉

  1. 老人が、意思と能力に応じて就労できるよう、区民に理解と協力を求めるとともに、高齢者事業団などの自主的な就労活動への援助を充実する。
  2. 老人が、市民活動に積極的に参加し、気軽にスポーツを行えるよう、施設や健康指導の体制を整備する。
  3. 寝たきりの老人とその家族のため、ケア・センターなど必要な施設を身近に整備し、訪問看護などの援護を充実する。
  4. ひとりぐらしの老人のため、地域社会のなかに住宅を確保するとともに、老人の住宅を改善する施策を進める。また、日常のくらし、健康の維持、孤独の解消に必要な援護を充実する。
  5. 区民と老人が積極的に交流を深め、たすけあうため、ボランティア活動の育成に努める。

〈区民の役割〉

  1. 区民は、老人に対し敬愛の念をもって接し、援助に努める。
  2. 老人は、ボランティア活動などの社会活動に積極的に参加する。区民は、老人の豊かな経験を社会に生かすように努める。

2-3 障害のある人もいきいきとくらす

 障害のある人は、教育、医療、訓練、就労などの対策の遅れや、社会の理解が十分ではないため、社会生活、日常生活ともに大きな制約を受けているばかりでなく、精神的にも負担を強いられている。
 このため、障害のある人が積極的に社会に参加し、自立して充実した生活を営むことができるように、雇用の促進をはじめ、医療、訓練の施設整備などの施策を総合的に進める必要がある。

〈施策の方向〉

  1. 乳幼児の健康診査などを充実して心身の障害を早期に発見し、早期の機能回復訓練を可能とするよう、保健、医療、訓練、教育機関の連携を強める。
  2. 障害のある人の働く権利を広く区民に訴え、雇用の促進に努める。また、障害の程度と適正に応じた就労の場を確保するため、福祉作業所などの施設を整備し機能を充実する。
  3. 障害の重い人が、身近な地域で生活訓練や介護を受けられるよう、施設を整え、用具の貸与や人的サービスなどの援護を充実する。
  4. 障害のある人のために、住宅の確保と住みやすい住宅への改善を進める。また、日常の暮らしの援護を充実するとともに、扶養者がいない場合にも不安なく生活できるよう施策を進める。
  5. 障害のある人が自由に外出して、スポーツ、文化、芸術活動や社会活動に積極的に参加できるよう、交通手段の確保に努める。また、道路その他の公共施設を改善し、あわせて民間施設の改善を働きかける。
  6. 区民と障害のある人が、積極的に交流を深め、たすけあうため、ボランティア活動の育成に努める。

〈区民の役割〉

  1. 障害のある人は、正当な権利を主張し、社会の一員として積極的に生きる。
  2. 区民は、障害のある人を正しく理解し、わけへだてなく生活できるよう積極的に協力、援助する。

2-4 区民は安心して消費生活をおくる

 区民が安全で質の良い商品・サービスを購入できることは、生活の安定と向上に欠くことができない。
 このため、消費者のもつ権利をまもるための施策を充実するとともに、区民みずからが消費生活の質を高めるための施策を推進する必要がある。

〈施策の方向〉

  1. 区民が安全で良質な商品・サービスを選択することができるように、適切な情報を提供し、苦情を処理するための機関を設置する。
  2. 消費者相談、消費者教育、商品テスト、情報の収集と提供など消費者の権利をまもり、利益を増進するための施策を充実するとともに、区民の自主的な消費者運動を援助する。
  3. 資源・エネルギーの節減、過剰包装の廃止など、消費生活の合理化に関する啓発活動を行う。

〈区民の役割〉

  1. 区民は、消費生活に必要な知識を修得し、自主的、合理的に行動する。また、連帯して消費者運動をすすめることによって、みずからの消費生活の質を高め、資源の有効利用に努める。
  2. 区民は、消費活動を通じて、地域住民の需要と信頼に応える商店を育て、区内産業の発展と住みよい地域社会の建設に協力する。

2-5 中小企業は安定した経営を営む

 区内企業のほとんどを占める中小企業が安定した経営を営むことは、その当事者のくらしだけでなく、区民の生活の向上とまちの健全な発展に大きなかかわりを持っている。
 このため、中小企業が経済情勢の変化に適応できる安定した経営基盤をきずくうえで必要な施策を行っていく必要がある。

〈施策の方向〉

  1. 中小企業が地域社会のなかで、安定した経営を自立して営むことができるよう、技術や経営について助言、指導、情報の提供および油脂など必要な援助を行う。
  2. 中小企業の経営近代化と組織的な事業活動の強化のため、中小企業の交流と連帯を進め、経営者と従業員の研修を行う場を整備する。
  3. 商店と消費者が相互の理解を深めるため、商品・サービスや魅力有る商店街のあり方について話し合うための機会を設ける。

〈区民の役割〉

  1. 商店は、親切なサービスの提供と安全で快適な店舗、商店街づくりを通じて、地域住民の日常の利便を高めるとともに、非常時においては、区民の生活物資の確保に協力する。
  2. 商店・工場は、公害を出さないことはもとより、住みやすさや美しいまちの景観など住宅中心のまちにふさわしい環境づくりに貢献する。
  3. 中小企業の経営者は、それぞれの特性を生かして、そこに働く青年にとっても希望のもてる魅力ある中小企業づくりに努める。

3 心身の健康をまもるために

3-1 心身の健康をまもり増進する

 心身の健康は、個人がみずからまもり増進していくべきものである。しかし、都市の環境が悪化するなかで、個人の力だけで健康をまもり増進することは困難になっている。
 このため、区民が身近なところで健康診断や相談を受けられる場やスポーツ施設などを整備、充実していく必要がある。

〈施策の方向〉

  1. 気軽にスポーツやレクリエーションを楽しめる場を整備し、また、指導者の養成と確保に努める。
  2. 区民が、心や身体の健康について気軽に相談し、病気の予防や早期発見ができるとtもに、必要な指導が受けられるよう、保健サービスを充実する。
  3. 住まいや食品について区民の衛生知識の普及に努める。また、企業や商店に対し、食品衛生の確保のため、必要な指導、監視を行う。
  4. 公害検診を充実し、公害による健康被害の防止をはかる。

〈区民の役割〉

  1. 区民は、積極的にスポーツ、レクリエーション活動を行い、みずから体力づくりに努める。また、地域社会のなかで協力して体力づくりの機会をつくる。
  2. 区民は、食品衛生や環境衛生について理解を深め、家庭のゴミを適切に処理するなど、家庭や地域の衛生の保持に努める。
  3. 区民は、精神に障害のある人や病気から回復の途上にある人たちなどに正しい理解をもち、社会復帰に協力する。

3-2 適切な医療を身近に確保する

 区民の医療需要にこたえ、夜間、休日の診療体制や医療機関の地域活動は充実されつつあるが、医療が高度化、多様化するなかで、区民の医療に対する不安を解消していくためには、地域における適切な医療を、医療機関や行政の努力によって身近に確保していく必要がある。
 また、区民自身も、医療制度に対する認識を深め、医療機関、行政とともに、地域の医療体制の強化に努める必要がある。

〈施策の方向〉

  1. 病気の予防、治療、リハビリテーションなどの医療および保健衛生に関する問題について、区民、医療機関および行政の相互理解を深め、地域の保健医療体制を充実するため、協議する場を設ける。
  2. 医療機関の協力を得て、医療の適切な受け方、応急処置の方法などの保健衛生知識の普及に努める。
  3. 家庭で長く療養する人のため、訪問看護、リハビリテーション・サービスなどの充実にあわせて、短期入所施設などを整備、充実する。
  4. 所得が十分でない人のため、保険外の負担について相談に応ずるとともに、貸付制度を充実する。

〈区民の役割〉

  1. 区民は気軽に相談できるかかりつけの医師を持ち、医師は区民の医療需要に的確にこたえるなど、区民と医師は、相互の信頼関係の形成に努める。
  2. 医療機関は、医療や衛生についての知識の普及に努め、地域の保健医療水準の向上に努める。
  3. 区民は、医療とその制度について認識を深めるよう努める。

4 安全で快適に住めるまちをつくるために

4-1 人がいきいきと住むまち

 中野のまちは、都心に近い住宅地として無秩序に市街化したため、公園や道路など都市の公共の空間が不足しているうえ、住宅などの建物や施設が密集し、秩序ある空間利用が行われていない。
 このようなまちを、区民が安心して快適にくらし、いきいきと住めるまちとするために、区民と区が協力して、過密を解消し、みどりとゆとりの空間を持つまちをつくる必要がある。

〈施策の方向〉

  1. 土地利用の純化と都市施設の適正配置を基本とした都市計画のもとで、良好な住宅地の環境を保全するとともに、木造の密集市街地の建物の集合化、立体化を援助し、居住水準の改善と秩序有る空間利用をはかる。
  2. 区の公共施設が集中している区役所周辺は、区民のレクリエーションや文化活動の中心として、一体的整備をはかる。
  3. 学校施設の地域利用も含め、地域の施設は、地域の状況や需要に応じて、きめ細かく配置し、また各世代にわたる利用や多目的な利用ができるよう整備する。
  4. 老人、子ども、障害のある人のため、住宅や施設を整備するとともに、自由に歩き移動できるように交通の不便を解消する。
  5. 区民生活に必要なバス路線やみどりの歩行者空間を確保するため、地域の状況と需要にあわせて幹線道路の整備を行う。また、住宅をとりまく生活道路は、都市生活に必要な基礎的な空間として、地域住民の合意のもとに適切な幅員を確保する。
  6. 自転車が区民の足として、秩序よく利用されるよう指導するとともに、自転車通行帯、自転車置場の整備に努める。
  7. 残された樹林や樹木をまもり育て、公共施設や地域の緑化などによりみどりをふやすとともに、きめ細かく公園や緑道を設け、みどりとひろばを区民に取りもどす。
  8. 発生源に対する規制指導など郊外の防止を進める一方、河川の水辺の回復や、文化財の保存、快い街並みの確保など快適な環境をつくるための方策を総合的に進める。
  9. 区民がみずからまちづくりを考えるうえで必要な地域の情報を提供するとともに、公正で信頼できる専門的な知識をもつ者を地域に派遣する。

〈区民の役割〉

  1. 区民は、住区協議会などを通じて、地域のまちづくりをみずから考え、まちづくりの計画の策定に向けて区民の合意の形成に努める。
  2. 区民は、個人の所有する空間であっても、それがまちの環境を形成するうえで大きな役割をもち、公共空間との調和をはかることが重要であることを認識し、良好な環境づくりに努める。
  3. 区民は、木造の密集市街地の建物の集合化や立体化を通じて住宅の改善をはかりながら、生活道路やみどりの空間を生みだすよう協力する。

4-2 どんな災害にも強いまち

 中野のまちは、木造の密集市街地が多く、震火災など災害に弱く、また激しい人口流動などのため、区民の防災意識も育ちにくい。
 このまちを災害に強いまちにしていくため、区民は、まちの安全はみずから守るという認識のもとに、災害に対して備え、区と協力して防災体制の確立に努める必要がある。また、建物などの防災性能を高め、安全な公共的空間をまちのなかに連続的に確保していく必要がある。

〈施策の方向〉

  1. 震火災時に、効果的な初期消火活動ができるよう消防水利や消火器具などを適正に配置するとともに、地域の自主的な防災体制が確立されるよう指導、援助する。
  2. 防災無線網の整備や、飲料水、食糧などの備蓄に努め、震火災時に、避難情報の伝達と救援・救護活動が適切に行われるよう、関係機関や区民の協力のもとに防災体制を確立する。
  3. 防災公園や防災活動の拠点の整備を進める。また、避難道路や避難場所、地域救援センターの周辺など重点区域を定めて、防火地域の指定や建物の不燃化、集合化の指導助成を行い、防災上有効な空間の確保に努める。
  4. 区内を流れる河川は、水害がおきないよう改修を行い、あわせて両側を緑道化し、震火災時に避難路となるよう整備する。

〈区民の役割〉

  1. 区民一人ひとりが、水や食糧を備えるなど、自分の安全は自分で守る意識をもつ。
  2. 区民は、互いに協力して近隣地域の安全を守ることを共通の目標として、地域の自主的な防災体制を確立する。
  3. 区民は、建物や施設の防災性能を高め、その不燃化、集合化を通じてゆとりの空間を生み出すなど、災害に強いまちづくりに努める。

5 区民がみずから地域社会をきずくために

5-1 豊かな市民活動がつくる地域社会

 区民が、交流と連帯を求めて、積極的に市民活動に参加していくためには、施設、情報、指導者などの基礎的条件は十分でなく、必ずしも体系的に整備されていない。
 このため、区民が気軽に利用できるよう、地域センターを中心に地域の身近な施設を整備するなど、市民活動が豊かに育つ条件を整えていく必要がある。

〈施策の方向〉

  1. 区民の市民活動が活発に行われるよう、学習活動やスポーツ、文化、芸術活動などの場を整備、拡充する。また、地域や市民活動についての情報の提供や指導者の養成など必要な条件整備を行う。
  2. 青年の若々しい感覚と豊かな行動力が発揮されるよう、青年の自主的活動とボランティア活動を援助するとともに、青年のための施設の運営などにも積極的な参加を求める。
  3. 区の公共施設の管理や運営に区民の意向が反映できるよう、区民の主体的役割を求めていく。

〈区民の役割〉

  1. 区民は、市民活動に参加して交流を深め、暖かいふれあいと連帯に基づく地域社会の形成に努める。
  2. 区民は、個人としてお互いに尊重し合うとともに、市民生活のルールを守る。
  3. 区民は、区の公共施設の管理や運営に積極的に参加するなど地域の施設をさらに効果的に活用することに努める。

5-2 区民が主体になって進める区政

 区は、区民の生活に密着した課題を解決するために、自治体として十分な権限と財政力を備えているとはいえない。また、区民が区政に主体的立場で参加するしくみや、地域社会のなかで区民みずから問題を解決していく方法や経験なども十分ではない。
 このため、区民と区政は、自治権の拡充に努めるとともに相互の役割を認識し協力しあう関係を強化していく必要がある。

〈施策の方向 〉

  1. 区民の区政への参加意識を高め、広く区民の声を発掘するよう努める。このため、あらゆる広報、広聴手段の活用ときめ細かな地域集会を通して、区民と区政の不断の対話を深める。また、地域の住民組織、区民団体など区政にかかわる幅広い区民が、区の政策形成に参画する多様な機会と方法を工夫する。
  2. 基礎的自治体として区が本来行うべき仕事を遂行するため、区民の理解と支持のもとで他の特別区と連帯して自治権の拡充に努めるとともに、財政基盤の強化や行政の遂行能力の向上に努める。
  3. 住区協議会をはじめ町会や自治会その他の区民団体など、地域の住民組織がまちづくりなどの自主的活動を進めていくことに対応できるよう、地域センターの機能を充実する。
  4. 区民が区政や地域の問題を考えるにあたって必要な資料を公開するため、情報の収集と公開の方法を工夫する。

〈区民の役割〉

  1. 区民は、区政に対する関心と理解を深め、積極的に区政に参加する。
  2. 区民は、地域の問題を相互に話し合い、合意の形成に努め、その解決に取り組む。
  3. 区民は、自主的に組織する地域の住民組織の意義を理解し、これに積極的に参加する。

「あすの中野」を実現するため、区のとるべき方途を示す。

1 基本構想の周知

 区は、この基本構想が広く区民に理解され、策定の目的が十分達成されるよう、区報をはじめ、区民集会などあらゆる機会を活用して周知をはかる。児童・生徒には、地域社会について学ぶ資料として基本構想のやさしい解説を配布する。

2 基本構想を実現する行政計画の策定

 区は、長期的な財政見通しをたて、基本構想を実現するために区政が取り組むべき課題と事業内容を明らかにした5か年程度の行政計画を策定し、目標に向かって逐次改定を加える。
 この計画は、区政運営の指針となる基本計画であると同時に、可能な限り実現性を確保した実施計画の性格をあわせもつものである。
 また、この計画は区民参加を採り入れ、地域の実情を適切に反映したものにするとともに、区民が区政や地域の問題への関心を深め、今後、住区協議会など地域の住民組織が中心となって、地域のまちづくりの計画をつくるきっかけとなるものである。

3 区有地の拡大と施設の多目的利用

 区は、区内においてきわめて困難となっている用地の確保を、国や他の自治体の協力を得て積極的に進め、区有地の拡大に努める。
 区民施設は、既設、新設をとわず、地域の特性と区民の多様な需要に対応して、きめ細かな多目的の活用を検討し、施設のあり方と建設計画の見直しをする。

4 特別区の権限と財政の充実

 区の自治権、財政権を強化し、区がみずから問題を解決していく能力を高めるため、基礎的自治体として区民の生活に密着したすべての事務を処理できるよう、他の特別区や、区民とともに、国や東京都に対し行財政制度の改正を求める。

5 区政運営の改善と人材の確保

 創意に富み、能率的な区政を進めるため、区政の執行体制をつねに見直し、無駄の発見と住民サービスの向上に努める。また、すぐれた資質をもつ区職員を確保し、能力の育成を計画的に進める。

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